
アメリカでも広がる“ワクチン後遺症”問題 患者の会の被害者は日本の25倍 国民の多くは「ほとんど知らない」現状 大石邦彦が現地取材

新型コロナワクチン接種後、アメリカに後遺症の問題はあるのか。3月下旬に現場へ取材に行くと思った以上に状況は深刻で、日本だけでなく世界的な問題であることが見えてきました。
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日本から飛行機でおよそ16時間。
(大石邦彦アンカーマン)
「到着しました。雄大な山々が見えます。ここはアメリカ・ユタ州のソルトレイクシティです」
新型コロナワクチン発祥の地であるこの国にも、ワクチン後遺症の患者が大勢いるといいます。
ソルトレイクシティから車で30分。郊外の町、サラトガ・スプリングスに住むブリアン・ドレッセンさんもワクチン後遺症患者の1人です。
(ブリアン・ドレッセンさん)
「私はアストラゼネカ社の治験に参加しました。パンデミックから抜け出すために義務を果たすつもりでしたが、注射を打って1時間ほどで全てが変わってしまいました」
2020年11月、アストラゼネカ社製のワクチンの治験に参加したところ、接種後まもなく体に異変が。
(ブリアン・ドレッセンさん)
「接種後1時間以内に注射をした腕にしびれるような感覚が起きました。それがもう一方の腕、そして足へと移動し体全体に広がっていったんです。4年たった今でも針で刺されるような痛みが体中にあります。私は自己免疫疾患を患っています。自分の免疫が常に神経を攻撃し、むしばんでいるのです。これはとても強い痛みで接種前にはなかったものです」
1回の注射で全てが終わってしまった…
絶えまなく続く全身の痛みやめまいに悩まされ、5年が経つ今も症状は消えていません。
1日にこれだけの薬を飲む必要があります。
(ブリアン・ドレッセンさん)
「問題は全て副作用のある薬だということです。痛みを和らげるために飲みますが飲み過ぎるとゾンビのようになって家族の役に立たなくなるんです」
子供2人の母親で前は幼稚園の先生でもあったブリアンさん。
ウィンタースポーツにロッククライミングなどアウトドアが趣味でした。どれも今はできません。
(ブリアン・ドレッセンさん)
「アメリカンドリームと言える生活を送っていましたが…。たった1回の注射で全てが終わってしまいました」
早期の治験で異常が出たブリアンさんは、ワクチン接種の後遺症による神経障害と診断され、国立衛生研究所で治療を受けることができました。
しかし、アメリカではその後の集団接種でワクチン後遺症患者への支援はほとんど行われていません。
(ブリアン・ドレッセンさん)
「(Q:医療機関の理解はある?)誰も知りません。私たちが病院に行って医師に教えているんです」
「誰も私たちを助けてくれない」患者会を設立 支援100万ドル
こうした中、ブリアンさんは2021年、患者を支援する「REACT19」という組織を設立。アメリカで3万6000人の会員がいます。
(ブリアン・ドレッセンさん)
「他に誰も私たちを助けてくれなかったので、自分たちでやらなければいけなかったんです。私たちは苦しんでいる人々に物理的・経済的・精神的なサポートをしています」
すべて寄付金で運営されるNPO組織でこれまでに約100万ドル、1億5000万円もの支援を患者に行っています。
ブリアンさんを診察しているダグラス・ジョーンズ医師。
(ブリアンさんの主治医 ダグラス・ジョーンズ 医師)
「彼女がワクチン接種をした時期とその後の発症の間には、非常に強い相関関係があることが分かっています。私たちが診察するときにはいつも症状を引き起こした何かがあったかや、タイミングや期間はどのくらいだったのかを見ます」
アレルギーや免疫学が専門のジョーンズ医師は、これまでコロナやコロナワクチン後の症状に苦しむ患者を1000人以上診てきたといいます。
(ブリアンさんの主治医 ダグラス・ジョーンズ 医師)
「私たちがさらに前進し患者を評価し、治療を施し科学を推進できるようになれば、最終的にはワクチンの後遺症が認識され理解されるようになると期待しています」
“ワクチン被害” アメリカの人々は…
アメリカの人々はワクチンによる被害について知っているのか?街で聞いてみると...
(街の人)
「深刻な副反応がある人を誰も知りません」
「聞いたことはあるが、誰も知らない」
一方でこんな人も…
(街の人)
「兄は心臓が悪いからワクチンのせいだと思う。(接種後から)兄は病気がちでワクチンが原因じゃないかといわれています」
(大石)「ワクチンの副反応について、なぜ報道されない?」
(街の人)
「『(メディアは)ワクチンを打てば悪いことが起きるかも知れないが、打たないといけない』と言っていたのを覚えている。でも今実際に悪影響が起きている。彼らは責任を取りたくないんだと思う」
“ワクチン問題” アメリカ政府の対応は?
アメリカ政府は、ワクチン問題にどう対処するのか?
「REACT19」の活動を支援するユタ州の共和党下院議員クリステン・シェブリエ氏はこう話します。
(共和党 クリステン・シェブリエ 下院議員)
「ワクチン接種が推進された時、知られていない情報がたくさんあったと思いますし、当初は人々に共有されるべきだった危険性が共有されていませんでした」
(大石)
「ワクチン後遺症の患者に対しての補償・支援は十分ではないですかね?」
(共和党 クリステン・シェブリエ 下院議員)
「不十分だと思います。国の保障は後遺症患者を助けるために適切なメカニズムではありませんでした。お金も足りないし人員も足りません。ワクチンによって障害を受けた人々に対する公平性について、トランプ大統領は何らかの関心を持っていると思います。以前の政権よりも希望が持てるようになっています」
自らもワクチン後遺症に苦しむアメリカの患者会の設立者ブリアン・ドレッセンさん。支援活動の枠をさらに広げています。
2024年11月には、世界の患者会の連合体「CVIA」を共同で設立。アメリカやオーストラリア、ベルギー、そして日本も含む世界23の国と地域、25団体が加盟。ことし1月には世界各国の公衆衛生当局に対し患者の支援とワクチンの安全性調査を訴える公式声明も出しました。
取材の終わりにブリアンさんはこう話してくれました。
(ブリアン・ドレッセンさん)
「自分のために戦うなら同じ問題を抱えている他の人のためにも戦うべきだと思いました。政府が正しい事をしないのなら私たちにはできるし、そうすべきです。私たちは病気を持つ全ての人と同じように扱われることを望むだけです」