
ツアーは即完売 一夜限りの“夜行列車” 8時間半かけて名古屋→尾鷲を目指す 非日常の空間を楽しんだ後は…絶景スポットで朝日を満喫し名物朝市へ

いまやほぼ姿を消した「夜行列車」。ゆっくり夜通し目的地を目指すものですが、その臨時列車が一夜限りで復活。8時間半の行程に密着取材しました。
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かつて、真夜中の名古屋駅のホームは、多くの人々で賑わっていました。その理由は「夜行列車」。
(乗客 1996年)
「我々は汽車に乗ることは、手段じゃなくて目的ですから。乗るのが目的ですから」
乗ることも「旅」の一部だった夜行列車。しかし、新幹線の普及などによる移動時間の短縮で、夜行列車は徐々に姿を消していきました。
なぜ夜行列車で? 名古屋から8時間半の旅
11月1日未明の名古屋駅。その夜行列車が一夜限りで戻ってきました。JR東海などが企画したツアーで、三重県尾鷲市に向かう、臨時の夜行列車です。
午前0時過ぎに名古屋駅を出発し、尾鷲駅に着くのは翌朝8時半。お目当ては毎月第1土曜日に行われている、名物朝市の「尾鷲イタダキ市」。
(神奈川から)
「尾鷲の駅着いたら、地元の方の朝市を巡ったりするのが一番楽しみ」
昼間の特急なら、名古屋~尾鷲まで約2時間半。今回道のりにして、180キロほどですが…なぜ、わざわざ夜行列車で向かうのでしょうか。
(JR東海 営業課・沖健太担当課長)
「名古屋から始発列車で行っても、尾鷲に着くのが午前11時くらい。夜行列車を運行して、イタダキ市の初めから楽しんでもらおうと」
ツアーは即完売「新鮮で応募した」
午前0時9分、いよいよ出発。ツアーは約40人が乗車、すぐに完売しました。座席は、特急で使われるようなリクライニングシートではありませんが…
(埼玉から)
「きょう仕事を終わって新幹線乗って、そのままこっちに来ました。きょう結構楽しみで仕事中わくわくして、大変気がそぞろみたいな状態で」
(神奈川から)
「自分の世代だと、あまり夜行列車はない時代だったので、そういうのが新鮮で応募しました」
午前1時12分、夜行列車は三重県の亀山駅に到着。乗客は降りて列車の車体にカメラを向けます。これは一体…?
(JR東海 営業課・沖健太担当課長)
「行き先表示幕を回転させると、鉄道ファンの皆さまお好きな方が多いので、それを誰もいない深夜の駅で独占していただく」
ファンの方にとっては、京都や富山など、普段は見ることのできない珍しい行き先が出るのが、たまらないのだそう。
(名古屋から)
「私は大学時代に北陸の金沢にいて、よく北陸本線や高山線を使ったものですから、非常に懐かしく思っています」
(神奈川から)
「珍しいものを見られて結構満足というか、サービスが多くて嬉しい」
“絶景スポット”で朝日を満喫
夜行列車は様々な駅で止まり、ホームで撮影会を行います。まだ夜明け前、辺りは真っ暗な時間です。
(神奈川から)
「目も覚めますし…寝られる環境じゃないですし…ただ眠いです」
(神奈川から)
「少し寝ようかなとは思ってます。朝に備えて…」
午前4時40分、列車は目的地の尾鷲駅に到着と思いきや…なんと通過してしまいました。これは朝一番の絶景をベストな場所で迎えるため。列車は一旦熊野市へと向かい、そこから尾鷲駅へと引き返します。
午前7時17分、朝を迎え目の前に広がるのは、熊野灘の絶景です。
(神奈川から)
「めちゃくちゃ綺麗ですね。まぶしいですし、日差しも」
尾鷲市の人口はピーク時の半分以下に
(車内アナウンス)
「ご乗車ありがとうございました。まもなく終点、尾鷲です」
午前8時32分、出発から8時間半、ついに終点・尾鷲駅に到着。ホームでは地元の人たちが歓迎してくれました。尾鷲市が、この夜行列車を歓迎するのにはワケが。
(尾鷲市 商工観光課・濵田一多朗課長)
「(尾鷲市が)過疎化して、すごく人口減少していて、干物業者などの廃業も続いている。廃業がどんどん続いていくと、尾鷲らしさが失われていくので」
尾鷲市の人口は、1960年代のピーク時から比べると半分以下に。その危機感から尾鷲市はJR東海と組み、今回の企画を実現させたのです。
待ちに待った朝ご飯…「本当においしい」
尾鷲の魅力が詰まった「イタダキ市」。名古屋からの始発では間に合わない「朝一番」の味と熱気がありました。
(神奈川から)
「待ちに待った朝ご飯です。うまいっすね。めっちゃお腹すいていたので、夜行列車に乗ってて。もう本当においしいです」
(一宮から)
「まず第一に飯がうまい。ブリのハラスが100円なのに、めちゃくちゃジューシーで脂も乗っていて」
尾鷲まで、名古屋から夜通し8時間半の長旅。感想を聞くと…
(神奈川から)
「眠いですね。途中駅ドアが開いたりすると、写真撮りたいんで起きたりはしましたけど、結局30分を2回ぐらいしか寝られていないので」
(東京から)
「寝たいときには寝る。起きたければ起きて車窓を眺める。そういうところが一番(の魅力)だと思う」
「好評であれば他のローカル線でも」
今回の夜行列車は一夜限りでしたが、好評であれば尾鷲方面以外のローカル線でも企画していきたいと話しています。
(沖担当課長)
「夜行列車はどちらかというと非日常の空間だなというふうに思った。こういった非日常の体験は、一つのコンテンツになり得るのではないかなと」
ローカル線と地域が手を取り合った「一夜限りの夜行の旅」。夜行列車が、地域観光の起爆剤になるかもしれません。





