破傷風のワクチンが突然出荷停止 傷口から感染、死亡することも 医師「今夏は特にけがに注意を」

今年の夏は、いつも以上にけがに気を付ける必要がありそうです。重症化すると死に至ることもある「破傷風」。いま大手のワクチン製造元が、出荷を停止しています。
25日も東海3県は各地で厳しい暑さとなり、内海海水浴場のある愛知県南知多町では、午後2時までで最高気温33.3℃を観測しました。
海辺に落ちている貝殻やガラスの破片。この夏、こういったものによるけがに特に注意しなければいけません。
破傷風菌とは

破傷風とは、土の中などに存在する「破傷風菌」が主に傷口から体内に入ることで起こる病気です。
破傷風菌は、筋肉を麻痺させることで、足首が上がらない、食べ物が飲み込めないなどの症状をもたらし、最悪の場合は死に至ることもあります。
「古い釘やさびた釘を踏んでけがをした、動物にかまれた、交通事故によって体の奥深くまで大きいけがをした、汚いけがをした時、傷がふさがった後に菌が毒を出す。治療しないと死んでしまう怖い病気です」(名鉄病院 予防接種センター 菊池均 センター長)
ワクチン出荷停止 病院「在庫が足りない」

しかし約2週間前、国内シェアの多くを占める製造元「デンカ」が突然、ワクチンである「破傷風トキソイド」の出荷停止を発表しました。
「製造工程の適格性の検証結果に疑義が生じた」ことが理由だといいます。
「汚いけがをした時には必ず打ちます。これによって発病自体が防がれています。ですから患者の発生は極めて少ない。そのワクチンがなくなったので、これから患者が出てくると困るということで、我々は危惧している」(名鉄病院 菊池センター長)
名鉄病院では毎月6本程度使われるというこのワクチン。残っているのは約2カ月分です。
「(出荷停止の知らせから)2日後ぐらいから入荷がなくなったと聞いている。もし1年間供給停止になったら全然足りない」(菊池センター長)
対策は「とにかくけがをしない」

破傷風の発症を防ぐために大切なのは、とにかくけがをしないこと。
医師は、野外で遊ぶ際は、危険な活動を控え、けがに注意してほしいと呼びかけています。
ワクチンを製造する「デンカ」は、メ~テレの取材に対し、「出荷の再開見込みについては申し上げられない。1日でも早く再開できるように取り組んでいる」と話しています。
70年ほど前は、破傷風の感染者は年間約1000人もいました。近年は年間100人前後に減っていて、その背景にあるのがワクチンです。
破傷風ワクチンが必要になるのは、土などで汚れた場所での深い傷(切り傷、刺し傷など)です。名鉄病院の菊池均医師によると、このような傷です。
・農作業のけが(鎌などの農機具、枯れ枝)
・解体作業中(古釘、さびた釘などを踏む)
・海の岩場のけが
・交通事故
・動物にかまれる
・熱中症などで転倒してけが