
「就職氷河期世代」いまも仕事を探しながら物価高に苦しむ 参院選で各党の政策は?

7月20日投開票の参議院選挙。雇用環境の厳しさにさらされながらキャリアを歩んできた就職氷河期世代に対し、各党が訴える政策は――。

岐阜市の「ハローワーク岐阜」。「キャリアアップコーナー」と名付けられたブースをのぞくと、新たな働き口を探す人を対象とした模擬面接が行われていました。
岐阜市に住む鈴木康夫さん(55)。今年4月まで県内のスーパーに勤め、レジ接客などにあたっていたといいますが――。
「4月20日まで勤めていたが、閉店ということになり、就職活動をしています」(鈴木さん)
スーパーでの雇用形態は、非正規雇用でした。
政府は、全国に1700万人いるとされる「就職氷河期世代」(バブル崩壊後の1993年から2004年ごろに就職活動を行っていた人たち)を含む中高年の就職支援を行う専門窓口をハローワークに設置しています。
就職氷河期世代は、就職難だっただけでなく、正社員を希望しながら派遣社員やパートなど「非正規」で働くことを余儀なくされている人が多いのが特徴です。
4月まで非正規雇用で働いていたという鈴木さんも、この支援の対象となっています。
就職難に物価高も

自動車が好きで、高校卒業後は自動車部品の製造や車体のコーティングなどの仕事も経験してきたという鈴木さん。
年齢を重ねれば重ねるほど、正社員になることの厳しさが増しているといいます。
「年齢的なことと、ちょうどコロナの時期と重なったこともあって、なかなか安定した就職先が見つからない。就職することが厳しい。私たちの年代になってくると、1日も早く就職したいというのはあります」(鈴木さん)
就職活動を始めて2カ月余り。物価高による負担も、じわりじわりと大きくなっています。
「商品が値上がりするのを勤務先のスーパーで見てきたので、物価高に関しては一般の方より敏感に感じていると思います。日常生活に関係している食品が値上がりするのは厳しい」(鈴木さん)
鈴木さんは来週、期日前投票で1票を投じる予定です。
「雇用の話や就職の支援の話などあると思うが、今後より一層良くしてくれる政策を、自分と同じ世代の方もそういったことを希望しているのではないか」(鈴木さん)
岐阜選挙区の候補者に聞く

就職氷河期世代の当事者の声に、参院選の候補者はどう対応していくのでしょうか?
改選数1の岐阜選挙区には、新人6人が立候補しています。
立憲民主党の新人、服部学氏(54)は、政治主導で就職氷河期世代の問題を解決するとして、非正規雇用から正規雇用に転換させる政策の必要性を訴えています。
「いま全く対策がされていないと思う。そもそも非正規労働を認めた時点で、こういうことになるのは分かっていることだと思うので、短期間であっても正規雇用になるような対策が必要だと思う」(服部氏)
参政党の新人、瀬尾英志氏(40)が訴えるのは、農業や林業に携わる人たちを公務員のような立場にし、就職氷河期世代を積極的に雇用する政策です。
「お米であったり林業であったり、民間ではなかなか守れないものを、公務員化・準公務員化を訴えている。安定化した職のなかで就職氷河期の方の活躍の場も創出されるかなと思う」(瀬尾氏)
自民党の新人、若井敦子氏(53)は、事態は「深刻だ」として、賃上げを含めた就労環境の改善が必要だと主張しています。
「就職氷河期世代は、これから親の介護が始まったり、子どもたちが大きくなって大学進学したりと教育費もかかってくる。やはり賃金も含めた就労環境の改善は必要だと思う」(若井氏)

共産党の新人、三尾圭司氏(49)は、「離職率の低下」と「正規雇用に向けた環境整備」の両輪で就職氷河期世代の問題を解決していく考えです。
「国費を投入して医療・福祉・介護・教育の現場の方たちが離職しないで済むことと、正規で働ける環境づくりが必要最低限、大事だと思う」(三尾氏)
無所属の新人、伊藤あゆみ氏(54)は、就職氷河期世代に向けた政策について直接の言及はないものの、女性の社会進出の重要性を訴えています。
諸派の新人、小池裕之氏(31)は、資格試験をインターネット上で受けられるようにすることや、女性が安定して働けるよう支援することが就職氷河期世代の問題解決につながると主張しています。
「就職氷河期世代」に向けた各党の政策

「就職氷河期世代」に向けて、各党はどんな政策を打ち出しているのでしょうか。主要10政党の公約を見ていきます。
【自民党】
・正規・非正規雇用の格差を是正するとともに、正規雇用への転換を進める
【立憲民主党】
・就職氷河期世代を含む現役世代の年金の底上げを実現
・非正規雇用から正規雇用への転換を推進
【公明党】
・相談やリスキリングから就職・定着までを切れ目なく支援
・国や地方自治体の公務員中途採用についても継続的に実施
【日本維新の会】
・安定雇用と個々の能力開発を支援
・リスキリング機会の提供や正規雇用化の支援
【共産党】
・正規雇用を広げ、転職支援を拡充
・最低賃金を時給1500円、手取り月額20万円程度にすみやかに引き上げ、時給1700円を目指す

【国民民主党】
・年金の最低保障機能強化
・”履歴書と面接を入口としない採用”で採用促進
【れいわ新選組】
・公共事業として公務員採用
・非正規の就職氷河期世代を正社員化する企業に補助金を出す
【参政党】
・非正規雇用の正規雇用化
ただ、就職氷河期世代に特化した形では公約に記載なし
【社民党】
・最低保障年金を月10万円に
【日本保守党】
就職氷河期世代に対する政策については公約に記載なし
各党の政策を比べると

10政党を見比べると、就職氷河期世代の特徴である“非正規雇用が多い”という現状を変えようと、正規雇用への転換を進めるという公約が多くみられました。