愛知県津島市にある「池須温泉」。創業100年を超える老舗の銭湯で代々、家族で経営しています。湯は地下の天然水を使用していて電気風呂や泡が出る風呂が人気です。
利用客:
「湯がたっぷり使えるからうれしい。家だとちょっと遠慮せなかんでしょ」
「疲れがとれるから好き。家の風呂は狭いんだもん」
地元住民の憩いの場です。
池須温泉・松井敦子さん:
「『疲れた~』という顔で暖簾をくぐられた人が『元気になった~』と笑って帰っていくのを見送るのがすごく幸せです」
その銭湯の入り口に、1枚の紙が貼られていました。よく見てみると、「中東情勢の影響で、営業時間を1時間短縮した」と書かれていました。どういうことなのでしょうか? 松井さんが案内してくれたのはボイラー室です。水を温めるのには、重油が必要です。理由を聞きました。
池須温泉・松井敦子さん:
「お湯を沸かす時の重油がない。前回、取引あった業者さんが月に1トンだったのを500キログラムにしてと言われたのでしました。今は違う業者になって月に1トン持ってきてもらえるが、いつまでこれだけもってこれるかわからないと言われているので、みんなで節約しながらやっています」

中東情勢の影響で、重油の調達が困難になっていました。さらに、その価格も高騰しています。2026年1月の重油の価格は1トンで約11万円でした。しかし、アメリカによるイラン攻撃後の4月、同じ1トンの重油代は4万円高い約15万円でした。さらに、銭湯ならではの事情が経営を圧迫しています。
池須温泉・松井敦子さん:
「物価統制令というのがありまして、各都道府県の県知事が銭湯の入浴上限金額を決めます。愛知県は550円と決められました」
日常生活に欠かせない銭湯。その入浴料は、物価統制令により、入浴料金の上限を県が指定しています。値上げをしたくても上限を超えた価格設定ができない、池須温泉では、時短営業や休憩スペースの天井の電気を消すなど節約をしていました。
池須温泉・松井敦子さん:
「このまま営業を続けたらそのうちなくなるのは目に見えているので、これは努力するしかない。いつまでもつかな。これ以上情勢が悪くならないことを祈りながら……」
重油価格は2020年の「約3倍」に、1ヶ月で20万円の負担増

県内の銭湯の現状などについて、愛知県内の銭湯をまとめる愛知県公衆浴場業生活衛生同業組合の山田耕平事務長に話を聞きました。
--県内の他の銭湯では、池須温泉のような時短営業などを強いられているのでしょうか。
愛知県公衆浴場業生活衛生同業組合 山田耕平事務局長:
「一時期供給が滞り、数軒が時間短縮を行っていました。でも、現在は、必要な分だけ重油が購入できるため、今は時短でやっているところは池須温泉さんだけになっています」
--重油はあるとは言え、その価格はずいぶんと上がっているということでした。多くの銭湯でも、同じように重油の価格は、圧力になってしまっているんですか。

愛知県公衆浴場業生活衛生同業組合 山田事務局長:
「本当に心配しているのですが、重油の1リットルあたりの価格は、一番安かった2020年時は49円でした。それが2026年5月1日からは145円になっています」
--1ヶ月でどれくらいの金額が変わるのでしょうか?
愛知県公衆浴場業生活衛生同業組合 山田事務局長:
「今回のイラン情勢の影響により、1ヶ月あたり約20万円の負担増となっています」
--県内のそういった銭湯では、どういう工夫で乗り越えようとされているんですか。
愛知県公衆浴場業生活衛生同業組合 山田事務局長:
「もうほとんど打つ手がありません。節約するにも限度があるため、本来なら値上げをしたい、もうやっていけないという状況です。ただ、公衆浴場の料金は県で一律に決められているため、自主的に値上げをすることができず困っているわけです」
「自主的な値上げは不可能」組合は愛知県へ補助を要望へ

--組合としては県に要望出すなど、何か手立てはあるんですか。
愛知県公衆浴場業生活衛生同業組合 山田事務局長:
「他県で補助いただいている所があるので、愛知県としても現在お願いすべく、準備をしているところです」
--補助の要求は通りそうですか?
愛知県公衆浴場業生活衛生同業組合 山田事務局長:
「県が料金の上限を決めている以上、自分たちの判断では値上げができないという現状を理解してほしいと思います。最高値になったのが5月1日145円なので、影響が出るのはこれからです。本当に時短をせざるを得ない、下手したら休業せざるを得ないという店が出るのではないかと、本当に今心配しているところです」


