利用者の低迷が続く名鉄「西尾・蒲郡線」 高齢化が進む地域で「鉄道路線」を存続できるか

名鉄「西尾・蒲郡線」の存続に向けて活動する団体の総会が開かれ、昨年度の利用者の数が報告されました。利用者の数は、コロナ禍前の約90%で利用者の低迷が続いています。名鉄「西尾・蒲郡線」は、西尾駅から吉良吉田駅までの「西尾線」と蒲郡駅までの「蒲郡線」の合わせて約27.3キロを結ぶ路線です。利用者の低迷が続き、存続が危ぶまれていましたが、2027年4月から15年間の存続が決まっています。

6月13日、西尾市役所では、沿線の市民らで構成される団体「西尾市名鉄西尾・蒲郡線応援団」の総会が開かれました。総会で報告された2024年度の利用者数は、2023年度と比べ0.1%増の306万6000人で、コロナ禍前の2018年度と比べ約90%でした。沿線で開かれたイベントの影響で利用者が増えたものの、通勤定期を利用する人が減少しました。
総会では、ウォーキングイベントなどを開き、名鉄西尾・蒲郡線の利用を呼びかけていくことなどが決まりました。
西尾市名鉄西尾・蒲郡線応援団 市川博康団長:
「これから西尾・蒲郡はかなり高齢化が進むと思うので、なくてはならない移動手段。観光で考えれば、土日しかないかもしれないが1人でも利用者を増やしていきたい」
地域が支える鉄道

収益が見込めないなか、どうやって鉄道の収益を上げていけば良いのでしょうか。交通経済学について研究している関西大学教授の宇都宮浄人さんに、詳しく話を聞きました。
――「西蒲線」に関しては、行政と連携して維持をすることがすでに決まっています。この方法についてはどうお考えですか。
関西大学教授 宇都宮浄人さん:
「私は望ましい方向だと思います。いままでは名古屋に本社がある名鉄がビジネスとしてやっていましたが、きちんと行政、地域行政がかむことによって、地域のための鉄道として活性化できます。
鉄道は、道路と同じ社会インフラです。それと同じように鉄道も地域のインフラとして運営していくほうが自然。日本はいままでビジネスベースでやってきましたが、実はそんな国はありません。
今回は官が関わる『上下分離方式』と聞いていますが、道路と同じインフラの部分はしっかり官が支えて、その上を民間事業者のサービスとアイデアが出てきます。こうした仕組みは望ましいといえますね」

――民間が獲得する収益が少なくなってしまいますが、そのあたりはいかがでしょうか。
関西大学 宇都宮教授:
「少なくなったとはいえ、300万人になっているのは、ほかの公共事業ではそんなにないと思います。輸送密度も、2年前は2600人ほどありましたが、これはよその地方鉄道に比べれば、まだ多いです。
結構、朝にしっかり乗っていて、それを支えていく必要があり、むしろこれにお金をかけることが大切です。にしがま線の車両であれば200人ほど運べます。道路を広げて渋滞をなくしたとして、200台の車になったら大渋滞。むしろ道路にお金がかかってしまいます。
きちんとしたお金をかけることによって、高齢者が安心して出かけられる街になります。しかも、皆さんが鉄道に乗れば渋滞も減っていくという意味でプラスになり、若い人も安心してそこに住めるのではないかと思います」
長い目で見て住みやすい街にする

――街づくり全体として考えることが大切なんですね。
関西大学 宇都宮教授:
「長い目で見て、住みやすい街にすることが大事です。車を運転していても、高齢になったときも安心して住める。そのような街にしていく必要があります。
しっかり鉄道から離れている人も、鉄道が利用できるような二次交通と呼ばれるもの、あるいは駅までは車で出なければならない場合、駅に駐車場をつくるなども必要です。都市としても、駅の近くに病院があるような街づくりにしていく。こういったことは課題としてあるのではないかと感じます」
――どの自治体も人口減少という課題は常にあります。その辺りをどうクリアしていけば良いのでしょうか。
「いままで道路などにばかりお金を使ってきたことに比べて、むしろ住みやすい街になる、渋滞が減る、これはお金を浪費するのではなく将来のための“投資”だと考えるべきです。
その投資をするのは、まさに名古屋の本社のビジネスではなく地域が地域のために投資をするということに考えれば、少なくとも今回のにしがま線の支援額ほどであれば、十分ペイするものではないかなと。
人がきちんと住めば税収も上がるので、結果的に地域も潤うことにつながるかもしれません」