
いつもと違う動物園を求めて...親子が“休園日に通う”ワケ 自閉症の娘と家族の穏やかな一日

人影もまばらな休園日。静けさが広がる園内に、ある家族が足を運んでいました。
悪天候の日こそ“動物園日和”

愛知県豊橋市にある『豊橋総合動植物公園(のんほいパーク)』。毎週月曜日は、休園日です(月曜日が祝日の場合は翌平日)。園内の工事や掃除が行われていたり、売店はお休みですが、動物たちはいつも通り、のびのび過ごしています。

話し声の聞こえない、静かな動物園。お客さんのいないはずの園に、ある家族が来園していました。豊橋市に住む花島愛弥さんとその両親です。
この家族が、“休園日”に訪れているワケとは…?

その答えは、娘の愛弥さんが耳につけているイヤーマフに関係していました。
愛弥さんの母 花島恵里さん:
「彼女(愛弥さん)は、重度知的障害自閉症というだけでなく、感覚過敏という障がいがある。私たちよりも聞こえがよすぎて、苦手な音も私たちより大きく聞こえる」

愛弥さんは自閉症。感覚のなかでも特に、聴覚が敏感です。小さい頃から動物が大好きで、のんほいパークは年に数十回通うほどお気に入りです。

しかし、開園日は家族連れなど大勢で賑わう同園。人が咳をする音や子どもの泣き声などを聞いて、パニックになり、園内で動けなくなってしまったこともありました。
恵里さん:
「いつもアンテナを張っている。彼女が苦手なものから、彼女を守るために。大雨の日や台風の前など悪天候の日が、むしろ“のんほいパーク日和”。悪天候だと、皆さん来園されないので」

あえて天気の悪い日を選び、来園することも。雨で好きな動物が、外に出ていないこともあったといいます。
静けさが守る笑顔、「休園日入園許可制度」とは?

「人ごみが苦手でも、ゆっくり動物を見てみたい」
そんな声が複数集まり、2020年11月、同園は「休園日入園許可制度」を作りました。人の声に過敏、人ごみが苦手など、障がいで入園の難しい人が休園日に入園できる制度です。(※申請が必要)

国内初となる制度について、『のんほいパーク』事務長補佐・土屋孝一さんは「休園日に来ていただければ、静かな環境の中で、動物や植物を見て、楽しんでいただけるのではないか」と話します。
聞こえる音は、家族の会話だけ。穏やかな時間が流れます。
母が語る、制度への感謝「ぜいたくな時間を過ごしている」

愛弥さんには、動物園に行くと必ずすることがあります。それは、動物の絵を描くこと。
伸びやかな線にカラフルな色使い。今まで描いた作品は、約3万点にものぼります。

“(愛弥さんの絵は)園の魅力を伝えてくれるのでは”という思いから、同園は休憩所の壁やトイレにイラストを採用。

開園日、絵を見た来園者からは、「(子どもが絵を)気に入っていた。お利口におむつ替えられた」、「かわいい。(動物たちが)仲良しな感じがした」など声が寄せられました。
制度のおかげで、ストレスなく園で過ごせるようになった愛弥さん。家族も気を張らずに、楽しめるようになりました。

「お互いが自由な時間を満喫できるというのは、私たち重度な障害のある子を抱える保護者にとって、とてもぜいたくな時間を過ごさせてもらっている」と語った恵里さん。続けて「それをかなえてくれたのが、この制度です」と感謝を述べました。





