大きな夢を抱き、宇宙への挑戦を続ける高校生たちがいます。先輩たちからバトンを受け継ぎ始まったプロジェクト。しかし、1年の歳月をかけて作られた2号機を待ち受けていたのは、予期せぬ事態の連続でした。自然の猛威、迫られる苦渋の決断、そして海での機体回収…。はたして、高校生たちの挑戦は成功するのでしょうか。
宇宙に挑戦する旭丘高校天文部

2026年2月、中京テレビ「キャッチ!」の取材班は、あるビッグプロジェクトの現場を訪ねました。その主役は、愛知県屈指の進学校、旭丘高校の天文部の生徒たち。
2年生 天文部部長 岡田颯仁くん:
「こちらが今年の3~5月、成層圏へ打ち上がる予定」
そう言って見せてくれたのは、カメラが取り付けられた機体のようなもの。これにバルーンを付けて飛ばします。目指すのは遠く離れた雲の上、宇宙の入り口“成層圏”です。

この挑戦、実は2回目。2024年、先輩たちが1号機を打ち上げ、機体に取り付けたカメラで、成層圏から地球の撮影に成功しました。
この挑戦に憧れ、多くの生徒が入部。みんなで作った2号機の打ち上げが迫っていたのです。

取り仕切るのは、2年生の天文部部長・岡田颯仁(はやと)くん。いつも冷静なプロジェクトマネージャーです。この1年間、2号機の打ち上げにすべてを費やしてきたといいます。
そんな岡田くん率いる天文部には、新たな目標がありました。今度は地球ではなく、“星”を撮影しようというのです。
2年生 天文部部長 岡田颯仁くん:
「地上から見上げる星座を上空から撮ってみること自体、何か別の価値につながると思う」
地上から見る星は、どんなにきれいでも空気の汚れによって見えづらくなった状態ですが、成層圏は空気がほとんどありません。星はどのように見えるのでしょうか。
試練の2号機 部長が下した決断は…

3月27日午後7時すぎ、天気は晴れ。ついに打ち上げの日がやってきました。舞台は三重県・鳥羽市の「鳥羽市民の森公園」。
同じころ、静岡県浜松市の漁港にも部員が待機していました。成層圏まで上がった後、こちらは、海に落ちてくる予定のカメラを船に乗って回収します。

順調に準備を進める打ち上げ班ですが、実はまだ打ち上げを決断できずにいました。その理由は“偏西風”。機体は東の方向に飛んで最後に海に落下する予定ですが、予想外に風が強く、船でたどり着けないほど飛ばされる可能性が出てきたのです。
みんなで1年以上準備してきたこの機体。打ち上げたあと、きちんと回収してカメラの映像を確認できなければ、成功とは言えません。

後輩を応援するため駆けつけた卒業生をもってしても、なかなか意見がまとまりません。
2年生 天文部部長 岡田颯仁くん:
「(先輩の意見は)参考になったといえば参考になった。だけど、みんなの意見があまりにも違いすぎるので」
決行か中止か…最終的に決断を下すのは部長の岡田くんです。悩み続けて3時間たっても、笑顔はありません。
一緒に来ていたお父さんは…
岡田くんの父:
「いろんな意見がある中で判断しなければならないという、非常に難しいことをやっていると思う。いい経験だと思うので、しっかり考えて決めてもらいたい」

考え抜いた岡田くんが下した決断は…決行でした。
成功のため、風に流されるリスクはできるだけ取り除きたい。最後まで調整を重ねます。その様子を、浜松の回収班もパソコンで見守ります。
緊張が高まる中、バルーンへのガス入れが開始しました。バルーンはどんどん膨らんでいき…日付を超えた午前2時すぎ、ついに準備は整いました。

岡田くんのカウントダウンとともに、機体は夜空へ。打ち上げは見事成功! 部員たちからは思わず歓声が上がります。岡田くんも機体が見えなくなるまで見つめていました。
あとは回収するだけ。しかし、笑顔が戻ったのもつかの間、試練が待ち受けていました。
「必ず回収できる」信じて海へ

宇宙の入り口、成層圏から星を撮影するため機体を打ち上げた旭丘高校天文部。
無事、打ち上げた喜びもつかの間、上昇スピードがかなり遅く、風の影響を受ける恐れが出てきたのです。想定外の出来事に、天文部部長の岡田くんも…
2年生 天文部部長 岡田颯仁くん:
「まあまあ焦っているっていうのが正直なところです」

心配していた通り、機体のGPSが示した落下先は、回収班が待機している浜松から大きく外れた御前崎の南南東。回収班は出港したものの、泣く泣く戻ってきました。
1年生 回収班 石橋鷹義くん:
「非常に悔しいです。心の底から。ただ、(機体の)通信としては3系統生き残ってて、1分おきに位置情報が送られてきている。行くことさえできれば必ず回収できる」
回収班の石橋くんは、まだ諦めていませんでした。

3時間後の午前9時ごろ、回収班の姿は静岡県焼津市の大井川港にありました。東へ流された機体を焼津から回収しようと、急きょ協力してくれる船を見つけたのです。
深夜の打ち上げの後、2度目の船で疲れもピークに達する中、機体のGPSが示す場所へ、ただひたすら船を進めます。
そして、2度目の出港から約3時間。ついに機体を回収することができました! しっかりカメラも固定されています。
試練くぐり抜け捉えた星空

その夜、部員たちは高校に集まりました。カメラに星は写っていたのでしょうか。
映像を確認してみると…そこには輝く星が写っています。カメラは無事、成層圏に到達していました。

この打ち上げをもって部活を引退する岡田くんら2年生。後輩に伝えたいことは…
2年生 天文部部長 岡田颯仁くん:
「僕なんかが(後輩に)伝えられることは基本的にないですが、楽しんでほしいです、何よりも」

4月、回収班だった石橋くんが部長に就任しました。
2年生 新部長 石橋鷹義くん:
「今、ところどころ笑い声が聞こえてたり、みんなで楽しみを分かち合える。この部活に入ってよかった」
新体制となった旭丘高校天文部。宇宙への挑戦はこれからも続きます!


