猛暑避け梅雨の時期に…夏祭りを『6月』に前倒しした自治体の思惑 8月の盆踊りや花火は「熱中症対策にも限界」

　2025年の夏も猛暑が予想される中、東海地方で夏祭りの開催時期を前倒ししたり、遅らせる動きが広がっています。江戸時代から続く伝統の祭りも、命を守るために「苦渋の決断」をしました。

■6月に“盆踊り”…夏の風物詩を前倒し

　6月13日、岐阜県の可児市役所の駐車場では、14日から始まる夏祭りの準備が行われていました。 毎年8月に開かれている「可児夏まつり」は、多くの屋台が並び、みんなで踊る盆踊りや、花火大会も行われる夏の風物詩ですが、なぜ6月に早めたのでしょうか。

可児市夏まつり2025の湯浅崇史実行委員長： 「猛暑を避けて8月から6月にさせていただきました。熱中症対策にももはや限界があるのかなと。しっかりミストファンや扇風機を回してやっているんですけども、結局去年は体調を崩された方がみえまして、安全に運営できないんじゃないかと」 災害級の暑さとなった2024年8月に行われた夏祭りでは、運営スタッフが熱中症になったことから、開催時期の前倒しが決まりました。 6月に早めたことで、夏祭りが集中する8月に比べて警備員や備品レンタルの需要が少なく、コストが抑えられるメリットもあります。

一方で、心配なのが雨です。14日は雨が降る予報で、実行委員長の湯浅さんには、祭りの準備中も、次々と確認の連絡が入ります。 雨に備え、2025年は前年の2倍のテントを用意しました。すでに蒸し暑い梅雨の時期の熱中症対策にも役立ちます。

湯浅実行委員長： 「可児の祭りはイベントもそうなんですけども、踊りも本当にみんなから愛される夏祭りですので。『雨が降っても出るよ』ってみんな言ってくれているんですよね。そのパワーを周りの人たちに届けたい」

■熱中症が心配…江戸時代から続く祭りも「苦渋の決断」

　毎年のように訪れる災害級の暑さは、江戸時代から続く伝統の祭りの姿も変えようとしています。 倉庫の中から現れた金色に輝く船は、三重県四日市市の「鯨船まつり」に登場する山車です。

およそ250年の歴史を持つ鳥出神社の神事で、昔のクジラ漁の様子を陸上で再現し、重さ2トンの山車がクジラを追い詰めていきます。

2016年には「山・鉾・屋台行事」の1つとして、ユネスコ無形文化遺産にも登録されましたが、2025年から開催時期を見直しました。 富田鯨船保存会連合会の加藤正彦会長： 「実は去年までこのお祭りは8月14日・15日ということで、非常に暑い中、炎天下の中でやる昼間の祭りでございます。ただ今年から熱中症のことがございまして、9月後半にやることになりました」 これまでは8月14日と15日の開催でしたが、熱中症になる人が出るなどしたため、2025年は1カ月以上遅い、9月27日と28日に変更しました。 祭りには高齢者や子供も多く参加します。伝統か参加者の安全か、命を守るための“苦渋の決断”でした。

加藤会長： 「夏の祭りですので8月14日・15日にやりたいです。ただ、命がかかっているというところがあります。断腸の思いで日を変えたということになります。秋に移ったんですけど“アツい”お祭りなので、ぜひ楽しくケガのないようみんなで盛り上げたいと思います」

■暑すぎて「安全確保難しい」…夏祭りの中止も

　開催時期をずらすだけでなく、中止する決断をした祭りもあります。

愛知県幸田町の「幸田彦左まつり」は、町ゆかりの武将にちなんで、街中を仮装して練り歩く祭りです。毎年7月に行われていましたが、猛暑の影響で、参加者や見に訪れた人の安全確保が難しいとして、2025年は中止となりました。2026年以降は、時期をずらして開催することも検討しているということです。

6月に開催を前倒しする祭りもありますが、6月でも十分暑いです。17日から19日にかけて、名古屋と岐阜の予想最高気温は35℃を超え、猛暑日となる見込みです。梅雨の時期で湿度も高めですので、熱中症に十分ご注意ください。