
家庭や職場にも人型ロボット!? 中国の開発企業は45万社 日本が遅れを取るワケは… 「海外企業は製品を作ると『出してしまえ』と勢いがある」

大きな工場や映画テレビの世界の存在と思われがちですが、実は将来あなたの家庭に入ってくるかもしれない“ロボット”。ただ、気になるのは、日本の遅れです。
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(大石邦彦アンカーマン 10月29日)
「名古屋市港区のポートメッセなごやに来ています。たくさんの方が来ています。こちらには今使われているロボット、これから使われるだろう最新のロボットが展示され、約600社が出展しています」
10月、ポートメッセなごやで開催されていたのは、最新のロボット技術の見本市。来場者は3日間で3万人にのぼりました。
(大石)
「こちらには大型のロボットがあります。ダンボール箱にアームがくっつきました。そして、持ち上げて反対側に持っていく。このダンボールをスムーズに今離しました」
空気の吸着で、最大21キロもの荷物を楽々と持ち上げるロボットや…
(大石)
「こちらにも車のようなロボットがあります。カメラのようなものも付いてますが、これは一体どんなロボットなんですか」
(六合エレメック・石原博さん)
「工場などでパトロールをするロボットです」
動きも人間とほぼ同じ?人型ロボット
いろいろな場面に利用が進むロボット。
昔からロボットといえば、工場で働く大がかりなもの。この分野で日本は、世界をリードしてきた、いわばロボット大国ですが、今急速に開発が進められているロボットは、少し違う分野で盛り上がっています。
(大石)
「屈伸した!バランス取れている。バックもできる。後ずさりは、結構難易度の高い動きだと思うんですけどね」
会場でひときわ注目を集めていたのは、人間と同じように頭と胴体に2本の腕と足
、動き方もほぼ同じ人型ロボットです。
巨大な部品を動かし、素早く正確に溶接などを行う工場のロボットとは違って、人間と同じ場所で同じように働ける人型ロボット。熱心に見ていた機械工具の業者に聞くと…
(機械工具の商社)
「技術をどう伝えていくかが課題。そもそも人口が減っていくという話。“第三の手”が必要になってくる」
Q.その第三の手はロボット?
「ほかに何かあるんだったらいいんですけど…」
中国の開発企業は“45万社”に
また、再生可能エネルギーの普及などに取り組む企業は…
(情報通信業)
「物を持ち上げたりする作業をしていただくにあたって、協力していただける会社がどんどん減っている事情がある。それを考えると将来的には当然、人型のロボットが人と協調しながら、作業を担っていくことも考えておかないと、事業を続けられない」
幅広い業界から注目を集めていた人型ロボットですが、実は…
(Tech Share・宮島健さん)
「中国のUnitreeという会社のロボットになります」
これは中国製。日本の企業は代理店として扱う立場です。
(宮島さん)
「今は研究開発の段階が多い。やっとこういった人型ロボットが、製品として買えるようになった。今までは、研究段階で買おうと思っても買えなかったのが、中国メーカーで一応市販品として、販売する製品として成立している」
人型ロボットの開発に、国をあげて取り組む中国。判断する「大脳」。バランスを制御する「小脳」。モーターや関節などの「四肢」と3部門に分けて、国は13兆円を超える基金を設定。開発企業は実に45万社に上ります。
ニュースでも取り上げられるロボットの運動会は、全てその成果を見せる場なのです。アメリカも、頭脳部分に当たるAIの開発だけで、16兆円もの民間投資が行われています。大手自動車メーカーBMWの工場では、既に試験導入が始まるなど、急速に開発が進んでいます。
「ロボット1台の値段は安くても、その裏に膨大なお金が」
一方、産業用ロボットを中心に今も製造技術や信頼性では、世界一を誇る日本ですが、人型の分野では後れを取っているのが実情。
2000年代初めに世界を驚かせた、自立型の人型ロボットASIMOも、開発は2022年で終了。中国やアメリカのように、明確に産業転用を目指して開発が行われているとは言い難いのが実情です。
日本の人型ロボットの第一人者、早稲田大学の高西淳夫教授はこう話します。
(早稲田大学・高西淳夫教授)
「開発に失敗して壊れているロボットが、何百台何千台とあると認識しないとけない。ロボット1台の値段は安くても、その裏に膨大なお金がかかっているし、いろんな技術・企業も開発にかかわっている。人型ロボットを社会に入れる社会構造が変わっていかないといけない」
「海外企業は製品を作ると『出してしまえ』と勢いがある」
(大石)
「2足歩行が難しいと言われていましたけどね、ロボットの世界では。もう2足歩行は普通になってますね」
愛知県刈谷市の自動車部品メーカー・アスカ。10月にロボットのショールームをオープン。人手不足の対策として、ビジネスチャンスを見いだしています。専用のゴーグルで操作も可能。
(大石)
「よし掴んだ。ボックスに入れました。完全にロボットと同期・同化していますね」
このロボットの価格は約2000万円。やはり日本製ではなく中国製です。
(アスカ ロボットシステム事業部・波多野良明課長)
Q.日本と中国企業の差は何?
「開発スピードと確実性を狙うか狙わないか。海外企業は製品を作ると『出してしまえ』と勢いがある事が多い。そういった点の違い」
(大石)
「日本はもっと石橋を叩いてから渡るじゃないですけど、精度を上げてから販売する。中国はもっと前の段階で、まず販売すると」
(波多野課長)
「そうです。中国やアメリカは中身をより良いものに、後から仕上げていく」
家庭で“人型ロボット”がサポートする日も…
再び名古屋のロボット見本市。アメリカと中国が急速に発展を遂げる中、日本で20年以上人型ロボットの開発を手がける企業に、今後この分野で世界と戦えるのか聞くと…
(カワダロボティクス 営業部・寺崎清課長)
「日本の製造業は難易度がすごく高い。単に安い中国製のロボットを使っただけでは、人間がやっている作業の自動化は難しい。日本のオリジナリティ・製造技術の発展の方向性で、まだまだ戦えるという感覚は持っている」
先日、Webで紹介されたノルウェーの新型ロボット。人間と同じ家で生活をサポートする利用が提案されています。
人手不足を補う労働力や新しい基幹産業として、人型ロボットを真剣に位置づける海外に、後れを取られないようにできるのか。のんびり見ている場合ではないと言えます。





