
コメ不足は一時的対策では解決せず?備蓄米放出の限界と高齢化する日本の農業現場

コメ不足問題に対して政府が備蓄米を放出する対策を取っていますが、その効果は限定的かもしれません。専門家によると、備蓄米の放出だけでは一時的な対応に過ぎず、根本的な解決には至らない見通しです。
【写真を見る】コメ不足は一時的対策では解決せず?備蓄米放出の限界と高齢化する日本の農業現場
備蓄米放出量は年間生産量の9%に過ぎない
農家や小売業者の見方では、政府による備蓄米の放出はコメ不足の解消には十分ではないとされています。小泉大臣は就任早々に随意契約で30万トンの備蓄米を放出し、江藤前大臣は31万トン、合わせて61万トンが放出されることになりました。
しかし、この数字を主食用米の年間生産量と比較すると、その割合はわずか9%にとどまります。2024年の主食用米の生産量は前年より18万トン増えて679万トンとなっていますが、備蓄米放出量はその約1割に満たない状況です。このことからも、コメ不足の解消はなかなか進まないと予想されています。
主食用米生産量は20年で2割減少
米不足が発生した要因は複合的です。最も大きな要因のひとつは、国が計画的に水田の生産調整を行い、生産量を減らしてきたことにあります。
農水省のデータによると、主食用米の生産量は2008年度には866万トンありましたが、その後徐々に減少し、2024年度には679万トンとなっています。この20年足らずの間に生産量が約2割も減少したことになります。
国が慌ててコメの増産に舵を切ろうとしていますが、構造的な問題が山積しています。例えば愛知県では、農業用地が減少し工業用地が増加しているほか、農家の平均年齢は68歳を超え、後継者不足が深刻な問題となっています。
このような状況から、米不足問題の根本的な解決にはまだ程遠い現状があります。備蓄米放出による対応は一時的な対策に過ぎず、生産基盤の強化や担い手の確保など、長期的な視点での取り組みが求められています。