名古屋で進む図書館の「再編成」 星が丘ボウル跡地に18億円投じる“アクティブ・ライブラリー”構想

2023年に閉店した名古屋市千種区のボウリング場「星が丘ボウル」。跡地に建てられる商業施設には、名古屋市の新しい「図書館」が入る予定です。この図書館をどんな場所にするのか、市民から様々な意見が出ています。
「星が丘テラス」の真横にある広大な土地。現在、複合施設の建設工事が進んでいて、その一部に新たな図書館が入ります。
名古屋市営地下鉄・星ヶ丘駅近くで進む再開発。建設が進む商業施設に入るのが、名古屋市の新たな図書館です。
市が約18億円をかけて整備するというこの図書館。会話や飲食ができるエリアなども整えるほか、仕事帰りなどでも立ち寄れるよう、開館時間の延長なども計画しているといいます。
より気軽に訪れ、本に触れてもらうことを目指す名古屋市。この新しい図書館を「アクティブ・ライブラリー」と銘打っています。
名古屋市では今、この場所を含めた市内全域の図書館を「再編成」する動きを進めています。
この構想では、市を5つのブロックに分けて、それぞれのエリアで、蔵書数の異なる3つの規模の図書館を再配置します。
エリアの中核となる「アクティブ・ライブラリー」は約15万冊の蔵書で、専門資料などをそろえ、調べものなどにもおすすめ。
中規模の「コミュニティ・ライブラリー」は蔵書数が5~7万冊。そして「スマート・ライブラリー」の蔵書数は1~3万冊と小規模なものの、便利な場所にあり、本の貸し出しや返却がしやすく、気軽に立ち寄れる環境をつくります。
図書館再編の背景に「老朽化」

まず、この計画が具体的に進められているのは、千種区・東区・守山区・名東区で構成されるエリア。
一部の図書館では、再整備により蔵書数が少なくなってしまいますが、市は、新しい本を中心とした蔵書のラインナップ充実などで「市民の利便性を高める」としています。
星ヶ丘の施設だけでも整備費18億円をかけるというこの図書館再編。これだけの費用をかけて名古屋市全体の図書館を編成しなおす理由は、今の図書館の老朽化にあります。
星ヶ丘駅から徒歩約10分の 「千種図書館」は、新図書館の建設に伴い閉館する予定です。開館から50年以上が経ち、ボイラーや電気系統の故障など、あちこちで不具合が出ているといいます。さらには…。
「エレベーターがない施設なので、本がある2階に上がるには、どうしても階段を上がる必要がある。車いすの方やベビーカーのお母さんなどはちょっと不便で…」(千種図書館 塩沢宏之 館長)
千種図書館は2階建てで、本は2階に取り揃えられています。エレベーターがないため、階段をのぼることが難しい人は、建物の裏から2階へ入るか、職員のサポートが必要となります。
現在、名古屋市は中区を除く15の区で21の図書館を運営していますが、千種図書館の他の施設でも老朽化は課題になりつつあります。
市民からはアクセスなどに様々な意見

名古屋市は、単なる建て替えではなく、再編成により「新たな図書館像」を目指しています。
一体、どんな場所にしていくのか。3月、千種区の小学校で、市民らから意見を募る「ヒアリング会」が開かれました。176人が集まりました。
「図書館の整備に関する長期的な方向性・取り組みとして『アクティブ・ライブラリー構想』を策定しました」(市職員の説明)
参加者からは、地域の小学校との連携や、バリアフリー化を求める声のほか、地下鉄の駅構内に返却ポストを設置することなど、さまざまなアイデアが出されました。
建設にかかる費用や駐車場の有無を心配する声も上がりましたが…。
「アクセスのところは気にされていたかと思う。障害のある方も気持ちよく図書館を利用できるようケアをしていく必要があると思っているので、整備にいかしていきたい」(名古屋市 生涯学習部 磯部裕司 担当課長)
ヒアリング会の参加者は――。
「千種図書館は高校のころから使っているので、あれが大きく生まれ変わっていく構想を聞いた時からずっと注目していた。いよいよ動き出すと思うと期待でいっぱいです」(50代)
「開館時間がのびると聞いて、学校の図書館は結構すぐ閉まるので、授業後に行けるというのはすごく魅力的だと思う」(新図書館近くの大学に通う大学生)
市民から寄せられる期待の声

閉館が決まっている千種図書館の塩沢館長は、新しい図書館が若い世代も気軽に立ち寄れる場所になることを期待しています。
「働いている人や若い人の図書館利用が減っているが、建て替えになると、交通の便も今より良くなるので、いま図書館を使っていない人にも魅力を感じてもらえる施設になるといいと思っています」(千種図書館 塩沢館長)
市民らを対象とした「ヒアリング会」。名古屋市は今後、千種区以外の場所でも開催を検討しているということです。
星ケ丘の新しい図書館は、2028年に完成する予定です。