【高速パトロール隊密着】命がけの“落とし物”回収 トラックから一斗缶「バコーン当たって」被害男性怒り

2024年度に回収された落下物の数は、ネクスコ中日本管内だけで約5万7300件。落下物は重大な事故につながります。そこで高速道路の安全を24時間体制で守るのが、高速道路のパトロール隊です。危険と隣り合わせの作業現場を、密着させてもらいました。

6月下旬、サイレンを鳴らしながら路肩を走る、黄色いパトロールカーです。乗っていたのは、隊員23年目のベテラン・藤井健太郎副隊長と5年目の山口鮎菜隊員。日曜日の午後4時頃、渋滞の中で向かった先は落下物が発見された地点です。

散らばっている落下物を回収するため、藤井副隊長が旗を振って、一時通行止めに。その間に、山口隊員が拾います。
藤井隊員:
「慌てんでいいよ、ゆっくりで。完全に止まっとるで。でかいねぇ!」
山口隊員:
「ちょっとでかいです」

落ちていたのは、ピックアップトラックの荷台のカバーでした。物が大きいため、3往復。細かい部品も拾って、作業は終了です。作業時間は1分ほど。2人の働きで、最大6キロあった渋滞は解消されました。
人の手で拾う、危険と隣り合わせの作業

基本的に落下物は人の手で回収。高速で走る車が次々と押し寄せる中で、隙をついて行うため、大きな危険が伴います。
時には山口隊員がタイミングを見計らって飛び出しますが、身の危険を感じて退避することも。2度目のチャレンジで、無事に回収できました。

落下物の回収はパトロール隊の任務の中でも特に多く、取材班が密着した2日間では10件ありました。落ちていたのは、破裂したタイヤの一部に、ゴムチューブ。さらには大きな木材も。

パトロール隊の基地で、落下物置き場を見せてもらいました。
豊田基地 交通管理隊 鬼頭直広隊長:
「この量で約1カ月分。多いものとしては、バーストタイヤ片と脚立、シートです」
昨年度(2024年度)に回収された落下物の数は、ネクスコ中日本管内だけで約5万7300件に上ります。物を落とすと、重大な事故につながります。
落下物が男性の乗用車にぶつかりトラブルに

別の日、黄色いパトロールカーが向かった先には、営業用のトラックと乗用車が。通行する車に注意を促すパイロンを並べ、乗用車の運転手を安全なところに誘導し、話を聞きます。
天野副隊長:
「けがはないですか?」
運転手:
「けがはいまのところ、なんもないから。あの車から落ちてきた缶々見たやろ? 2つくらい落ちとったやろ。
天野副隊長:
「缶々ですか」
運転手:
「一斗缶。それが俺のクルマ、“バコーン”当たって。おれの車体の下、バコーン言うて」

よく見ると、乗用車のバンパーに傷が付いていました。
運転手:
「目の前であいつが落としたのを分かっていたから、(クラクションを)“ピピー”鳴らして、捕まえて。『僕が落としました』って言ったから」
前を走っていたトラックから、しっかりと固定されていなかった空の一斗缶が落下。後ろを走行していた男性の乗用車にぶつかったようです。

見つかったのは、約2キロ先の路肩です。回収された一斗缶をよく見ると、へこみや、引きずったような跡があります。
天野副隊長:
「たぶん、ほかの車両が巻き込んで、あそこ(2キロ先)まで持って行ったんじゃないかなと思います」
一斗缶は、次々とやって来る車にぶつかり、発見場所まで運ばれたようです。車両が時速100キロ近くで走る高速道路。当たり所が悪ければ死にもつながりかねません。

天野副隊長:
「積み荷を出発する前に飛ばないように固定してもらうことが大事です。これから夏場になると路温も高くなってくるので、タイヤもバーストする事案も増えてくるかと思います。しっかりとタイヤの点検等をして、出発していただきたいですね」