
“グルクン”などこれまであまり見かけなかった魚も増加 三重の海に広がるサンゴ

海で起きている暑さによる異変。三重県の海の中にはサンゴが広がり、釣れるのは温暖な地域でよく見かける魚たち。沖縄の海のようになっている現状を調べました。
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とにかく暑い、ことしの夏。今月5日には群馬県伊勢崎市で、国内最高気温を更新する41.8℃を観測しました。
今月1日には三重県桑名市でも40.4℃を観測。先月7月の平均気温は統計を開始した1898年以降で最高に。過去最高を更新するのは、ことしで3年連続です。
この数年の記録的な暑さで、海でも異変が起きていました。岩場に点在する様々な形のサンゴ。周りにはディズニー映画でもおなじみ、濃い青色が特徴的なナンヨウハギなどカラフルな魚の姿が。
ここは沖縄など南の海ではなく、三重県志摩市の和具漁港周辺の海です。
なぜ?北上するサンゴ
伊勢エビなど三重県でも指折りの水揚げ量を誇る豊かな漁場ですが、この数年、海の中でサンゴが増えているのです。
(漁師 小川吉高さん)
「どこもここも広がりをみせている。カビみたいなもんや、サンゴなんか」
この地域で40年以上にわたって伊勢エビ漁を行ってきた小川吉高さんも、サンゴが広がるスピードに驚きを隠せません。
サンゴ礁や気候変動などを研究している名古屋大学大学院の山崎敦子講師は、温暖化によりサンゴが北上していると指摘します。
(名古屋大学大学院 環境学研究科 山崎敦子 講師)
「温暖化によってサンゴが北上していって種数も増えてきている。黒潮によって運ばれたサンゴの卵がついて成長し、冬を越せるようになった状況の中で増えてきたと思う」
海水温が30℃超の場所も…
海水温の上昇は気温だけでなく、本州の南側を流れる暖かい海流「黒潮」が紀伊半島沖で南に大きく蛇行する「黒潮大蛇行」の影響も大きいと言われています。
ことし5月に気象庁は、この黒潮大蛇行について収束する兆しがあると発表していました。しかし海水温が30℃を超える場所も。去年までに比べると、これでも低いということですが…
(鈴木ダイビングサービス 鈴木勝海さん)
「全然冷たくない。生ぬるい」
さらに、こんな影響も…
(漁師 小川吉高さん)
「海藻でいっぱいだったけどな、昔は。もう何もないわ…15年くらい前からぼちぼち始まって、この10年で完全になくなった」
海水温が上がるとウニの仲間であるガンガゼなど海藻を食べる生き物が増えてしまい、海藻の数が減ってしまいます。すると、その海藻を餌場にしていた伊勢エビや貝類など、この地方の名産だった魚介類の数は減ってしまうのです。
三重の海に沖縄の魚が?
実際に7年前は40トンほどの水揚げがあった伊勢エビは、去年は2トンほどに。ほとんど姿を消してしまいました。その一方で…
(漁師 小川吉高さん)
「これはムロアジ、南の魚。これも外道やわ。家に持って帰って、おかずにする」
これまで、この地方であまり見かけなかった魚が増えています。
船の生簀(いけす)にいたのは、赤色が特徴的な「オジサン」という魚。鹿児島や沖縄などが主な漁場で高級魚としても知られています。
沖縄では「グルクン」という名で親しまれ、県の魚にもなっている「タカサゴ」も。
(漁師 小川吉高さん)
「ほとんどいなかった。こっち向いて北上しているから南の魚がとれるようになっている」
「若者らが漁師をしようと思っても無理」
グルクンなどの魚は、この地方で食べる文化がなく、あまり需要がないため、あえて狙って水揚げする魚ではありません。名産の伊勢エビなどの魚介類が壊滅状態なのは漁師たちにとって死活問題です。
(漁師 小川吉高さん)
「沖に出ても金にならんもんで誰も漁に行かない。若者らがこれから漁師をしようと思っても無理やわ。とる物がないもん」
海と共に暮らす漁師たちにとって、不安な日々が続きます。