
「政府専用機」で緊急事態発生!? 高度1万メートルの訓練! 要人守る女性ロードマスター奮闘記

要人の輸送などに使われる日本の「政府専用機」。いったい誰が管理しているのか。出番がない普段は何をしているのか、全貌に迫る。
北の玄関口に現れた「政府専用機」

年間2400万人以上の旅客数を誇る日本屈指の国際空港、新千歳空港。そこに隣接する航空自衛隊千歳飛行場では、F15戦闘機の離陸が繰り返されていた。すると、同じ滑走路に、なぜか旅客機が現れた。機体には日本国の文字、そして日の丸。そう、「政府専用機」だ。

皇族や政府要人の輸送をはじめ、国際救助活動や在外邦人の救出などにも使われる政府専用機。機体はボーイング777なので、民間の航空会社が運航していると誤解しがちだが、ボディをよく見ると“航空自衛隊”と刻まれている。政府専用機は、「特別航空輸送隊」と呼ばれる航空自衛隊員が担っているのだ。
中はどうなっているのか、特別に取材許可を得た。
接客だけじゃない! 多忙な「ロードマスター」
コックピットの装備品は民間機と変わらない。ただ政府専用機は2人のパイロットに加え、ナビゲーターと呼ばれる人が後部座席に座り、飛行ルートの選定や燃料計算などをパイロットに助言するという。
要人守れ! 知られざる政府専用機の訓練

客室には記者やSPが搭乗する一般区画と、VIPに同行する閣僚などの区画がある。当然VIPの部屋もあるが、警備上の理由から見せてもらえなかった。
これら客室の対応を担うのは、「ロードマスター」と呼ばれる航空自衛隊員。女性が多いが、仕事は接客業務だけではない。機体の横で行われていたコンテナの積み込み訓練。実は、ロードマスターは荷物の積み込みから重量配分までも請け負っているのだ。そのため隊員は全員、フォークリフトの免許を持っている。

翌日は、政府専用機の飛行訓練だった。ロードマスター4年目の女性隊員、菅原3等空曹がチーフを務める。食事の提供訓練に続いて行われたのは緊急対処訓練。搭乗者の1人が呼吸停止し、意識不明の状態という設定だ。
急患に見立てたダミー人形を使い心肺蘇生。取り乱す同乗者のケアも欠かせない。これで訓練終了かと思いきや、突如、機内に緊急アナウンスが流れた。
アナウンス:「操縦室よりご案内申し上げます。当機は油圧系統の不具合により、これ以上の飛行継続が困難となりました。陸上に緊急着陸することを決定しました」

すぐさま菅原さんを中心にロードマスターたちが、安全の確保を呼びかける。
「顎を引いて、身体を前に倒して!」
菅原さんたちもベルトを装着。着陸30秒前「頭を下げて~!」と大声で繰り返す。機体が停止すると今度は避難誘導。逃げ遅れた人がいないか、呼びかけながら確認していく。

飛行訓練の最後は、着陸が危険と判断した場合の回避、タッチ&ゴー。滑走路に降り立った政府専用機が再び大空へと浮上していった。
菅原さん:「航空機に乗務するというのは、すごく責任が重い。いろいろな知識はもちろん、乗客の安全を守る行動がとれないといけない。だから覚えることが多いのです」
いざ出番となれば長時間のフライト。それに耐えられるよう、体力づくりも欠かさない。政府専用機の安全は、特別航空輸送隊の日ごろからの訓練に支えられていた。





