
「2歳の頃はママ・パパと呼んでくれていたのに」 主に女の子に発症する難病“レット症候群” 今は会話も食事も難しく… 根本的治療法がない先天性の神経疾患

先天性の難病「レット症候群」と向き合う家族を取材しました。病気の進行で言葉や動作も難しくなる中、親の思いは…
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(大石邦彦アンカーマン)「お名前は?何歳ですか?」
(母・美紗さん)「6歳です。香乃です」
(母・美紗さん)
「見た目は健常者の子と変わらないかもしれないけれど、受け答え、言葉も出ないですし、手先が自由に動かせられないので、おもちゃを取りたくても、なかなか取れない」
愛知県内に住む6歳の香乃ちゃんは「レット症候群」という難病。主に女の子に発症する先天性の神経疾患で、国内には約1000人の患者がいるとされていますが、根本的な治療法はまだありません。
2歳半頃から“特徴的なしぐさ”が気になって…
(母・美紗さん)
「最初に気付いたのは2歳半くらい。自分の手をずっと触っている。特徴的なしぐさが気になって」
繰り返し手を揉んだり、叩いたりする動きは症状のひとつです。
(母・美紗さん)「やり過ぎるので指を負傷しちゃって」
(父・悟さん)「指同士で爪で傷つけてしまう」
(大石)「痛いとかよりも、動きを優先してしまうんですね」
(父・悟さん)「止められない。無意識で動いてしまう」
1歳半を過ぎるころからは、言葉や手足の動きが悪くなり、それまで出来ていたことが難しくなる「退行」も特徴的な症状です。
(母・美紗さん)
「2歳くらいの頃はママ・パパと呼んでくれていたので、いろんな単語が2歳半くらいまでは出ていたんですけど、だんだんなくなって、今は…」
3歳までは自分で食べていた「ご飯」
ご飯も3歳までは、自分でスプーンを使って食べることが出来ていました。しかし今は、食べさせる介助が必要です。取材した日は少し緊張気味ですが、普段はとっても表情が豊か。食べたいものは視線や表情で教えてくれます。
(大石)
「いまはご飯をじっと見ていたから、ご飯なのかな」
香乃ちゃんは現在、春日井市にある特別支援学校に通っています。ことしの運動会のかけっこでも、一歩一歩、懸命に歩みを進めました。
(父・悟さん)
「これ以上、症状が悪くならないとも限らないので、不安は尽きないです」
(母・美紗さん)
「大きくなったら一緒に旅行や買い物に行ったりできるようになるのかなと、生まれた時はすごく思っていたけれど、自分の想像していたのとは、ちょっと違うかもしれないけれど、かわいいのには変わりないですね」
「レット症候群」と向き合う家族は他にも…
2歳の時に“レット症候群”と診断
(母・はるなさん)「おとです」
(大石)「おとちゃんは何歳ですか?」
(父・康行さん)「小学校2年生です」
(大石)「(おとちゃんは)どんなお姉ちゃんですか?」
(弟・善くん)「やさしいお姉ちゃん」
岐阜市に住む森康行さん夫婦。三人きょうだいの次女・おとちゃんがレット症候群と診断されたのは2歳の時。
(父・康行さん)
「いまはお座りは出来て、歩いたり自分で動いたりはできないです。ただ笑顔があったり、目線は合わしてくれるので、なんとなく気持ちは分かったりする」
Q.食事はどうしているんですか?
(母・はるなさん)
「口からは一応食べられてはいるけれど、6月に胃ろうの手術をして、薬と水分は基本的に胃ろうを使って注入をしています」
胃ろうのシリンジやおむつを持って学校へ
おとちゃんは、食事や着替えなどの生活全般で介助が必要ですが、両親の希望で特別支援学校ではなく、地域の学校に通っています。
おとちゃんが学校に持っていく大きなリュックには…
(母・はるなさん)
「胃ろうのシリンジ。注入を昼していただいているので。あとは、おむつ」
Q.排泄も?
「できないですね」
おとちゃんを毎朝学校まで送り届けるのが、康行さんの日課です。
(父・康行さん)
「地域によっては学校迎えとかも福祉サービスができていたりしますが、まだ岐阜は保護者の迎えが必要で、娘の学校や特別支援学校も、ほとんどが保護者が朝は送っている」
サラリーマンをやめて福祉施設を立ち上げる
特別支援学級で過ごすおとちゃん。専属の看護師もいて、たくさんの友達もできました。学校へ送った帰り、康行さんはある場所に案内してくれました。
(父・康行さん)
「もともと一軒家だったんですが、今は福祉施設として使っていまして、1階で子どもたちが遊ぶ場所になっています」
Q.福祉施設を作ったということ?
「そうです」
サラリーマンだった康行さんは3年前に仕事を辞め、重い障害のある子どもたちを受け入れる福祉施設を立ち上げました。
おとちゃんの病気がわかって、保育園を退園することになり、その後受け入れ先が見つからなかったことがきっかけでした。
「施設に来てほしい半面もどかしいところも…」
(父・康行さん)
「経験は全くなくて、福祉の“ふ”の字も知らず、ここから飛び込みました。今のところ幸いにもやっていけているが、危機的な状況になったことも何度もある。金銭的な面で悩むことが多いのは事実です」
現在は、保育士や看護師など9人の職員が、9人の子どもたちをサポートしています。
おとちゃんも学校が終わった後は、ここで過ごします。子ども達を受け入れる施設を作った康行さん自身、もどかしさを感じています。
(父・康行さん)
「施設に来る理由として、幼稚園に行けないからここに来る。そういう理由で来るのは、半面もどかしいところがあって。来てはいただきたいものの、本来なら地域の子どもたちと一緒に成長してもらえたらいいなという思いがある」
進行抑える“治療薬” 日本は未承認・研究の遅れも…
愛知県に住む香乃ちゃん。支援学校で階段の上り下りの練習をすることで、前よりも段差をスムーズに進めるようになりました。
レット症候群は、海外では治療法の研究が進み、進行を抑える薬の処方や遺伝子治療の治験も始まっていますが、日本ではまだ承認されず研究も遅れているのが現状です。
1日でも早く、日本でも利用できるようになってほしい。いまの切なる願いです。
(父・悟さん)
「薬の開発が進んでいる現状があるので、少しでも早く医療が娘のところに届いてくれるといいな。幸せを感じてもらえるような環境を、作り続けていけたらと思う」





