「本当に暮らしづらい世の中だと思う」 どうする「サナエノミクス」 景気実感に必要なことを専門家が指摘

高市政権の経済政策の柱となる「日本成長戦略本部」が始動しました。この戦略本部は「AI・半導体」・「防衛産業」など、17の戦略分野を設定しました。各大臣のもと、投資内容や目標額、時期を定めます。さらに、解決すべき課題として、物価上昇を上回る賃上げなどを挙げました。
街の人たちに話を聞くと「あまり景気が良いという実感はない」「電気代も高いし、ガスも高いし、本当に暮らしづらい世の中だと思う」との反応がありました。
景気が良くなったと市民が実感するためには、何が必要なのでしょうか。第一生命経済研究所、首席エコノミストの永濱利廣さんに話を聞きました。
労働者の転職を促す政策が重要か

――街ゆく人が「豊かになった」と実感するためには、どのような政策が求められるのでしょうか。
「実質賃金がプラスになる必要があると思います。しかし、賃金は勝手に上がるものではないため、ポイントとしては労働者の転職を促す政策が重要なのではないかと思います」
――なぜ、労働者の転職を促す政策が重要なのでしょうか。
「日本は労働市場の流動性の踏み込みが甘く、企業が稼いでいるにもかかわらず、労働者に支払う賃金が少ないです。労働市場の流動性が低いと、経営者が人材流出に対する危機感が薄くなってしまいます。そこを打破するために、例えば中途採用を積極的にした企業に税制優遇をしたり、転職した方に転職した年の所得税を優遇したりといったことが必要です。
労働者が前向きに転職しやすい環境をつくることで、企業・経営者側も人材をつなぎ止めるために賃金を上げなくてはならないという考えから、賃金アップにつながるのではないかと思います」

――こうした内容は、非正規雇用の皆さんにとってはまた少し違う話かな、とも思います。その辺りはどうするのが良いでしょうか。
「非正規労働者の方々が賃金を上げるためには、できるだけ正社員になるべきではないかと思います。しかし、非正規労働者について総務省の調査データを見ると、半分以上の方々が『都合の良い時間に働けるから』といった理由で、自ら望んで非正規社員で働いている方が多いです。
すでに民間の一部の企業では、週休4日制の正社員などの都合の良い時間に働ける枠が少しずつ増えてきています。官民が連携することで、企業側が都合の良い時間に働ける正社員を受け入れられるような企業が増えていく。そして税制優遇されるなどの政策を進めていけば、正社員が増えて結果的に賃金も上がりやすくなると思います」
――永濱さんは、政府の経済政策の方向性などを議論する経済財政諮問会議の民間議員にも起用される見込みとのこと。今回のお話のような内容を、提言されるのでしょうか。
「仮に就任した暁には、こうした政策を前向きに提言していきたいと考えております」





