参院選で問う“物価高” 25年続けた寿司店を閉めた店主の涙「思い切った対策を」 愛知の候補者の公約は

参院選の争点の一つ「物価高対策」。食材の高騰などの影響で頭を抱える飲食店も少なくありません。名古屋の街で取材しました。
名古屋市昭和区の大衆食堂「ひさや」。創業から48年続けるのは、”お手頃価格”の定食です。
今でも1000円以下の定食メニューが並びます。
創業以来、学生を中心に愛されてきたこの食堂にも、高止まりする物価による負担が重くのしかかっています。
「今は物価が全部上がっている。前は一つのところで全部そろっていたけど、今はここが安いと思ったらそれだけ買いに行く。学生なのでそんなに値段も取れないし」(ひさや 樅山久男 店長)
“物価高”で飲食店の倒産相次ぐ

収まらない“物価高の波”の影響は他にも。
名古屋市緑区の市場で、持ち帰り専門のすし店を経営していた福川洋司さん(61)。
場所を転々としながら25年ともに歩んだ店を5月にたたみました。
「いろんな…感慨深いものがありますね。ごめんなと…いつもそう思っています」(福川さん)
帝国データバンクによりますと、今年1月から6月までに倒産した飲食店は458件で、前の年の同じ時期と比べて約20件増加。上半期として過去最多を更新しました。
このうち50件は、倒産の理由として「物価高」を挙げています。
コメ価格の高騰が追い打ちに

「家族や今後のことを考えて、閉店することも視野に入れたのは去年の10~11月ごろ。自転車操業になっていたので、線を引いたほうがいいだろうということで」(福川さん)
「高級なイメージの寿司を身近な人にも食べてもらいたい」。そんな思いから、マグロやサーモンなどの寿司9貫を399円で提供するなど低価格にこだわり、地元で親しまれてきました。
今年追い打ちをかけたのは、コメ価格の高騰です。
地元産のコメは長らく10kg2200円程度でしたが、一時9000円にまで値上がり。ノリの価格も2倍に膨れ上がりました。
すしネタを変えるなど、こだわり続けた低価格を維持するために試行錯誤しましたが…
「世間の逆風には勝てなかった。おじいちゃんおばあちゃんや生活保護の人もいたので、そういった方たちに役立てる商売をしていたつもりだが、私たちも生きていかないといけないので、ごめんねと」(福川さん)
店を失ったいまは、スーパーのすしコーナーで働いています。勤務後には店があった場所を訪れ、すし職人として40年間愛用した桶の手入れをするのが日課となっています。
「水が切れると(おけが)乾燥して壊れる。これだけは必ずやっていて、これが唯一の心の支え。正直後悔はないといったらうそ。すしを握るのは天職だった。いまはすしを握られないが、いずれはすしを握りたい。自分の手で」(福川さん)
物価高で閉店を余儀なくされた福川さんは、選挙対策ではない“思い切った対策”に期待を込め、1票を投じる予定です。
「思い切った物価高対策をしてもらった方が市民にとっては良い。我々みたいな店が増えていかないように、個人店がいつまでもやっていけるような世の中になってもらいたい」(福川さん)
愛知選挙区の候補者の対策は

メ~テレは今回、東海地方の候補者にアンケートをとりました。
その中で、愛知選挙区の各候補者の物価高対策に対する考えや公約をまとめました。
参院選愛知選挙区では14人が立候補しています。
候補者のスタンスは「減税」か「給付」かで大きく分けることができますが、多くの候補者が「減税」の必要性を訴えていることがわかります。
自民党の現職・酒井庸行氏は、物価高の影響を特に受ける「低所得者層」を下支えするための給付金の支援などが必要だと話しています。
立憲民主党の現職・田島麻衣子氏は、財源を示したうえで食料品にかかる消費税を時限的にゼロにすることなどを公約に掲げています。
自民の推薦を受ける公明党の現職・安江伸夫氏は、所得税の課税最低限度額の引き上げに加えて、生活応援給付の実施などを掲げています。
日本維新の会の新人・広田さくら氏は、公平に広く国民生活を支援するという観点から「消費税の減税」が必要だとして、食料品にかけられている8%の軽減税率を2年間に限定してゼロにすることを公約としています。
共産党の新人・須山初美氏は、「消費税の減税はくらしを助け消費を喚起する」として、消費税を5%に減税することなどを訴えています。

国民民主党の新人・水野孝一氏は、実質賃金が継続的にプラスになるまで、消費税を一律5%に引き下げるべきだなどと訴えています。
れいわ新選組の新人・辻恵氏は、消費税の廃止、最低でも一律5%に引き下げるべき。それが実現するまでのつなぎの対策として、一律10万円給付も考えるべきだという立場です。
参政党の新人・杉本純子氏は、消費税の段階的廃止を掲げています。また、国民の税の負担を最大35%と上限を設けることで、使えるお金を増やす政策の実現を訴えています。
社民党の新人・大西雅人氏は、消費税の減税とつなぎ対策として給付金の支給も必要だという立場です。

諸派の新人・石原悟氏は、消費税をゼロにすることを掲げています。
諸派の新人・横山緑氏は、ガソリンや食品の税率を減税。
諸派の新人・園原武嗣氏は、消費税をゼロにすることを掲げています。
日本保守党の推薦を受ける諸派の新人・田中克和氏は、生活品の消費税を恒久的にゼロに。
諸派の新人・山根有紀也氏は、ガソリンの暫定税率撤廃と、経済的支援がより必要な世帯に限り給付を掲げています。