空き家が多い街 大火事や犯罪からどう守る 愛知では地元の不動産会社が巡回・点検サービス

170軒以上が焼けた大分市の大規模火災は、人口減少で空き家の増えていた地区で発生しました。災害から街をどう守るのか。東海地方の取り組みを取材しました。
11月18日に発生し、170軒以上が焼けた大分市の大規模火災。
この地区では人口がここ10年で約3割減り、空き家が急増していました。
人が住んでいない住宅は初期消火が難しく、火災の被害が拡大する一因となった可能性もあります。
防災上のリスクともなる空き家の増加は、東海地方でも課題になっています。
「愛知県常滑市のやきもの散歩道です。風情ある街並みが残る一方、周辺では空き家の多さが問題となっています」(山田寛明 記者)
知多半島の西側に位置する愛知県常滑市。2025年10月末時点で約5万9000人が暮らしていますが――。
「住宅密集地が多く、道幅が狭く、木造住宅も多いのが空き家の多い地域の特徴かなと思います」(常滑市 都市計画課 後藤靖智 主任)
「空き家は行政の介入が難しい」

総務省が5年ごとにまとめる「住宅・土地統計調査」では、2023年時点の常滑市内の空き家は4900軒でした。
空き家率は16.5%で、県内でも空き家率が高い自治体の1つです。
「親が住んでいたけれど、子どもが出ていく家が多い。心配だな」(常滑市民)
実際に空き家になっている場所に向かってみると――。
「狭い路地に空き家が並んでいます。草木が生い茂り、一部建物が崩れている場所もあります」(山田記者)
常滑市は年に1回、現地調査をしています。状態が悪い空き家の持ち主には「適正な管理」を求めていますが――。
「放置されると、道路に飛散する、火災にもつながる恐れがある。空き家は基本的には個人の財産なので、行政が深く介入するのが難しい。所有者の方がきっちり管理して、解体や安全対策を講じてほしい」(後藤主任)
巡回・点検する不動産会社

「街中に点在している空き家。空き家を火災や犯罪などから守るために、管理を行うサービスがあるんです」(木岡真理奈アナウンサー)
愛知県稲沢市で話を聞いたのは、地元の北島不動産の林久嗣社長です。
林さんは、愛知県宅建協会が認定する「空き家マイスター」。
現在、所有者の依頼を受けた6軒の空き家を巡回・管理しています。
「古いから目視で壊れているところが広がっていないか、特に雨といとか見ていかないと。ここは屋根がめくれてきているので、軒が落ちないか」(林社長)
チェックポイントは多岐にわたります。点検の目は、火災のリスクにも。
「たくさん草があると枯れてくる。風が強い日には火災のリスクが多くなる。燃え広がるから一番気をつけなければならない」(林社長)
草抜きには、ごみの持ち込みを予防する効果もあるといいます。
「よそから飛んできたごみが入ってきて不法投棄の被害が広がるのと、『置いてもいいんじゃないか』と2次被害が始まるので、片付けないと」(林社長)
適正管理は地域防災にも重要

家に入ると窓を開け、風を通して湿気を追い払います。また、水回りに異常がないかを確認。
さらに、こんなところまで――。
「足跡があって誰かが入った形跡がないかを見る」(林社長)
空き家は、窃盗団などのすみかに使われることもあるそうです。
たばこの不始末で火災が発生し、近所に燃え広がった事例もあるといいます。
「ポストも犯罪の配送先に使われるといけないので封をする」(林社長)
空き家の適正管理は、地域防災のためにも重要だといいます。
Q.大分市の大規模火災への受け止めは?
「空き家を未然に防がなければいけない時期になったと恐ろしさを感じている。しかも大規模で、1軒だけの火事ではなく、地域を巻き込んだ損害被害。空き家問題を地域で解決しないとできない時代になった。市と不動産会社と地元の意識が一緒になるといいと思います」(林社長)





