石破総理辞任でどうなるコメ増産 トップ交代で今後コメの価格と生産量はどうなるか専門家に聞いてみた

名古屋・大須のスーパー「生鮮食品館 サノヤ」では、9月10日時点で5キログラムあたり4500円ほどでした。全国のスーパーで販売されたコメの8月25日~31日までの1週間の平均価格は5キロ3891円。ピーク時と比べると価格は落ち着きましたが、依然コメの価格は高止まりしています。
10月4日には自民党の総裁選が行われます。日本のトップが変わることで、コメの増産方針に影響があるのか、専門家に聞きました。

これまでのコメの価格高騰の理由、農水省の判断ミスが1つ挙げられています。農水省はこれまでコメの需要と、収穫見通しを把握し生産量のバランスをとっていました。そのうえで「コメの生産量は足りている」としていたのですが、8月に、これまでの見通しが誤っていて、需要に対し生産量が足りていない「コメ不足」の状態であることを認め、それが価格の高騰を招いた要因の1つだと自民党部会で謝りました。

石破茂総理はコメ不足を解消しようと、8月5日の関係閣僚会議で2027年度以降のコメの増産に舵を切ると表明。しかし総裁選が行われることにより、現場は“宙ぶらりん”となっています。
コメを増産したくても踏み切れない現状

コメ政策に詳しい宇都宮大学農学部の松平尚也助教に話を聞きました。
増産に舵を切ると宣言した石破総理自身が「新しい総裁、総理にその先を託したい」と9月7日に退陣を表明しました。松平助教によりますと、舵を切った本人がトップを退いたため、コメ増産に向けての政府の方針、制度や保証といった具体的な内容が現時点で見えておらず最悪の場合、次の政権では「コメ増産」のはしごを外される可能性もゼロではない状況。農家の方たちにとっては、増産をしたくてもなかなか踏み切れないというのです。
秋から冬までには2年後に植える「種もみ」を業者に注文

しかもいまの時期がさらに農家の葛藤を生むといいます。というのも、ちょうどいまからは2年後、2027年産のコメを作るための準備をする大切な時期。大体秋から遅くとも冬には2年後に植える稲のタネ「種もみ」を業者に注文しなくてはいけません。
注文を受けた種もみを作る業者は、2026年の間に種もみを育て、コメ農家に出荷するという流れです。いまこの時期に政府から増産に向けての具体的な内容が見えてこないと、2027年に新米として出荷するコメの量を決めづらくなります。
国内でコメの値崩れが起きてしまう可能性も

総裁選の投開票日が10月4日。仮に具体的な内容が出てくる前に現場判断で増産に踏み切って万が一余剰が出た場合、国内でコメの値崩れが起きてしまう可能性もあります。そうなると農家の方は死活問題。本当に増産して良いのか、農家としても判断しにくい状況となっています。
コメの集荷競争が起きている
松平助教は「年末辺りから価格が下がる可能性もあるが、現状不透明な状況」と話します。農水省の6月末の試算では、2025年のコメの生産量は2024年よりも56万トン増えて、735万トンになる見通しです。
一方で、いまコメの集荷競争が起きているんです。2024年にコメ不足だったことを受けて、業者たちが「確保できる内に買っておこう」と買い付けているので、引き合いが強くなって価格も高水準に。今後、新米の収穫も本格化して農水省の試算通り収穫量が増えれば年末に向けて価格も下がります。しかし、まだこの夏の猛暑による渇水の影響がどれだけ出てくるかわからず、増産に至るかわからない状況なんです。
どうなる?日本のコメの未来

今後の価格も不透明な現状に、松平助教は危機感を示しています。
このままだと、国産米の買い控えが増え価格の安い輸入米に消費がシフトしてしまう可能性が。そうなると、ますます国産米の消費量が減り、コメ農家の減少につながってしまうのです。

「消費者が手に取れる価格」かつ「コメ農家がコメを作り続けられる適正価格」、5キロ3000円から3500円あたりになるような政策を打ち出していかなければ、日本のコメの未来は危ないと話します。
コメの未来の左右するターニングポイントであるいま、次の政権、総理にはしっかりと舵取りをお願いしたいと思います。