トランプ大統領の「ゼレンスキー批判の矛盾」をウクライナ専門家が指摘 「独裁者」「支持率低い」の真相は

アメリカのトランプ大統領が自身のSNSで「ウクライナのゼレスンキーは独裁者だ」「国民からの支持は低い」など4つの批判を展開しました。トランプ大統領がSNSに投稿したポストの真偽について、専門家に話を聞きました。
「ゼレンスキー大統領は選挙を拒否した独裁者だ」

ロシアとウクライナの終戦終結に向けた和平交渉をめぐり、アメリカとロシアがサウジアラビアで協議しました。その気になる会談内容について分かってきました。
アメリカのフォックスニュースによると、まず停戦して、ウクライナ大統領選挙をしたうえで、最終合意に向かという和平案を調整しているといいます。さらに、アメリカのトランプ大統領は、自身のSNSでウクライナのゼレンスキー大統領について「選挙を拒否した独裁者だ」「国民からの支持は低い」「決着がつかない戦争に突入させた」「アメリカが贈った支援金が行方不明」と批判しました。

アメリカは、ロシアに同調する形でゼレンスキー大統領外しの一手に出てきたのです。米ロ主導の和平交渉にウクライナ国民は、眉をひそめます。
ウクライナ国民女性:
「この和平交渉のニュースは気分がよくありません」
ウクライナ国民女性:
「トランプの計画は、ウクライナから多くのモノを奪うことです。ここで平和を作ることではありません」
ウクライナ研究の第一人者の見解は

トランプ大統領がSNSに投稿した4つのポストの真偽について、ゼレンスキー大統領とも面識があり、ウクライナ研究の第一人者である神戸学院大学の岡部芳彦教授に話を聞きました。
――「ゼレンスキー大統領は選挙拒否の独裁者」という内容でしたが、これは事実なのでしょうか。
ウクライナは憲法の規定で、戒厳令法の規定で、戒厳令を引いている間は、選挙ができないという規定があります。逆に選挙をしてしまうと、その方が独裁者になります。
トランプ大統領からすると「選挙をしないから独裁者だ」と言っていますが、これはまったく当てはまらないと思います。
もともとは独裁者を生まないための仕組みでした。悪い大統領がいて、自分の支持率が低く戒厳令を引いて選挙した場合、インチキな選挙になって勝ってしまうかもしれません。
それを避けるための仕組みになっていますが、トランプ大統領は選挙しないということだけで独裁者と言っています。

――少なくとも“選挙を拒否した”というところに関しては間違っていると言わざるを得ないですよね。
付け加えると、もともとトランプ大統領がゼレンスキーの支持が4%だといい、「トランプ大統領は偽情報におどらされている」とゼレンスキーが応酬し、カチンときたトランプ大統領が「独裁者」だと言った、と。少し感情的なやり取りも含まれています。

――2つ目、「国民からの支持は低い」という内容の発言がありましたが、これはいかがでしょうか。
2024年末、各種国内の世論調査機関がとった支持率を見ると、大体50%前後でした。ウクライナの調査は「現在の大統領の報道を支持するか」というような形です。
戦争が始まったときは9割近くありましたので、その際と比べると下がっていますが、半分ぐらいの国民は支持しています。今回のトランプ発言を受けた直後の世論調査では57%まで上がっています。国民の中でもトランプ発言には感情的な反発が強まっていると思います。

――3つ目は、「決着がつかない戦争に突入させた」という内容ですね。
2022年2月24日にロシアが特別軍事作戦と名付けた軍事侵攻、侵略を始めたことがきっかけです。そのため、全く当たりません。ロシア側は2014年の停戦以降、ウクライナが守らなかったのではないかという偽情報のようなニュースを流しており、その影響をトランプ大統領が受けているのではないかという印象です。

――「アメリカが贈った支援金が行方不明」になっているという内容でしたが、これについてはいかがでしょうか。
昨年後半にゼレンスキー大統領自身が、アメリカからの支援が約束した額の10%ほどしか届いてないのではないかという発言をしました。実際、アメリカが約束した額の半分ぐらいしか届いてないのではないか、という報道もあり、ウクライナ側から見ると、約束したものの半分、あるいはそれ以下しか届いていないのでは、という実情です。
しかし、(トランプ大統領は)半分しか届いていないことを逆手に取り、「では、半分はどこにいったのか、誰かが取ったのではないか」と。いまのUSAID(アメリカ合衆国国際開発庁)がお金を着服しているのではないか、とトランプ大統領が言うのとよく似た解釈をしているのではないかという印象です。
ゼレンスキー大統領は「冷静に反応」

――こうしたSNS上での発言ですが、ウクライナ側はどう受け止めているのでしょうか。
先ほどのトランプ大統領が「偽情報空間に生きている」という発言も、もうワンセンテンスあります。トランプ大統領のことは尊敬しているが、偽情報の影響を受けているという言い方だったので、ゼレンスキーは感情的に見えて、思ったよりも冷静に反応しているなと思いました。
例えば、中東やトルコにゼレンスキー大統領夫人を伴って外遊にも出ているので、比較的平常心で対応している気がします。
――アメリカとロシアの思惑通り進むと、ウクライナ側としては承服できない。それでも冷静に受け止めているのですね。
ミュンヘン安全保障会議も先日ありましたが、アメリカの支援ももちろん必要ですが、アメリカが抜きになったとしても、ヨーロッパ各国、そして“東京”。東京という言葉を使われましたが、日本を含めた世界中の連合体の支援をもってウクライナを支えてほしい、というようなことも言っていました。