
救えたかもしれない“愛馬の命” 馬の一番の理解者「グルーム」に 朝から晩まで馬に寄り添い馬術を支える【密着】

馬術を裏で支える「グルーム」。この仕事に邁進する女性に密着しました。
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障害馬術・名古屋市出身の角居実央さん。
(角居さん)
「次の日試合ですという夜に、自分のパートナーがせん痛という(馬特有の)腹痛で亡くなってしまって、馬が何かあったときに助けられないというのをすごく実感した。常に悔いがないように生きることと常に学ぶというのを大事にしたい」
知識があえれば、救えたかもしれない愛馬の命。後悔しないために始めたことが…
馬の一番の理解者に
(角居さん)
「今私が本業にしている『グルーム』という職業ですね」
グルームとは馬のコンディション管理をするプロ。言葉が話せない馬とコミュニケーションを取り、馬のメンタル、馬体の異常など様々なことを気にしながら管理をすることです。そして馬と乗り手を繋ぐ大切な役割で乗り手にとって一番そばにいて欲しい存在なんです。
(角居さん)
「馬とより深いコミュニケーションが取れるので、馬と関わる人間の中で一番の理解者になれるかなと思う」
馬への愛情が垣間見られる角居さん。
そしてこの夏、角居さんは山梨県の小淵沢で行われる馬場馬術の大会にグルームとして同行します。
初コンタクトは…?
(角居さん)
「おはようございます」
馬たちが続々と馬房に運ばれていきます。角居さんは今回の試合で5頭の馬の管理を任されました。馬房を掃除し、馬たちの環境を整えるのは健康管理の第一歩でもあります。
そして初めて担当する「ロードネルソン」。早速トレーニングを見に行きます。
(角居さん)
「歩様が悪くないか、大丈夫かというのと、初めて試合に一緒に付いて行くので、どういう動きを競技場で見せてくれるかというのを私は見ようかなと思います」
ネルソンのトレーニングが始まります。
(角居さん)
「思ったよりリラックスしていて、いい感じに見えます」
ネルソンはフレンドリーな性格のようで、初コンタクトは上々でした。撮影した映像は乗り手と共有します。自分の馬術を客観視できない乗り手にとってこの映像は大変貴重な資料になります。
トレーニングの後は、上がり過ぎた体温を下げるために十分な水で冷やし、同時に馬に異常がないかの確認もします。
馬の性格に合わせて…体を使ってコミュニケーション
(角居さん)
「愛撫っていうんですけど、首の筋肉は分厚くてこの(パンパンとたたく)程度だと痛くなくて気持ちいいんですね。これが褒めてあげたり安心感を与える合図になります」
そのほかにも…口で「カッカッ」という音を鳴らす合図は、少し動いて欲しいときや、ピッリっとしてほしいときに発します。
「プルルルル」という音は、落ち着かせたいときの音です。
馬の性格に合わせて様々な方法で、馬とのコミュニケーションを深めていきます。
(角居さん)
「私はただ馬が好きというだけでやっていて、自分の好きな馬に何が協力できるだろうって思ったときに、自分のベストのポジションが、このグルーム」
角居さんは、厩舎にいるときは絶えず、忙しく動いています。
(角居さん)
「一輪車壊れてしまいました」
壊れた一輪車を直すときに、ようやく座ることができました。厩舎も静まり返ったころ…
午後9時半 厩舎に戻り馬の様子をチェック
夜の馬たちの様子を見るために戻ってきました。馬の排泄物で腸の状態を確認し、体調不良を起こしていないかチェック。同時に脚の腫れも目視していきます。
絶えず馬の健康管理をするグルームには、休む時間はありません。
そうして、トレーニングとケアにつとめて、いよいよ試合を迎えます。
馬場馬術は、馬を正確かつ美しく運動させることができるかを競う競技です。角居さんの担当馬は見事な演技を見せてくれました。馬に大きなダメージもなく、無事に終え、グルームの役割を果たしました
(角居さん)
「馬のことを知れば知るほど、その馬と仲良くなって、馬もハッピーだし、乗り手もハッピーだし、チームもハッピーだし、サポートができるいい仕事です」
馬と乗り手をつなぐグルーム。日本ではまだ馴染がない職種ですが角居さんの活動が裾野を広げることに期待しています。