薪で熱した石窯の余熱だけで焼く…職人歴47年の老舗ベーカリー店主 守り続ける“唯一無二の味”に迫る

 岐阜県垂井町で人気を集める老舗ベーカリーには、薪で熱した石窯の余熱だけで焼くこだわりのパンを求め、全国から客が訪れます。職人歴47年の店主が守り続ける“唯一無二の味”に迫りました。

■石窯パンが人気の老舗ベーカリー

 菓子パンや総菜パンなど、およそ180種類のパンが並ぶ「グルマン・ヴィタル 垂井本店」。敷地内には緑豊かなイートインスペースやカフェもあり、まさに“パンのテーマパーク”です。週末には、2000人以上が訪れる人気店となっています。

店の看板商品は、石窯に蓄えた余熱だけで焼き上げる「石窯VITALカンパーニュ」(1080円)。外はカリッと香ばしく、中はもっちりとした食感が特徴です。 客: 「見た目の印象に反して、モチモチとしていておいしかったです」 別の客: 「石窯で焼いた香ばしさが一番ですね」

2代目店主の鈴木政裕さん(69)は、「自分にしか作れないパン」を追い求め、石窯で焼くことにこだわり続けています。 鈴木さん: 「石窯の魅力は、その熱量です。どれだけ性能が良い電気やガスの窯でも、この味は再現できません。やはり石窯で焼くのが一番おいしい」

■職人の経験が生む石窯パン

 午前6時30分。鈴木さんの一日は、石窯に薪をくべることから始まります。パンを焼くのに適した温度まで窯を温めるには、およそ4時間。じっくりと窯に熱を蓄えていきます。 一方、生地づくりにもこだわっています。発酵を安定させ、しっとりとした食感を生み出す「中種」は、完成までに5日間をかけるといいます。

午前10時30分。十分に熱を蓄えた石窯で、パンを焼いていきます。 鈴木さん: 「ガス窯だったら火が入っているから何時間でも焼けます。でも石窯は温度が下がるのに合わせてパンを焼いていきます」 石窯パンの特徴は、火を使わず、窯に蓄えられた余熱だけで焼き上げること。ガス窯のように火力を調整することはできないため、手間も時間もかかりますが、それこそが石窯ならではの味わいを生み出す理由です。

パンを窯に入れると、あとは焼き上がりのタイミングを見極めます。窯の状態によって焼き時間は毎回微妙に変わるため、一瞬たりとも目を離せません。 鈴木さん: 「今は世の中が便利すぎる。全てが自分の思うようにならない世界には魅力がある。それと寄り添うのが仕事の原点だと思います」 15分後。表面の色を確かめながら取り出します。 鈴木さん: 「100点満点にはできないけど、今日はいい出来だと思います」

石窯の余熱、いわゆる遠赤外線で焼いた「石窯パン」。外はカリッと香ばしく、中はもちっとした食感。かむほどに小麦の香りや旨みが口の中いっぱいに広がります。焼き上がったパンは、すぐに店頭に並べます。 客: 「外がパリッとしていて、中がもちっとしている」 別の客: 「かむと小麦のいい香りがします」

■受け継がれる思いと新たな挑戦

 学校給食やスーパー向けのパンを製造する「マルセパン」の長男として誕生した鈴木さん。幼い頃から、周囲に“ある言葉”をかけられてきたといいます。 鈴木さん: 「おいしくないってよく言われた」 その悔しさが、パン作りの原点でした。 家業を継いだ後も「もっとおいしいパンを作りたい」という思いを抱き続け、たどり着いたのが石窯パンです。

鈴木さん: 「ここに全ての原点がある」 こだわりの石窯パンを求めて、いまも多くの人が店を訪れます。 そんな中、最近SNSで話題を集めているのが、鈴木さんの次男が考案した「エンジェルフロマージュ」(1490円)です。 石窯パンとは対照的な、“天使のようなくちどけ”が評判になりました。

客: 「インスタで見て買いたいと思って来ました」 別の客: 「すぐに売り切れてしまうので、朝一番で来ました」 さらに、岐阜県のブランド米「ハツシモ」の米粉を使った「石窯ハツシモ・レ・カヌレ」(380円)も人気です。もちっとした食感が評判を呼んでいます。 現在は長男と次男も家業に加わり、それぞれのアイデアで新たな商品を開発しています。

鈴木さん: 「“便利”であることが今の社会の流れ。でもグルマンが目指すのは便利ではなく、人の心に残る仕事です」 パン職人として47年。鈴木さんが大切にしてきた思いはただ一つ。「パンで感動を与えたい」。その思いは次の世代へと受け継がれています。 2026年6月4日放送

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