開幕に向け、着々と準備が進められている「愛知・名古屋アジア・アジアパラ競技大会」。大会を巡って議論されてきたのが、お金の問題です。多額の経費が確定していますが、愛知県には、どのような効果が見込まれるのでしょうか。
アジアパラ競技大会は日本では初開催

アジアから合計2万人近くの選手団が集結する、アジア・アジアパラ競技大会。日本でアジア競技大会が開かれるのは3度目、アジアパラ競技大会は日本では初めての開催となります。
競技会場は、愛知県を中心に53か所。第20回アジア競技大会では、アジア45の国と地域から、選手団(選手・チーム役員)が最大15,000人(合計43競技)、第5回アジアパラ競技大会では、アジア45の国と地域から最大3,600~4,000人の選手団(選手・チーム役員)が集結します。
予算は決定当初から3.5倍以上、約3700億円へ

アジアパラ競技大会の招致が決定した2020年時点で、アジア・アジアパラ競技大会の合計予算は約1000億円とされていました。
しかし、それから約4年が経ち、競技数の増加、建築資材の高騰、人件費の上昇、さらには近年の物価高騰などの影響で、合計予算は当初予算から3.5倍以上の、約3700億円まで増加。この影響で、県の2026年度予算は過去最大となりました。
財源は約2600億円不足することになり、災害時などに使用する、県の貯金にあたる「財政調整基金」などを活用することになりました。

名古屋市も、2026年度予算を「アジア・アジアパラ全力予算」と名付けた上で、「財政は非常に厳しい状況」としています。
名古屋市の市債発行額は過去最高に上り、返済のための積み立て金から借り入れる、22年ぶりの異例の対応となりました。
大会費用は2980億円、経費の内訳は?
2026年3月31日、経費の内訳が初めて公開されました。

現時点で、大会費用は2980億円。そのうち、選手村の代わりとなるクルーズ船やコンテナハウスの建設費が520億円、会場設営や備品など競技関係のための経費が490億円となっています。


また、経費の多くを占めるのは人件費。なかでも全国から17万人の警備員が必要となり、警備費は約280億円。さらに、大会経費2980億円とは別に、PR活動などの関連経費として約700億円が予定されています。
「式典」で予算がさらに膨れ上がる可能性も?
2026年3月に開かれた4回目の調整委員会で、アジア競技大会を主催するOCA(アジア・オリンピック評議会)から言及されたのが、名古屋市瑞穂区の『パロマ瑞穂スタジアム』で開かれる開会式。
開会式は、名古屋市出身で、テレビドラマ「SPEC」シリーズや、映画『20世紀少年』を手がけた堤幸彦氏が総監督を務めます。
開会式を含む式典の費用は、現時点で70億円。しかし、調整委員会後、モハマド・タヤブ・イクラム委員長は、記者会見で「開会式をより人々の記憶に残る式典とするため、予算を増やしてほしいと提案した」と話しました。

予算が今後増えていく可能性について、組織委員会の担当者は「開会式は、最先端のテクノロジーを駆使した、華やかで一体感ある、世界に誇れる演出を目指して、準備を進めております」と回答。予算が膨らむ可能性など詳細については、現時点で答えられないとのこと。経費は今後、変動していく可能性もあるということです。
経済波及効果1兆8177億円、効果を最大化する方法は?
この大会が主に開催される愛知県には、どのくらいの恩恵があるのでしょうか?
恩恵について、愛知県と名古屋市は「一定の経済波及効果がある」としています。同県と同市によると、大会の開催による経済波及効果は、開催が決定した2016年から、大会開催から10年後の2036年までの20年間で、愛知県で1兆8177億円、全国で3兆6831億円とされています。
具体的には、どのような効果が見込まれるのでしょうか。また、その効果を最大化するために、この地方に住む私たちにできることはあるのでしょうか。経済に詳しい、中京大学経済学部・内田俊宏教授に話を聞きました。
―アジア・アジアパラ競技大会の効果について教えてください。経費の採算をとることは可能ですか?
「そもそも、現代の国際スポーツイベントで、“イベント単体で採算をとろう”と考えてはいけないと思っています。直接的な経済効果としては、チケット代、観客・選手が名古屋に来て消費すること、施設建設費などがあります。しかし、本当に大きいのは、愛知・名古屋のブランド価値が高まって、将来的な成長につながる、目には見えないレガシー効果の部分です」
―「レガシー効果」のお話がありましたが、会場となる愛知県にとって、ポジティブな面とは具体的にどんなことでしょうか?
「愛知県は東京や大阪に比べて、インバウンドをあまり取り込めていません。海外の人は東京や京都へ、リピート客は福岡や北海道に行ってしまっている現状です。だからこそ、時間距離が近い東アジア、東南アジアの市場から人を呼び込むために、大会を通じて『愛知・名古屋はこういうところなんだよ』という情報発信をできることが、すごく大きいことだと思います。特にこの地方で盛んな、自動車や工作機械などものづくりのマーケットにおいて、今人口が増えているアジアが一番成長しています。また、大会をきっかけにアジアのスタートアップ企業との連携や、東南アジアとの資源外交の可能性も広がっています。スポーツを付加価値として高めるスポーツマネジメントの発展、施設の利用など、中長期的な付加価値が生み出される可能性もあります。大きな視点でみると、こうした流れを生かし、地域が発展して税収が上がれば、地元に大きなメリットがあるはずです」
―愛知県にとって、“大会が成功した”といえるのはどんな状態でしょうか?
「大会期間中の盛り上がりだけではなく、終わった後に“どうつながるか”が大事です。整備した施設が地域で使われて新しい付加価値が生まれる、アジアの国との企業連携が増える、国際会議が名古屋で開かれるようになるとか。成功の結果がみえるのは直後ではなく、10年後ぐらいに、『アジア・アジアパラ競技大会がきっかけだったよね』と言える状態ではないかと思います」
―大会開催を成功に導くために、地元民ができることはどんなことでしょうか?
「大会期間中であれば、地域一帯で盛り上げておもてなしをしたり、SNSで情報発信をしたり、外国語での案内による受け入れ体制を整えることも大切です。一番大切なのは、大会後の“レガシー効果”をどうやって最大化していくのか、地元民や企業がちゃんと考えて動いていくことです。企業もお金を出して終わりではなく、この機会をどう生かせるか、それぞれ考えてみるのもいいかもしれません」
先行販売では開会式・閉会式はチケット完売、大村知事「出足は好調」

開幕まで約5か月。現時点で、機運の盛り上がりはあるのでしょうか?
チケットの一次先行販売では、開会式と閉会式が完売したほか、バスケットボールや卓球、スケートボードなど一部競技で完売した日程もあるとのこと(先行販売で完売したチケットでも、一般販売で購入可能)。愛知県の大村知事は販売状況について、「出足は好調」と話しました。
県を挙げて取り組んでいる、アジア・アジアパラ競技大会。地元の人たちにとっても、大会を盛り上げられるかどうかは、愛知県の魅力を高める上で重要なターニングポイントになるかもしれません。


