
気象予報士試験“名古屋飛ばし”のワケは「管区気象台」と「地方気象台」の違い 名古屋は西日本か東日本か

8月24日(日)は気象予報士試験の日でした。最近の試験では毎回、全国で4000人前後の方が受験します。合格発表は10月上旬です。この気象予報士試験、受験生はよく知っている方もいるのですが、実は試験会場が「名古屋飛ばし」なのです。有名アーティストのライブやビッグイベントが「大都市・名古屋」で開催されない「名古屋飛ばし」は、名古屋人のコンプレックス? かつては海外アーティストのマイケル・ジャクソンやマドンナの「名古屋飛ばし」が話題になりました。
気象予報士試験は“名古屋飛ばし”なのか

気象予報士試験の会場は、北から北海道、宮城県、東京都、大阪府、福岡県、沖縄県の全国6カ所です。
愛知県の受験生は、近場だと大阪や東京まで行かねばなりません。「試験はどこで受けますか?」という会話は、愛知県近辺の受験生同士でよく聞かれます。気象予報士試験の会場はなぜ、名古屋にないのでしょうか。
ヒントは気象庁の組織です。
気象庁は気象や地震に関する情報を国に提供する組織です。地域ごとに「管区気象台」が置かれ、さらに細かい地域ごとに「地方気象台」があります。
地域ごとに置かれている「管区気象台」は、札幌、仙台、東京、大阪、福岡、沖縄の6カ所です。
名古屋にある「名古屋地方気象台」は「管区気象台」ではありません。よく「東京、大阪、名古屋の3大都市」と言いますが、気象台の観点からみると「名古屋地方気象台」は、全国6つの「管区気象台」のもとにある「地方気象台」という位置づけになります。
気象予報士試験の6つの会場は、「管区気象台」がある6つの都市と一致しています。「気象予報士試験の会場は管区気象台がある都市で行われている。だから『名古屋飛ばし』なのではないか」と推測されます。
気象庁から気象予報士試験の業務を委託されている気象業務支援センターにこの件を問い合わせてみると「試験会場は全国6カ所の管区気象台で実施するという取り決めになっています」とのこと。推測は当たっていました。
名古屋は「西日本」か?「東日本」か?

名古屋は「西日本」か「東日本」か…皆さんはこう聞かれるとどう答えますか?
「東京よりも大阪に近いから西日本」「名古屋が西日本ってピンとこない」「普段から東海地方と言っているから考えたことはない」それぞれの感覚があると思います。
気象庁が定める「東日本」「西日本」は以下のようになります。
静岡、愛知、岐阜、三重の東海地方は「東日本」になるのです。東海地方の4県の地方気象台は、「東京管区気象台」のもとに位置付けられ「東日本」に区分されています。
関西の文化が色濃い地域もある三重県も「東日本」ですから、違和感を持つ方も多いかもしれません。
実は「東日本」「西日本」の境界は見方によって異なります。たとえば地質学的にみると「糸魚川静岡構造線」で東西が分かれます。ほかにも方言や食文化、電源周波数、高校野球などそれぞれで東西の境界は違っています。この違いが皆さんの感覚の違いにつながっているのだと思います。
私は受験を始めた頃、名古屋が気象予報士の試験会場でないことに衝撃を受けました。しかしそれは、受験生であるにもかかわらず、気象庁の組織や東日本・西日本の区分を理解しておらず恥ずかしいことでした。
季節予報や台風情報などでは「東日本」「西日本」という言葉がよく使われます。自分が住んでいる地域がどこなのか理解しておくことは、いざ災害がくるとなった際にとても重要なことだと考えます。
(メ~テレ 報道センター災害担当デスク・気象予報士 柴田正登志)