30万円で旧中山道120kmを1週間かけ歩くツアーも 中部地方でインバウンド取り込み狙いあの手この手

名古屋を中心とした中部地方は、これまでインバウンド訪日外国人客が少ないといわれてきましたが、最近は増加傾向にあります。観光庁の調査によると、愛知県を2023年の夏に観光・レジャー目的で訪れた外国人数は25万人あまりだったのに対し、2024年の同じ時期は1.85倍の47万人以上に伸びています。伸び率では愛知が、東京・大阪を上回っています。
中部地方のインバウンド新戦略について、中日BIZナビ編集部の織田龍穂記者に解説してもらいました。

東京・大阪を超える伸び率となった背景は、名古屋を中心とした中部地方はこれまで経由地の位置づけでしたが、ジブリパークの開業などもあって訪れてみたい「目的地」へと変化している点が挙げられます。
中部地方のインバウンド新戦略が「昔の道を歩く」「その土地のものを朝食で」。それぞれ解説していきます。
1. 昔の道を歩く

1つ目は、岐阜県御嵩町の御嶽宿を起点に旧中山道を歩くツアーです。長野県塩尻市の奈良井宿までの120キロメートルを1週間かけて歩きます。費用は約30万円から。人気の宿場町で軽い食事などを楽しむこともありますが、歩くことが基本の旅です。

旧中山道の宿場町なので当時の面影を残す建物が残っていて、旅の始まりから日本の歴史ある宿場町や街道を体験することができるんです。名古屋からのアクセスの良さから、順調に参加者数が増えています。

訪日外国人からは「サムライと同じ道を歩いている」と歴史に思いをはせて喜ぶ声や「緑が濃く美しい」など、周囲の自然とともにツアーを楽しむ声を多く聞きました。
ただ、インバウンドの姿が地元で増えても何もしなければ消費は増えません。そのためツアーの起点となる御嵩駅前に宿泊施設を整備することや、名物の巻き寿司づくりの体験メニューをツアーに組み込んでもらうことを検討しているそうです。
2. その土地のものを朝食で

2つ目は名古屋栄にあるホテル「TIAD」の取り組みです。2023年7月に開業した富裕層向けのホテルで、宿泊料金は1泊5万円台から、60万円以上する客室もあります。現在、宿泊者の6割はインバウンドです。
連泊する客が多いことを踏まえ、同ホテルは朝食のメニューに和食を多く加えるように変更したといいます。

TIAD総支配人室 ディレクター 田口千浪さん:
「例えば1泊の方でしたら、この(従来の)メニューでも大丈夫かもしれません。しかし2泊以上連泊される方は『翌日は違うメニューを召し上がりたい』。日本にリピーターでいらっしゃる海外ゲストの方も非常に多くなりましたので、その土地ならではのものを食べたいという要望がございます」

宿泊客へのアンケートでは、洋食メニューのみのときよりも料理の評価は高いそうです。ちなみに取材した日は「ウナギのまぶしごはん」や今の冬の季節に合わせた「おでん」が提供されました。
TIADでは春に「お花見宿泊プラン」始める予定です。名古屋城への送迎や特製弁当が付いたプランを考えていると話していました。

観光戦略に詳しい和歌山大学の大澤健教授に話を聞きました。大澤教授は「最近はインバウンドの欲求が多様化・高度化している」と話します。
「名古屋、中部地方は、味噌からロケットまでつくるものづくりの拠点であること、欧米人が好む武将など魅力があるものが多く、さまざまな需要に応えられる場所です」
大澤教授はさらに「インバウンドに対して、観光を通じてまちやものづくりの魅力を発信することが大切」とも話していました。
(2025年1月20日放送 中日BIZナビ共同企画「東海ビジネススコープ」より)