万博限定クッキー缶に込められた思い 「いつかチョコレートが食べられなくなる…」　世界最貧国の1つに数えられているサントメ・プリンシペ民主共和国と共同出展　『カフェタナカ』

今、大阪で開催中の大阪・関西万博に、西アフリカの小さな島国と共同で、名古屋の洋菓子店が出展していました。その目的は、カカオ栽培の現状を知ってもらうこと。地球温暖化の影響でカカオの収穫量が激減していて、いつかチョコレートが食べられなくなるというのです。そうなってしまう前に今、私たちにできることはあるのでしょうか。

カカオ産地を支援するため…名古屋の有名洋菓子店が万博に共同出展

大阪・関西万博のコモンズ館は、複数の国や地域が共同で出展しています。その中に、サントメ・プリンシペ民主共和国という国のブースがありました。

日本からの距離は約1万3000キロ。サントメ島やプリンシペ島などの島々から構成される西アフリカ・ギニア湾の島国で、チョコレートの原料であるカカオ豆の栽培が主要産業となっています。

そんな小さな島国と大阪・関西万博に共同出展したのが、名古屋市北区にある洋菓子店「カフェタナカ」です。

カフェタナカ 田中千尋シェフ：

「サントメ島はポルトガルの植民地だったところで、カカオ農園を再生しながら、島の女性たちを支援しています」

カフェタナカのこだわりは、田中シェフ自らが生産地に足を運び、選び抜いた食材をつかうこと。サントメ島にも飛行機を2回乗り継ぎ、1日以上かけて移動し、畑まで足を運びます。目的はもちろんカカオ。

サントメ島はアフリカで初めてカカオが栽培されたと言われていて、ポルトガルの植民地時代は世界有数のカカオ生産地でした。しかし…

カフェタナカ 田中千尋シェフ：

「根本的に違う、ベースの考え方が。労働“いいことではない”と感じた」

独立後は経済が安定せず、世界最貧国の1つに数えられているサントメ・プリンシペ民主共和国。輸出産業の要であるカカオ豆栽培も、独立後は収穫量が激減。

少しでも豊かな国になってほしい…カフェタナカは、カカオ栽培で使用する農機具を寄付するなど支援をしています。サントメ島に残る原種に近いサントメカカオを守りたいと考えたのです。

地球温暖化でチョコレートが食べられなくなる！？

2019年から始めたサントメ島への支援。農園で働く女性たちの意識も変化する一方、新たな課題も見えてきました。それが、気候変動・温暖化の問題です。

2024年、世界の平均気温が観測史上最高を記録しましたが、温暖化が進むと、どんなことが起こるのでしょうか。

異常気象を研究（三重大学） 立花義裕教授：

「地球の温暖化で世界中の気象が極端化しています。降る場所はものすごく雨が降ります。豪雨が降ります。晴れる場所は延々と晴れて干ばつと猛暑が起こる。特にアフリカは極端化が起こりやすい場所なんですね」

実は、カカオの木はとても繊細で、干ばつや豪雨により被害を受けやすいのです。さらに…

異常気象を研究（三重大学） 立花義裕教授：

「アフリカの産業は農業が基本ですから、農産物が取れないと食べていけませんよね？　そうすると（生きていくために）最悪国を越えて移動しますよね。気候難民もどんどん増えると思います。大変なことですよ」

温暖化の影響を受けやすいアフリカ。このままではカカオがなくなってしまうかもしれないのです。

カカオ栽培の現状を伝えるために…万博限定のクッキー缶を販売

私たちが食べるチョコレートの現実を知ってもらいたい。そのために田中シェフは、ある限定品を作っていました。それは、お店で人気のクッキー缶。サントメ島のカカオを使ったチョコクッキーが入った、大阪・関西万博の限定缶です。

大阪・関西万博が開幕すると、ブースには多くの人が詰めかけていました。お目当てはもちろん限定のクッキー缶です。

購入した人たちは「おいしく頂いています。これからもご活躍応援しています」「クッキーが本当に好きで、おいしくて！」と、ブースに立つ田中シェフに声をかけていました。

カフェタナカ 田中千尋シェフ：

「おいしいショコラの向こう側をみなさんが見てくださる。カカオの値段が上がって、チョコレートの値段が上がってますけど、さらに向こう側には取れなくなってきている現実がある。気候変動や離農してしまうとか、いろんな問題があって、知ってもらって、みんなが考え始めるといいなって思っています」

万博で販売しているサントメカカオを使ったチョコクッキー「ビスキュイ・サントメ・リュミエール～OSAKA限定缶～」。次回の販売は7月18日（金）から22日（火）までの5日間の予定です。