小学1・2年生の通知表やめます　岐阜・美濃市の教育委員会「低学年はのびのび過ごしてほしい」

学期末の楽しみだった人も、憂うつだった人もいる「通知表」。
そのあり方が変わってきているようです。岐阜県美濃市は、市内の5つの小学校で1・2年生の通知表を廃止することを決めました。

　美濃和紙や「うだつの上がる町並み」で知られる岐阜県美濃市。このまちの小学校に今年、大きな変化が。

「1年生と2年生のみになるが、通知表の作成をしない」(美濃市教育委員会 島田昌紀 教育長)

　美濃市教育委員会によりますと、今年度は1年生のみ、来年度からは1年生と2年生の通知表を廃止することになりました。その理由はーー。

「いまの通知表は各教科に観点が3つずつあり、思考力・判断力・表現力や知識・技能…子どもたちにとっても分かりにくいので、〇の数が全部で何個あるかとか、△が何個あるかとか、そういったことに注目が集まりがち」
「小学校に入学したばかりの時期に、人と比較したり劣等感を持ったり、序列みたいなものにつながることが、子どもたちが生き生きと毎日学校で楽しく過ごすという観点から避けたい」(島田教育長)

具体的な子どもの良さを評価の代わりに

　今回の通知表の廃止は、教育委員会からの意見をもとに市内の5つの小学校の校長が決めました。

　7月と12月ごろに行われる保護者との懇談や、学年末に渡される「修了証」で、子どもの生活面を含めた具体的な姿を伝えることで、通知表の評価の代わりにするとしています。

「朝顔の観察で『花の開き具合の細かな変化に気づいて仲間に紹介していた』『そういう所に目が向けられるのがこの子の良さと感じた』とか、具体的に子どもの良さ、得意が分かるように記載させていただく」(島田教育長)

　通知表廃止について、美濃市民は…。

「(子どもが)低学年の頃はあまり気にしていなかった。高学年になり、中学を意識し始めると通知表の内容が気になってくる。低学年のうちは学校に慣れて伸び伸びとという感じで、あまり見ても気にしない」(中学生の子の親)

「通知表自体が〇×とかでは評価が見にくいからいいと思う」(4歳の子の親)

　美濃市教育委員会によりますと、全国で通知表を廃止する学校の例はあるものの、市全体でというのはあまりないのではないかということです。

通知表の廃止について専門家は…

　小学校における通知表の廃止について、名古屋大学の中嶋哲彦名誉教授(教育学)はーー。

「各評価の成績が5段階や〇△で示されることで、子どもは“得点力”に対する意識が異様なまでに刺激されていると思う。そういう視点で通知表のあり方を考え直していくということであれば大事なこと」(中嶋名誉教授)

Q.小学校低学年への通知表の廃止は全面的に良いこと？懸念もある？

「学力だけに意識が向かうことを防ぎたいのであれば、1～2年生に限らない話。上の学年のことはどう考えているのか疑問。上に上がるほど学力競争は大変になっていくので」(中嶋名誉教授)

通知表廃止に疑問も

　中嶋名誉教授は「通知表」の廃止については一定の評価をしながらも、1・2年生までの線引きには疑問を示していました。

　さらに「通知表は教育活動の指針」といい、「どういう評価に向かって教育しているのかの過程が分かりにくくなる」という懸念も示しました。

　また今回の決定に、子どもや保護者、現場の教師の意見は聞いたのかと疑問を示していました。