小学生が掘った隧道の通学路!? 「これは廃道の極地」 北海道にある廃道の歴史とは『道との遭遇』
ミキの昴生と亜生がMCを務める、全国の道に特化したバラエティ番組『道との遭遇』。今回は、全国800か所以上の道を巡ってきた道マニア歴19年の石井あつこさんが、北海道にある“廃道”を巡ります。※廃道は危険ですので、むやみに立ち入らないでください。
小学校の通学路!?海沿いにある素掘りの隧道
今回は特別に、石井さんが言う「ずっと行きたかった念願の廃道」の探索に密着させてもらうことに。目的の廃道がある、北海道の釧路へ向かいます。
(道マニア・石井あつこさん)
「一年前に見た新聞の写真がきっかけ。写真を引き伸ばすと、断崖に隧道がある。この隧道を掘ったのは小学生らしい」
石井さんは釧路で撮られたという1枚の写真が気になり、かねてから行ってみたいと思っていたそう。かつてこの道は小学生の通学路として使われ、新聞には「小学生が掘った」と書かれていたとのこと。今も残るその隧道の真相を突き止めるべく、現地へ。
根室市と釧路市を結ぶ道道142号の南にあるアチョロベツの集落から海に沿って、東の昆布森(こんぶもり)を目指します。
(道マニア・石井あつこさん)
「新聞に『昆布森の小学校への通学路だった』と書かれていた。山越えは遠回りなので、海沿いを歩いて学校に行っていたと思う。隧道を掘るなら、昔の地図にある崖記号のところを掘るのでは」
狙いを定めた海沿いの崖へ行ってみると、新聞記事で見た写真と似ている断崖に隧道らしき穴を発見!
(道マニア・石井あつこさん)
「おそらく、この穴が写真の隧道」
「割岩(われいわ)」と呼ばれる岸壁には、人力で掘られた跡が残る穴があります。入口付近は波の侵食で削られ、隧道までの高さが3mほどになっていましたが、上っていざ隧道の中へ。
今も貫通しており、「掘ったままの姿が風化し、自然の変化に任せている状態」と石井さん。隧道を抜けると海や崖、砂浜が広がり、高低差のある砂浜と隧道を行き来できるようロープが設置されています。
(道マニア・石井あつこさん)
「この砂浜が廃道の続き。ものすごい景色。独特の風化が生み出した美しさ。まさに、道の極地。日本のカッパドキアですよ」
現実離れしたような通学路に、石井さんは興奮がおさまりません。海沿いにしばらく歩くと、昆布森の産地・昆布森の漁港に到着します。
海岸での事故がきっかけで小学生が隧道を開削
アチョロベツの集落で聞き込みしたところ、隧道は約10年前まで昆布を運ぶために使われていたとのこと。ロープはその時のものだそうですが、「隧道は子どもたちが中心となって掘った」と地元の方は言います。
しかし、昆布森小学校や釧路市中央図書館に、当時を記録した資料は見つからず。石井さんはロケ後も独自で調査を続け、ついに当時の資料を国立国会図書館で発見!雑誌『中学一年コース』に、詳しい情報が書かれていました。
記事によると昭和29年2月、昆布森小学校へ通う3年生の子どもが波にさらわれかける事故が発生。この事故を聞き、子どもたちはショックを受けます。そこで、「僕らの手で、安全な通学路をつくろう。みんなで力を合わせれば、道はきっとできるに違いない」と子どもたちが提案。
安全な通学路を造ることを強く決意した子どもたちは、ツルハシやハンマーを使って開削。大人たちの手を借りながら1年半工事を続け、昭和30年10月に40mの隧道が開通し、念願だった安全な通学路が完成しました。
隧道ができた直後は、子どもたちが何度も往来するほど喜び、郵便配達や買い物も気軽にできるようになりました。
(道マニア・石井あつこさん)
「住んでいる人たちの発展を助け、笑顔を作っていった道の記録を記してくれた。『中学一年コース』を読んで非常に満足し、割岩の廃隧道の探索を終えることができた」
10月8日(火)午後11時56分放送 CBCテレビ「道との遭遇」より