録音された「詐欺電話」の一部始終 大手通信キャリアや警察をかたる相手に感じた“違和感”

名古屋市北区の女性のもとにかかってきた1本の電話。大手通信キャリアをかたる男から警察官をかたる女まで登場する、典型的な「詐欺電話」でした。被害に遭う前に女性が気付いた“違和感”はどこに?
「東京ドコモショップ品川店で、8月23日に080…のiPhone 16 ProMaxを1台購入されていて…」(大手通信キャリアのカスタマーセンターをかたる男)
6日、40代女性のもとにかかってきた電話は、大手通信キャリアのカスタマーセンターをかたる男から。
「この080の電話から悪質なメッセージが大量に送信されているということで、たくさんの苦情が来ている。今この080の電話は停止したが、(女性の)電話も2時間後には停止する予定になっています」
電話口の男は、契約した覚えのないスマートフォンの話を持ち出し、犯罪に悪用されていると不安をあおります。
さらに、女性のスマホが緊急連絡先に指定されているといいますが――。
「今の携帯はどうしたらいいんですか」(40代女性)
「警察に電話して“無関係証明書”を作ってもらってください」(カスタマーセンターをかたる男)
「カスタマーセンター」からなぜか「警視庁」に

“無関係証明書”という書類を警察に作ってもらうよう指示する男。
その後、どういうわけか、電話口は“カスタマーセンター”から直接、“警察官”を名乗る男に。
「こういう事件が非常に多くて、最近いろんな警察に直通電話ができるように」(通信キャリアのカスタマーセンターをかたる男)
「私は警視庁品川警察署の組織犯罪対策課の課長代理の山口です」
ここから、電話口の男の様子が少しずつ変化します。
「携帯の充電はどのくらいありますか?」(警視庁・品川署の山口をかたる男)
「今使っている携帯ですか?47%です」(40代女性)
「一緒に住んでいる家族は誰?何時ごろにご主人は帰宅する?」(品川署の山口をかたる男)
女性が強い違和感を感じたのは、このやりとりの直後でした。
不自然な日本語に感じた違和感

「これから女性職員が担当しますので」(品川署の山口をかたる男)
「ちょっと忙しいから、私に代わってって言われたので。すみませんね、専用アプリを使用する予定ですけどいいですか?」(女性職員をかたる女)
「ちょっと待ってください。なんか変な感じがするんですけど」(40代女性)
「変な感じとは?」(女性職員をかたる女)
3人目の「警察職員」を名乗る女に代わった途端、不自然なイントネーションの日本語だと感じ、女性はそのまま電話を切りました。
本物の警察官に聞いてもらった

この電話の音声を、愛知県警の本物の警察官に聞いてもらいました。
「この内容から、偽警察詐欺に間違いない」(愛知県警 生活安全総務課 尾崎昭裕 課長補佐)
警察が「詐欺電話」だと断定したポイントは主に2点です。
1つ目は「無関係証明書」。
女性が受けた電話の中で出てきた“無関係証明書”ですが――。
「警察では“無関係証明書”というものはない。そもそも被害届も電話で受けることができないので、実際に警察署に来て被害届を出してもうらうことが必要になります」(尾崎課長補佐)
そして2点目は、「キャリアから警察への転送電話」。
「警察が例えばドコモから転送で受けることも一切ない。警察では全くやっていないこと」(尾崎課長補佐)
愛知県内では、こうした電話などがきっかけの特殊詐欺が9月末までに1400件以上確認され、被害金額は58億円に。
愛知県警生活安全総務課の尾崎課長補佐は、怪しい電話がかかってきた時は、冷静に電話を切ることだ重要だといいます。
「犯人は何度も電話をかけて話がうまくなっていて、矢継ぎ早に質問してくる。焦ってしまうのは分かるが、冷静になって電話を切ってもらう。これが大事です」(尾崎課長補佐)





