一生に一度だけしか担げない!?重さ1tのみこしと龍が暴れまくる!岐阜県・下呂市の「龍神火まつり」『チャント!』
口から煙や火を噴き、激しくうねる龍が大暴れ!その中心には、丸い形をした謎のみこし!?岐阜県・下呂市で、毎年8月1日に開催される「龍神火まつり」。一生に一度しか担ぐことができない、特別なみこしにアツい思いを懸ける人たちを密着しました。
「お椀を返さなかったこと」がきっかけ?下呂の伝説からできた祭り
今年で55回目を迎える「龍神火まつり」は、下呂市内5つの地区が所有する5頭の龍が登場。温泉街の中心部・白鷺橋が会場です。祭りの本番の夜までは、龍たちが各地区を練り歩きます。下呂で生まれ育った男子にとって、「『龍神火まつり』で龍を担がずして下呂男子と言うべからず!」なんだとか。
しかし、この祭りにはもうひとつの主役が。それは、重さ1tの巨大な椀みこしです。なぜお椀なのか尋ねました。
(龍神火まつり実行委員長・西博志さん)
「下呂市には昔から、お椀を龍が追いかけていく伝説がある。その伝説から『龍神火まつり」ができた」
祭りのきっかけは、下呂市に伝わる伝説から。「龍神が住むと言い伝えられていた淵で貧しい村人が、冠婚葬祭のために『お椀を貸して』とお願いをしたところ、翌朝その願いは叶い、淵にはお椀が。しかしある日、お椀を返さずにいると龍神が『お椀を返せ』と、村を暴れ回った。そんな龍の怒りを鎮めるため、お椀を奉納する祭りをした」という伝説があります。
40~41歳の男女だけ!一生に一度しか担げない「椀みこし」
椀みこしは、厄除け祈願の意味があり、40~41歳の男女のみ担ぐことができます。この日のために、都会から故郷に帰省する人も。今年は、下呂市で生まれ育った厄年の70人が集結。その仲間をまとめるのが、高殿誠さんです。
高殿さんは、子どもの頃から「龍神火まつり」が大好きで、20年間も龍を担いできた筋金入り。仲間からの信頼も厚い下呂男子です。
(椀みこしのリーダー・高殿誠さん)
「椀みこし楽しかったなってみんなで言えるような、この日を死ぬまで忘れない最高の思い出にしたい」
高殿さんはそんな気持ちを胸に、「より多くの仲間に集まってほしい」と準備や練習の動画をSNSで発信してきました。その甲斐もあって、70人の仲間が集まったのです。
ぶっつけ本番!当日に祭りまでのわずかな時間で猛特訓
しかし、本番に向けた課題もありました。
(椀みこしのリーダー・高殿誠さん)
「ぶっつけ本番。きょう初めて椀みこしを見た人もいる」
地元の仲間だけで1tのみこしを担ぐには人手が足りず、祭り当日まで練習ができないため、ぶっつけ本番なんだとか。また、本番へ向けた課題も2つあり、1つ目は“重さ”。45人で1tのみこしを担ぐため、一人22kg以上の負荷がかかります。また“総がらみ”という最後の演目では、太鼓のテンポに合わせて、15分間みこしを上げ下げし続けなければなりません。
(椀みこしのリーダー・高殿誠さん)
「椀みこしが会場の中を巡る。その時に回転する時や、歩き出すタイミングを太鼓の音と合わせて動きたい」
2つ目の課題は、一番の見せ場である“単独演舞”の動き。方向転換の際、みこしを軸として90°旋回した後、太鼓の音に合わせて歩き出さなければならなりません。担ぎ手たちは、本番までのわずかな時間に、指導を受けながら特訓を重ねます。
祭りがスタート!1tの椀みこしを担いで演舞に臨む担ぎ手たち
時刻は午後6時。白鷺橋付近には多くの観客が集まり、各地区に散らばっていた5頭の龍も下呂大橋を渡って、会場に向かってきます。
午後7時、「龍神火まつり」の本番スタート。まずは、お椀を探し求めてやってくる龍に対して、「椀みこし」が待ち構えます。
5頭の龍が、お椀を求めてとぐろを巻き、暴れ回ります。その後も、各地区の龍による大迫力の演舞が続き、いよいよ椀みこしの単独演出がスタート。
わずかな練習時間だったにも関わらず、みこしを上下させながら息の合った動きを見せます。一方、担ぎ手たちの疲労はたまっていきます。
「後輩へ伝えたい」70人の同級生で作るかけがえのない思い出
クライマックスの“総がらみ”は、15分間5頭の龍が競って、お椀の周りを大暴れ。椀みこしも上下に動かし続けます。徐々に速くなる太鼓のテンポに合わせて、動きも激化。最後の力を振り絞り、45人でみこしを担ぎきりました。
下呂で生まれ育った仲間が集まり、ぶっつけ本番で挑んだ椀みこし。今回の「ベストオブOMATSURIちゃん」は、リーダーを務めた高殿さんに決定。
(椀みこしのリーダー・高殿誠さん)
「最高しかない。厄年になって再会できて、ひとつのことができるってない。この楽しさを後輩たちに伝えていきたい」
集まった70人の仲間の熱い思いが、ひとつになりました。
CBCテレビ「チャント!」8月14日放送より