【SNSと選挙】フィルターバブルやエコーチェンバー現象に陥らないために「一歩引いた意識」

いまや当たり前となった選挙戦におけるSNSの利用。政治コミュニケーション学の専門家は、SNSを使う際“一歩引いた意識”が重要と指摘します。自覚症状がないうちに陥る“ある現象”にも注意が必要です。
若者が政治に接する機会を作ろうと活動する団体「名古屋若者評議会」。
選挙戦におけるSNS上のフェイクニュースなどが話題になる中、若者にメディアリテラシーを高めてもらうにはどうしたらいいのかを話し合っていました。
「ニュースや情報の危うさというか、ちゃんと自分で調理して落とし込んで初めてニュースを見るということだと多くの人に広まったら変わるのか」(名古屋若者評議会 油口琢磨 理事長)
「私たちが入り口になって(若者の)自分たちの生活に応用できるきっかけになればいい」(名古屋若者評議会 徳毛琴音 さん)
選挙での情報収集の手段として主流になりつつあるSNS。
しかし、SNSで流れた情報が選挙でマイナスになったということも…。
「デマ・誹謗中傷・レッテル貼りの影響も一定程度あったかなと(SNS上の)デマを口コミで聞いたSNSを利用しない人、高齢者に否定する情報を伝える術がなかった」(去年11月の名古屋市長選 大塚耕平さん)
去年11月の名古屋市長選。広沢一郎市長の対抗馬で敗れた、大塚耕平さんは自身が「増税派である」かのような、本来の主張とは異なる情報がSNSで出回っていたといいます。
街の人は、SNSとどう向き合っているのでしょうか。
「SNSはいろんな人が書き込めるので、その人も主観も入ってしまう。信ぴょう性はないが選挙を知るきっかけとしては有効」(10代)
「Xなどは主張が激しい人の意見が目に付くので惑わされる可能性が高い」(20代)
「基本的にはあまり見ないようにしている。デマなのか本当なのか見極めが難しい」(50代)
SNSの情報「ちょっと立ち止まって」

政治コミュニケーション学の専門家は、SNSを使う際“一歩引いた意識”を持つことが重要と指摘します。
「インターネット上の場合にはアルゴリズムで動いている部分があるので、自分がニュースを選んでいる、あるいは心地のいい情報空間を選んでいるつもりであったとしても、実は選ばされている」(名古屋大学大学院 山本竜大 教授)
SNSは、検索履歴などがフィルターとなり、ユーザーの興味・関心が深いと思われるテーマが優先的に表示されます。
自覚症状がないうちに陥っている現象、それを「フィルターバブル現象」といいます。
「(ニュースを)能動的に選んでいるつもりでも受動的に選ばされている部分がある。なので本屋に行ってたまたま見つかった本ではなくて、もうあなたのためにラインナップされています」(山本教授)
まるで「泡」の中にいるように、自分が見たい情報しか見えなくなっているといいます。
さらにもう1つ気を付けなければならないのが「エコーチェンバー現象」。
これは、同じような価値観の情報ばかりに触れるようになった結果、その考えが正しいと信じ込んでしまう現象のことです。
「ひとつの見方しか出てこない場合にはより注意した方がいい。なぜならば世の中にいろんな考え方があるので、認識としてひとつのものに固めてしまうと、返って自分の思考や考え方が、固くなってしまうところがある」(山本教授)
では、幅広い情報の収集や、正しい情報かどうかを見極めるためにどうしたらいいのでしょうか―。
「手軽である情報というのは、本当に大切なのかどうか。そこを見たとき『何でこれが私のところに表示されるのか』ちょっと立ち止まって欲しい。今風に言えば“盛られている”のかということを意識をもって、もともとの情報・本来の情報の意味というものを考えて内容を解釈していくことが大切なんだろうなと思う」(山本教授)