愛知県名古屋市に本社を置く都市ガス大手・東邦ガスが、2025年からシャインマスカットの生産を始めました。異業種からの農業への参入。その背景には、スタートアップによる支援がありました。
【異業種参入】都市ガス大手の東邦ガスが農業へ参入 シャインマスカット生産で非エネルギー事業を強化

栃木県宇都宮市の特売所。近隣で栽培された新鮮な野菜や果物が販売されています。直売所の売り場には、みずみずしいシャインマスカットが並んでいます。

生産者の表記をよく見ると、東邦ガスと書かれています。

東邦ガスは名古屋市に本社を置く都市ガス大手。東海3県でおよそ300万件を超える顧客にガスや電気を供給しています。

その東邦ガスが始めたのがシャインマスカットの生産です。

2箇所の農園を構え、合わせておよそ8ヘクタールで栽培しています。エネルギー企業である東邦ガスが農業分野へ参入した背景には、新たな収益柱の育成という狙いがあります。

東邦ガス 事業開発部 青山恵大次長:
「ガス・電気のような暮らしになくてはならないシン・インフラを創出していこうとして新規事業をやっています。その一環で農業を始めました」

東邦ガスがガス・電気に次ぐインフラとして注目したのが農業。エネルギー以外の事業の利益を40億円から2027年度末までに2.5倍の100億円に増やす計画を掲げ、事業領域を広げています。

加えて耕作放棄地の活用や地域経済の活性化につなげようと、2025年宇都宮市でシャインマスカットの実証栽培を始めました。異業種からの農業参入の裏側には、スペシャリストがいました。
日本農業の担当者:
「めちゃくちゃいいものができていると思います」
東邦ガス 事業開発部 青山次長:
「ありがとうございます」
【スタートアップと連携】『日本農業』や『TOWING』の技術を活用 土作り期間を最短1カ月に短縮

シャインマスカットの状況を確認しているのは、農業スタートアップ・日本農業の担当者です。

日本農業は元々耕作放棄地だった場所に東邦ガスが農園を開く段階から支援。

さらに管理のしやすい栽培方法の指導や、収穫した果実の一部の販売なども行っています。

東邦ガス 事業開発部 青山次長:
「生産効率の高い栽培方式と、輸出を含めた販路の開拓を一気通貫で支援してくださるサービスがあって、儲かる農業を実践できる」

味方は他にもいます。
東邦ガス 事業開発部 青山次長:
「土壌改良に使用しているのが宙炭です」
宙炭とは籾殻などが由来のバイオ炭に土壌微生物を培養・定着させた資材です。

土に混ぜることで、一般的に3年から5年かかるとされる土作りを最短1カ月に短縮し、農業参入のハードルを下げる事ができます。宙炭は東邦ガスが出資する名古屋大学発のスタートアップTOWINGが開発しました。
【2028年に120トン目標】収穫量は19トンへ拡大 東海エリアでの事業基盤構築を目指す

東邦ガスは宙炭の利用だけでなく、出資を通じて量産化や農業現場への普及を後押ししています。

取材に訪れた2026年8月下旬は収穫期を迎え、栽培を始めた2025年の生産量はおよそ2トンでしたが、木の成長や農園の拡大に伴い、2026年は19トンまで増える見込みです。2028年には生産量を120トンにすることを目標にしています。

東邦ガス 事業開発部 青山次長:
「新規事業の推進にはスピード感が欠かせません。日本農業やTOWINGといったスピード感のあるスタートアップ企業と組むというのは相乗効果があるのかなと思っています。東海に農業の事業基盤を持っていくということを狙っています。シャインマスカットが軸になるのですが、広く色々検討している状況です」

日本経済新聞社 名古屋支社 大久保明日香記者:
「早期から安定した収穫を可能にする栽培方法や、土づくり資材などの技術革新により、農業参入のハードルが下がっています。耕作放棄地の活用や地域活性化も見込めることから、異業種からの農業参入の動きは今後一層広がりを見せそうです」


