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名古屋「ヨコイ」のあんかけスパ "もちもち麺"誕生の裏側

名古屋のソウルフード「あんかけスパゲッティ」。濃厚ソースがよく絡む、もちもちの太麺が魅力だが、この食感はどのようにして生まれたのか。開発秘話に迫る。


【動画】名古屋「ヨコイ」のあんかけスパ "もちもち麺"誕生の裏側

2ミリ幅のパスタは規格外? 今までにない麺で勝負!


  • 「スパゲッティ・ハウス ヨコイ」の創業者・横井博


「あんかけスパ」の元祖といわれる「スパゲッティ・ハウス ヨコイ」(名古屋市)の創業者・横井博。戦後間もない1950年代、横井は「名古屋国際ホテル」の洋食部門でシェフを務め、「独立してイタリア料理の店を開きたい」という大きな夢を抱いていた。
しかし、当時の日本ではイタリア料理が浸透しているはずもなく、横井は「日本人になじみのある麺類で勝負しよう」と、オリジナルスパゲッティの開発に乗り出す。



  • 名古屋で受けのいい味の濃いソースを開発


まず取り掛かったのはソース。ミートソースに自身が得意とするデミグラスソースをかけ合わせ、名古屋で受けのいい味の濃いソースを開発した。
続いて、オリジナルのパスタ。ソースがよく絡み、なおかつ濃い味に負けないよう、一般的なものよりも太い2ミリ幅のパスタを使おうと考えた。
「ヨコイ」三代目・横井慎也副社長は、「孫から見てもこだわりの強い人間だった」と話す。


横井は、早速、製麺会社に太いパスタの製造を依頼。しかし、2ミリ幅のパスタは規格外だったため、まともに取り合ってくれる会社は見つからなかった。



  • 一般的なものよりも太いパスタの製造を依頼


そんな中、横井の依頼を唯一受け入れたのが、機械によるパスタ製造を日本で最初に行ったメーカー、現在の「日本製麻」だった。大手の台頭により新たなチャレンジを模索していた「日本製麻」は、横井の提案を「面白い!」と承諾。太いパスタ用のダイスを作り、通常の業務を終えた夜にパスタの試作を始める。



  • 足りないのは“もちもちの食感”


試食の日。工場長らが見守る中、横井は名古屋から持ち込んだオリジナルソースを絡めてパスタを口に運ぶが、出てきた感想は「違う」……。このソースに太麺が合うのは間違いないが、足りないのは“食感”だった。


糸口をつかめないまま1年、転機は突然やって来た


  • 納得がいくまで試作を繰り返した横井


通常のパスタにはない“もちもち感”をどうしたら出せるのか。小麦粉と水の分量が違うのか、あるいは乾燥させる時間が関係しているのかもしれない……。
失敗に次ぐ失敗。横井は麺の試作品ができる度に、名古屋から兵庫県にある工場に通い続けたが、試食をした彼の口から出てくるのは、「これじゃない」という感想ばかり。“もちもち食感”の糸口がつかめないまま、1年が過ぎようとしていた。



  • うどんからヒントを得た横井


しかし、奇跡は突然訪れる。「日本製麻」の開発担当者と食事をしていた際、彼女がうどんを持ち上げ、「そういえば、うどんも麺が太いですよね。このもっちりした麺がおいしくて…」とつぶやいた瞬間、横井の頭に閃光が走った。「もちもち感を出すには、強力粉です。うどんと同じ強力粉を使えばいい!」。



  • 開発から1年…オリジナルスパゲッティが完成


うどんに使われる強力粉には、もちもち食感を与えるグルテンが豊富に含まれている。横井はパスタに強力粉を加えることで、理想の食感に近づくと考えたのだ。
開発スタートから1年…強力粉を加えた麺をソースと一緒に口に運んだ横井は、ようやく「うまい!」とつぶやいた。オリジナルスパゲッティが完成した瞬間だった。



  • 今では各チェーン店で使われるように


1963年、横井は念願のお店「スパゲチハウス ヨコイ」をオープン。現在は「ヨコイ 住吉本店」として、多くの人に愛されて続けている。


横井と「日本製麻」が生み出したもちもちの太麺は、今では各チェーン店で使われるようになった。当初パスタの太さは2ミリだったが、現在は2.2ミリに。聞けば、パスタを押し出す回数は何千回、何万回にも及ぶため、ダイスが摩耗し、より太いパスタになってしまったという。しかしその結果、より太い方がソースとの絡みがいいということが分かり、今のスタンダードになったのだ。


番組概要

番組名:工場へ行こう III AMAZING FACTORY
出演者:(ナレーション) 平泉 成、城ヶ崎祐子
公式ホームページ:https://tv-aichi.co.jp/koujou3/
放送日時:毎月第1土曜午後