毎月1億円の赤字だった病院の秘策は「外国人患者の受け入れ」 旅行中に透析を受ける外国人を取材 課題は

近年、医療機関で注目が高まっているのが、海外から訪れた外国人の患者の受け入れです。

愛知県が2016年度から実施している県内の病院における外国人患者受け入れ状況の調査では、2016年度から2019年度までは右肩上がりに増えましたが、その後は新型コロナウイルス流行の影響でがくっと減りました。コロナ禍を経て2022年度からは増加に転じ、2025年度にはコロナの流行前の水準に戻りました。

外国人患者を受け入れている医療機関の現状を取材しました。

毎月1億を超える赤字の病院→外国人患者の受け入れ

レオンさん

名古屋市中川区にある透析専門クリニック偕行会セントラルクリニックです。この日、透析を受けるためにやってきたのは中国在住のレオンさんです。中部国際空港を玄関口に富山県や長野県をめぐる旅行に来ていました。

レオンさん:
「中国やタイで透析を受けたことがあります。日本はサービスがよく、医療技術も優れています」

偕行会は約10年前から外国人患者を受け入れる体制を整えてきました。今では10人の通訳スタッフが働く専門部署があり、6カ国語に対応できます。ただ、2018年に系列の病院を取材したときには先行きを不安視していました。

川原理事長:
「潰れますよ。毎月1億を超える赤字ですから」

経営難からの脱却の一手が外国人患者の受け入れでした。

【背景】日本の医療への高い需要とアジア大会の影響

山田哲也理事長

医療法人偕行会の理事長・山田哲也さんに話を聞いていきます。

--数年前は経営難でしたよね。外国人患者を受け入れたことで、この経営難は脱したんでしょうか。

医療法人偕行会 山田哲也理事長:
「まず大前提として日本の医療レベル、サービスのレベルは世界有数です。日本の医療を受けたい、検査や治療したいという需要は非常に高まっています。

あとは2026年の秋に名古屋でアジア大会、アジアパラ大会ありますが、私どもの名古屋共立病院が大会指定病院にもなっております。よってコロナが明けて、かなり外国人の方の交流も増えていて医療需要も高まっているという前提があります。

もう一つは、今、全国の病院の7割が赤字なんです。今、物価高が非常に進行しております。ただ、この経費の増大を患者さんに価格転嫁できない。保険診療は国が価格を全部決めているので我々で値付けができないからなんです。

外国人患者が来日して受診する場合は自由診療となるため、医療機関側で価格を設定できます。これが法人の重要な収益源となっているのは間違いありません」

【課題】言語対応の手間とコストが参入の壁に

外国人患者の受け入れ

--逆を言えばそういう外国人患者の受け入れをしなければ、かなり経営は苦しいということなんでしょうか。

医療法人偕行会 山田理事長:
「最近医療ツーリズムを、われわれはかなり早くから取り組んできたため、どうやったら同じことができるんですかといった問い合わせや講演を頼まれることも多いのですが、皆さんすごく関心はあるんです。

ただ、ハードルが高いんです。一言で言うと手間がかかることになります。言語が違うため、言語対応の通訳を入れると、職員の労力は通常の1.5倍から2倍ほどかかります。これは厚生労働省や自治体の調査でも明らかになっています。

費用も通訳の費用が、2倍から3倍ぐらいかかると言われています。よって実際やりたいんだけど、なかなかやれないという病院が多いのが現状だと思います」

【対策】トラブルや未収金を防ぐ独自のノウハウ

外国人患者と職員

--トラブルなどはないんでしょうか。

医療法人偕行会 山田理事長:
「文化や宗教、習慣が違います。よって、そういった違いから生じるトラブルは、最初の頃ありました。ただ、われわれは外国人職員を常勤職員として揃えているため、その国の文化、言語だけでなく文化が分かっている職員が対応します。そこがかなり強みになります。

あと、これは厚労省も出していますが、未収金の問題があります。つまり医療を受けたけど費用を払わずに国に帰ってしまうことです。受診前に、どのような治療を行い、どの程度の費用が発生するかを明確に提示しています。

これは医療本体の値段だけでなく通訳とかいろんな値段を含めてこれだけですよ、このようなことですよ、というのを最初にきちんとすり合わせをしてやれば、ゼロとまではいきませんが、かなり防げます。そういうノウハウの蓄積というのが、われわれの強みだと思います」

偕行会セントラルクリニック

--外国人患者受け入れに伴うトラブル防止やノウハウについての話は他の病院からの問い合わせなどに含まれているんですか。

医療法人偕行会 山田理事長:
「この辺についてはかなり問い合わせを受けることが多いです。ただこれについては我々も試行錯誤しています。6ヶ国語対応できる職員を揃えるのも大変です。常勤職員、外注ではありませんので。

ここまで力を入れてやれるかというと多くの医療機関が参入をためらう要因となっています。そういう意味では我々はパイオニアとしてやってきましたので、その辺についてのノウハウは聞かれたらお教えはするのですが、実際にそこに取り組むというところまでは行けてないのが現状だと思います。

実際コロナが明けて、愛知県で外国人患者を受け入れしているところはありますが数としては減ってきています。減ってきている限られた医療機関が多くの方が外国人患者さんを受け入れているというのが現状だと思います」

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