消費量が約20年で半減 魚離れを食い止めるべく、海の街蒲郡市の男性が特産の深海魚を使い食べ方を伝授

「魚離れ」が深刻な状況です。魚介類1人当たりの消費量は2001年のピーク時からほぼ半減。過去最低を記録しています。さらに子どもの魚料理が嫌いな理由について調査したデータでは「骨をとるのが面倒」が1位となっています。
そんな状況を打破しようと、愛知県蒲郡市で「魚離れ」脱却を目指す男性がいました。

蒲郡市の特産「深海魚」を多くの人に知ってもらおうと企画された「がまごおり深海魚まつり」が11月3日に、蒲郡市で開催されました。深海魚とは、水深200メートルよりも深い海に生息している魚類のこと。メヒカリやオオコシオリエビ、キンメダイ、クロムツなどが該当します。
イベントの主催者の1人として運営に携わっていたのは、蒲郡市で水産加工販売店を営んでいる山本大輔さん。「蒲郡は深海魚が水揚げされることが特徴的です。深海魚を知って、食べて、好きになってもらいたい」と笑顔で話します。

開催の背景には、深刻化する「魚離れ」がありました。魚介類1人当たりの消費量は2001年のピーク時からほぼ半減。過去最低を記録しているのです。

魚介類の消費量が落ちていることに、山本さんは危機感を覚えました。「食べる人が減ると、お客さんが減ってしまう。大変深刻に受け止めています」。そして来店するお客さんと会話する中で、あることを感じたといいます。
「一番の難敵は、“骨”なんです」
魚料理が嫌いな理由、1位「骨をとるのが面倒」

子どもの魚料理が嫌いな理由について調査したデータでは「骨をとるのが面倒」が1位となっています。山本さんが指摘する骨によって、子どもの頃から魚離れが進んでいるのです。

魚離れの現状を打破しようと、山本さんは「骨のある魚を上手に食べることができれば、(魚の)消費の低迷に歯止めがかかるんじゃないか」と力を込めます。

この日、山本さんは地元・蒲郡市の中学校で授業参観の特別講師を務めました。蒲郡市で水揚げされたキンメダイを使って、生徒たちと煮付けを作ります。うろこをそぎ落とし、腹に包丁を入れたのち、エラを持って内臓を引っ張り出します。

山本さんの教えのもと、生徒も魚さばきに挑戦。内臓を取り出す慣れない作業には、苦戦する生徒もいました。その後、キンメダイを煮ている間に、山本さんは生徒を集めました。
山本さん:
「魚の骨はアジもサバもキンメダイもノドグロもクロムツも、みんな同じ構造をしています」

模型をもとに、煮魚の上手な食べ方を伝えます。まずは魚の中心に箸で切れ目を入れ、腹付近の骨に注意しつつ上の身、下の身を食べるよう説明。そのあとは、魚をひっくり返さず頭としっぽを持って骨を抜いて、余った身を食べるのがコツだといいます。

出来上がった「キンメダイの煮付け」を教わった通りに、食べ進めます。
生徒:
「めちゃくちゃきれいに食べられます。きれいに食べられると、よりおいしく感じます」

多くの生徒が、骨をよけながら上手に煮魚を食べることができました。授業を見ていた保護者は「食べ方を教えれば食べてくれるんだ」と発見があったそう。
中学生の保護者:
「普段は小骨がある魚は食べなくて、取ってと言われるとこっちも面倒くさくなっちゃうから『もういいや』となるけど、魚の食べ方を教えれば食べてくれるんだな、と思いました。なるべく(魚料理を)出すようにしようかな」
食べることの技術は簡単に身につけられる

山本さんはこうした活動を継続して、「魚離れ」からの脱却を目指しています。
山本さん:
「魚を食べる方法は学校教育にはありません。ほとんどの子がうまく食べられませんが、うまく教えれば、食べることの技術は簡単に身につけられるので上手に食べられます。食卓と魚が、もう少し近い距離感にあるとうれしいです」