元TOKIO・山口達也さん 「気を失うまでお酒を飲まないと、その日が終わらなかった」 根っこにあった“低すぎる自己肯定感”【後編】

「私はアルコール依存症者です」

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そう言ってマイクを握るのは、元TOKIOの山口達也さん。

20歳の頃 友人たちと楽しく飲んでいたお酒は、いつしか1人で飲むものへと変わっていきました。

仕事は絶好調なのに、どこか満たされない毎日。記憶を失ったまま深夜にコンビニへ向かい、気づけば新しい焼酎を用意していた日も。不祥事で芸能界を去った約2年後、“止まっていた”はずのお酒を飲み、バイクにまたがった山口さん。

華やかな舞台に立ち続けた山口さんが、医療を学ぶ専門学校「名古屋医専」の生徒たちを前に、自らの依存症を包み隠さず語りました。

この記事は【後編】です。【前編】と【中編】は以下のリンクから読むことができます。

【前編】“お酒が強いね”は褒め言葉だった 「熱が出たらもっと飲んでやろうと」 アルコール依存症の闘病体験

【中編】朝起きると…身に覚えのない“新しい焼酎”が ラストオーダーでは「焼酎ダブルを5杯」 変わっていった飲み方

「生きづらさ」に気づけなかった

「助けてください」

手を挙げてつながった先は、アルコール専門病院でした。私に必要だったのは、内科ではなく精神科。心が壊れていた。外側から見ていた山口達也は順調に見えていたかもしれない。でも自分が思っている山口達也は、ねじれていた。内側で「生きづらさ」を感じていることに気づけないまま、壊れていったんです。

そんな中で自助グループと繋がり、何百人というアルコール依存症者や薬物依存症者と話をしました。そこで、問題なのはお酒ではなく、私が生きづらさを感じていたことだと気づきました。

入院中に出会った作業療法士の先生に「山口さんレントゲン撮りに行きましょう」と言われました。こんな健康な人を捕まえて…「なんで?」って。

検査を受けてみると、右の大腿骨頭が腐っていることが分かりました。「なんでわかったの?」と思いました。

依存症者の中の仲間たちには、人工関節を入れる人が山ほどいました。お酒が100%“壊死”に繋がるかということは、はっきりとは言えないですが、私の場合は「お酒であろう」と。

病院というのは、治してもらう場所ではないと思っています。治らない人たちがなんで病院に行くのか。私は“出会いの場所”だと思っています。いろんな人と繋がり、助けてもらいながら、前を向いて歩くための場所なんです。

心の根っこにあったのは“低すぎる自己肯定感”

では、なぜ私は依存症になったのか。

すべての始まりは「不安」でした。「芸能界、大変だよね」みたいなことではないです。皆さんと同じ不安です。「今日この服でいいのかな」「授業がわからなかったらどうしよう」「きょう前髪整っていない、どうしよう」。そういう小さな不安が積み重なって、壊れていく。

そして、人と比べるという行為。優秀な人・かっこいい人を見かけると皆さんどう思いますか?話を聞きに行ったり、動画を見たり、勉強をしたり、何とか自分を高めていこうと思いますよね。

人と比べることは、ダメなことばかりではなくて、向上心にも繋がります。でも、「うらやみ」が「恨み」に変わった時、なんであいつばかりうまくいくんだと。なんで自分はこんなにうまくいかないんだと思った時、ねじれるんです。自分を攻撃し始めたら「生きづらさ」を感じます。

周りから見ていても、わからない。「幸せそうだね」「成功してるね」「うまくいってるね」と言われても自分は全く納得していない。

自信を持って仕事をしていたけど、「低すぎる自己肯定感」があったことに気づきました。

仕事帰りに「あの司会の場面、うまく拾えなかった」と持ち帰る。でも、誰かと飲みに行くのではなく、1人で気を失うまでお酒を飲まないとその日が終わらなかった。

寝る前に“自分を褒めてあげる”

そして、ここにたどり着きました。変えられるものと、変えられないものがありますよね。

変えられないものは、過去と他人。生まれてきたこと、起こしてしまった不祥事、なりたくもなかったアルコール依存症。これは全部過去で、変えることはできない。では何が変えられるのか。自分と未来です。

大きな行動を変えようというのではありません。自分の考え方を少しだけ変えてみる。過去を受け入れて、思考を変え、その考えを人に話していく。そうすると、助けてくれる人がいるんです。

私は失敗したことをずっと悩んで、お酒を飲んでぶっ倒れて、ちゃんと受け入れてなかった。表向きの幸せそうな自分だけを見てきた。

大切なのは、頑張った自分を褒めること。「今日うまくいかなかったけれど、私は頑張った」と、その日、一旦区切って夜自分を褒めてあげて寝る。

長い年月をかけて壊れていった「心」

私が考える回復には、順番があります。

まず体が回復します。お酒が止まれば、3週間、3か月と経つうちに体は元気になってきます。睡眠が取れるようになり、健康になる。でも、私のような自分を理解していない依存症者は、ここで安心してはいけない。「体が元気になった、また飲める」とお酒を飲んだ瞬間に逆戻りしてしまう。

その先に、心の回復があります。長い年月をかけて壊れていった心は、すぐには治りません。時間をかけてゆっくりと回復していくものだと思っています。

そして最後に目指すのは、社会への復帰です。この3つがワンセットじゃないと、元に戻ってしまいます。

今日の90分は「治療」でもあった

私は世界中どこにでもいる、一人のアルコール依存症者です。

こうやって皆さんの前で話すことが治療なんです。自分がアルコール依存症であることを忘れないために、どういうことが苦しくて、何が起こって、未来に向かう希望は何かを考えることが、戻らないための行動です。

90分、皆さんに聞いていただいた。だから私は今日、90分間飲まずにいられた。皆さんが質問してくれることで新しい気づきもあった。そういうことがありがたいと思います。

この記事は【後編】です。【前編】と【中編】は以下のリンクから読むことができます。

【前編】“お酒が強いね”は褒め言葉だった 「熱が出たらもっと飲んでやろうと」 アルコール依存症の闘病体験

【中編】朝起きると…身に覚えのない“新しい焼酎”が ラストオーダーでは「焼酎ダブルを5杯」 変わっていった飲み方

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