「なめてんのかよ、コラァ」横行するカスハラ 従業員を守る企業の取り組み AIで暴言を検知も

行き過ぎたクレームや顧客からの暴言・不当な要求などの「カスタマーハラスメント」いわゆる「カスハラ」が今、社会問題となっています。2025年6月に行われた法改正によりすべての企業にカスハラ対策が義務づけられることになりました。被害を受けた企業はどのような対策をしているのか取材しました。
「口げんかする? 絶対勝てないよ、お前じゃ!」

東京・江東区にある弁当店「キッチンDIVE 亀戸店」では、2人組の客が、店のスタッフと言い合いになりました。
客:
「どっちが悪いの?マスクしてないで入った人間がいけないの?」
店員:
「モラルの問題です」
客:
「モラルは誰が決めるの? 総理大臣? 口げんかする? 絶対勝てないよ、お前じゃ!」
そして客は従業員に向かって金銭を投げつけ、「いいよ、呼べよ警察」と怒鳴ります。

客が企業や店などに対して理不尽なクレーム・言動をする「カスタマーハラスメント」。いわゆるカスハラです。その卑劣な行為は、栃木県那須塩原市の老舗温泉旅館「湯守田中屋」でも発生しました。
「○○銀行に言って融資止めちまうぞ」と恫喝

午後2時半、チェックインまであと30分ありますが、客が「チェックインをさせろ」と要求。さらに、「どうやって責任とるつもりだ!」「○○銀行に言って融資止めちまうぞ」などと、客は50分以上怒鳴り声をあげました。
客:
「ここは接客業としてはデタラメだよ。ヤクザもんだって泊まらないよ」
最終的には、旅館従業員が土下座をして謝罪をすることとなりました。

湯守田中屋 専務取締役 田中佑治さん :
「どうにか、お泊りいただこうと、謝罪と説得をしていたんですけど、玄関先でずっと激昂していました。3時半を過ぎて私が土下座をして許しを得ました。
それまでは『どう落とし前をつけるんだ』という言動を繰り返していました」
カスハラを受けた場合は宿泊契約を解除

この旅館では、カスハラ対策を実施。カスハラを受けた場合、宿泊契約の解除。さらに、警察に通報することなどを決めました。こうした対策をホームページで表明して以降、カスハラ被害は受けていないということです。
湯守田中屋 専務取締役 田中さん:
「警察からは、『110番通報してください』と指導を受けました。(従業員)自分自身が恐怖を抱いた時点で110番通報してください、というような指導を受けました」
「ころすぞゴラァ」40分にもわたる暴言交じりのクレーム

東京にあるクラウド会計ソフトを扱う会社フリーです。この会社ではコールセンターの担当者が、カスハラ被害を受けました。
客:
「ころすぞゴラァ。録画してるんだったら、警察にでも行って○○××! なめてんのかよ、コラァ!」
客が暴言交じりのクレームを約40分にわたって浴びせました。
フリー 法務部リスク管理課 平石 平さん:
「怒鳴るような感じで40分くらい対応していて。対応していた人が傷ついてしまいました」
社内にカスハラ専門チームを立ち上げ、被害者のケアにも対応

カスハラをきっかけに、フリーでは、2023年にカスハラ対応方針を社外に公開しました。顧客の行為がカスハラに当たると判断した場合は「サービスやサポートの提供を、お断りさせていただくことがある」と明示したのです。
さらに、社内にカスハラ専門チームを立ち上げ、カスハラを受けた被害者のケアも対応をしていくことにしました。

カスハラへの対策を講じたことで、従業員の不安を取り除いたということです。
フリー 法務部リスク管理課 平石さん:
「気軽に相談できるような体制を作ったっていうところで、いわゆるカスハラに当たるようなものっていうのが来ても、その中で吸収して解決できるだろうというような体制を整えてきました」
カスハラをAIで解決するサービス

カスタマーセンターに寄せられたカスハラをAIで解決しようというサービスも誕生しました。客が電話口で暴言をはくと、音声をリアルタイムで書き取り、あらかじめ登録したキーワードを検知するとパソコンに通知するシステムです。

RevComm 中村有輝士さん:
「カスハラにあたるような言葉『ふざけるな』とか『責任者を出せ』とかの言葉が出てきたら通知が飛んで、管理者がすぐにそれがわかるようになっています」

開発したのは、東京のシステム会社「RevComm」です。最近はカスハラ対策での導入を検討する企業が増え、月に5件から10件の問い合わせが寄せられています。
RevComm 中村さん:
「瞬時に文字起こしが最初から見えるような感じなので、どういう会話になっているのかが見えて、すぐに対応を代わってあげられるようになっています」
カスハラからどのように従業員を守るのか、今、企業の対応が求められています。





