穏やかな音色を奏でるのは、第二次世界大戦での名古屋空襲を受けたピアノ。80年以上前の姿をそのまま残すのには、今を生きる音楽家たちのある思いがありました。
名古屋空襲の記憶を伝える“被弾ピアノ”

2026年5月13日、名古屋市内の駐車場にとまった1台のトラック。荷台に積まれていたのは、2台のピアノです。
ピアノ所有者 矢川光則さん:
「これはもう割れているんですよ」

所々表面がはがれ、側面には、えぐられたような大きな傷も。実は、このピアノ、約80年前、名古屋空襲で被害を受けたもの。

ピアノについて矢川さんは、「このピアノは、ものすごくダメージを受けていると思う。ピアノがあった家は、かなり崩れているのではと思う」と明かします。

第二次世界大戦で63回もの空襲を受け、8,000人近くが犠牲になった名古屋。
1945年5月14日は、一日だけで 2,500 トン以上の焼夷弾が落とされ、街は火の海となりました。名古屋城が焼失するなど、この日だけで死傷者は 1,100 人以上にのぼったといいます。
アヴェ・マリアに込めた平和への思い

それから81年。名古屋空襲のときの“被弾ピアノ”は、広島の原爆で被害を受けた“被爆ピアノ”と共に、名古屋にやってきました。
2026年5月14日、「なごや平和の日」に開かれるコンサートで演奏される予定です。
演奏するのは、名古屋在住のピアニスト佐藤奈菜さん。3年前、戦争被害を受けながらも残ったピアノの存在を知り、所有者に“ぜひ演奏させてほしい”と直談判。それ以降、全国各地で20回以上コンサートを開いています。

コンサート前日、佐藤さんが訪れたのは、大通から離れた遊歩道にある慰霊碑。壁に残る無数の穴から、当時の爆撃の威力が伝わってきます。

コンサートを前に、この場所で祈りを込めて、演奏することになった佐藤さん。ただ、名古屋の被弾ピアノは状態が悪く、屋外での演奏に向かないため、ここでは広島の“被爆ピアノ”を演奏します。

演奏曲は「アヴェ・マリア」など全3曲。演奏に込められた佐藤さんの“平和への思い”が、美しい音色となって、遊歩道に優しく響き渡ります。
ピアニスト 佐藤奈菜さん:
「(ピアノが)残っているというところが、昔のことをちゃんと伝えてくれている。悲しいですが、そこから私たちが何ができるかを考えたいなと思います」
被弾ピアノによるコンサートは、2026年5月14日、名古屋の熱田文化小劇場で開催されます。


