
肉食外来魚ブラウントラウト どうする?大量繁殖に苦悩する岐阜・飛騨市の漁協 北海道から“救いの手”も・・・

岐阜県の川で問題になっている外来魚の「ブラウントラウト」。
多すぎて駆除が難しい現状をどうすればいいのか、意外な活用法も見つかりました。
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岐阜県飛騨市。2024年12月、あたりに雪が降り積もった中、川に入っている人たちがいます。
高圧電流を発生させる黄色い棒を水中に入れ魚を気絶させては次々にあみですくっていきます。しかし…
(漁協)
「在来魚のイワナです、逃がしてあげます」
「これカジカなんですけど逃がしちゃいます」
元から日本にいる魚は捕まえても放し、特定の魚だけ集めていきます。
(漁協)
「これがブラウントラウト、60センチある」
これらは全て肉食の外来種「ブラウントラウト」。
これは漁ではなく、駆除なのです。
ブラウントラウトはヨーロッパ原産で、見た目は同じサケ科のニジマスに似ていますが、繁殖力と肉食性が極めて高く、日本の川の生態系に深刻な影響を与える恐れがあります。
侵略的外来種にも指定されているブラウントラウト。
スポーツフィッシングのために海外から少しづつ輸入されたものが野生化し、生息域を広げているとみられます。
3時間で166匹! ブラウントラウト大量繁殖
この川では釣り堀用に養殖していたものが20年程前の台風で川に流れ込み、大量に繁殖したといいます。
(漁協)
「7~8割はブラウントラウトですね」
漁協は10年以上前から毎年ブラウントラウトが産卵期を控えた11月と12月に駆除を行っていて、この日は3時間で166匹も捕獲。
しかし漁ではないので収入につながらず、処分にも手間やお金がかかり、大きな負担となっています。
(宮川下流漁業協同組合 森下真次 組合長)
「細々と漁業組合が運営しているので、(駆除の)資金が苦しくなることも考えられる」
しかし、思ってもみない申し出が漁協に寄せられました。
それは遠く離れた北海道から・・・。
大変身の“迷惑魚”に喜ぶワンコ 北海道から“救いの手”
苫小牧市に住む、阿彦政輝さん。
釣りやアウトドアレジャーが趣味の阿彦さんは地元の千歳川で現在、ブラウントラウトばかりが釣れることが心配になっています。
(阿彦政輝さん)
「釣りに行くと8、9割はブラウントラウトが釣れますね」
「サケの稚魚をいっぱい食べて丸々太ったブラウントラウトが多い。いてはいけない魚なんだなと思った」
こうした中、「チャント!」が放送した飛騨市のニュースをネットで見つけ、他の地域でもブラウントラウトが広がっていることを知って飛騨の漁協に連絡をしたのです。
(阿彦政輝さん)
「あの動画を見て北海道だけの問題じゃないと実感した。(ブラウントラウトの)問題を知ってほしい」
「フードドライヤーで、切ったブラウントラウトを乾燥させて作っている」
阿彦さんは魚から犬のおやつを作るサイドビジネスも行っていて、その原材料として駆除されたブラウントラウトを引き取りました。
(阿彦政輝さん)
「これは岐阜県の漁協組合から提供してもらった」
「何か有効活用できないかと思って連絡して提供してもらった」
出来上がったおやつは、2頭の愛犬からも好評です。
“迷惑魚”に新たな価値 一筋の光となるか・・・
ブラウントラウトは全国各地に広がっていますが北海道では特に深刻で道内全域の川で生息が確認されています。
北海道でも繁殖力の強さに追い付けず、根絶には至っていません。
(阿彦政輝さん)
「売りたいですね。興味持ってもらえるだけでいいのでブラウントラウトを知ってほしい」
北海道恵庭市で2025年2月に開かれた犬のイベント。そこに阿彦さんの姿が。
あのブラウントラウトを使った犬のおやつを販売することにしたのです。
(阿彦政輝さん)
「ブラウントラウトという外来種でサケマスの仲間なんですけど、全国的に増えて問題になっているので、漁協からもらって犬のおやつとして有効活用しています」
(お客さん)
「外来魚駆除の活動にちょっとでも貢献できたらと思い買いました」
(お客さん)
「おいしそう。食べ応えがある感じでいいですね」
「こういう魚がいることが広まれば、ワンコにはいいおやつになると思う」
(阿彦政輝さん)
「(売れ行きは)まずまずですね。意外と興味を持ってくれる方が多いと思った」
用意した商品は次々に売れていきました。
今後も飛騨の漁協からブラウントラウトを引き取ることにしています。
駆除費に雲泥の差 コクチバスには1億円も・・・
一方、岐阜県飛騨市の漁協。
(漁協)
「(ブラウントラウトを使った犬のおやつは)食べても美味しそう。裏を見ると酒のつまみに見える」
駆除したブラウントラウトが役立つ先は見つかりましたが、そもそも自分たちだけではとても駆除しきれず、頭を抱えています。
(宮川下流漁業協同組合 長瀬崇さん)
「漁協組合としては被害を受けているので、今は駆除活動をしているが、高齢化が進んでいて行政の協力はなくてはならない」
壁には別の外来魚、コクチバスの駆除を呼びかける県の大きなポスター。
(宮川下流漁業協同組合 長瀬崇さん)
「このポスターには漁場管理委員会と県と連合会の名前があるが、3者でコクチバスは広げないという本気度が伝わってきます」
コクチバスは同じ肉食外来魚ですが、岐阜県の重要な産業にもなっているアユを食べてしまうため、行政が年間1億円以上をかけ、数十人がかりで駆除を行うことも。
地元漁協が細々と行うブラウントラウトの駆除とは対照的です。
(宮川下流漁業協同組合 長瀬崇さん)
「手間と金がかかっているので、うらやましいといえばうらやましいですね」
「ちょっと残念というか(行政には)うちにも力を入れてもらいたい」
川の生態系にとっては同じ脅威でも、利益のあるなしで扱いが違う現実。
外来生物による生態系への侵略は、この瞬間にも続いています。