
”条例違反”の建設残土 責任者は現職の町議会議員だった 撤去命じられても…「持って行く所がない」三重・紀北町

「奇跡の川」と呼ばれる清流・銚子川。その透明度から称される美しい川と、それを育む緑豊かな山々が広がる三重県南部の紀北町。しかし、この自然豊かな町で深刻な問題が発生していました。
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全国から運び込まれる 大量の"建設残土"
山沿いの細い道を進んだ先に姿を現した「土の山」。高さは約3メートル。
(紀北町 上里自治会 大和享二さん)
「何が始まっているんだろうという地域の不安がずっと続いている。元のきれいな状態に、すっきり戻していただきたい」
この土の山は、建築や土地開発に伴って発生する建設残土。紀北町では以前から問題となってきました。
港に入ってくる漁船ではない船。
紀北町には、10年以上前からこうして船で全国から大量の"建設残土"が運び込まれ、山の奥深くに作られた巨大な残土置き場に捨てられてきました。
町は2019年、残土の規制条例を作り、1000平方メートル以上に盛土を行う場合には事前の届け出が必要になりましたが、県外からの残土持ち込みを禁止するまでは踏み込めず、残土の搬入はいまも続いているのです。
”条例違反”の盛り土 責任者の議員は「片付けたくても片付けられない」
(紀北町 上里自治会 大和享二さん)
「どんどんダンプカーが土を運んできて、最後にはこのような状況になった」
町への届け出もなく積み上げられた建設残土は、約2800平方メートル。条例で定められた1000平方メートルの3倍近くで違法です。
さらにこの近くには3000平方メートルを超える盛り土も。そしてこの2か所とも、責任者は現職の町議会議員だったのです。
(紀北町 上里自治会 大和享二さん)
「不信感ですね、議員さんに対する。ルールを守るべき立場の方が地元説明も一切ない」
問題の町議は東篤布議員。町はことし2月、東議員に対し全ての残土の撤去を命じましたが…
(紀北町議会 東篤布 議員)
「片付けたくても片付けられない。持って行く所がないですから」
議会で東議員は開き直り、片付け先の土地はなく、撤去は無理だという主張を繰り返しました。また届け出を出さなかった理由については。
(紀北町議会 東篤布 議員)
「1000平方メートルでおさまると思ったから届け出を出さなかった。どうぞいかようにも処分してください。処分によっては腹くくっている」
「騙されたというか…」
では、なぜ1000平方メートル以内で盛土を止めなかったのか?議員を直撃すると…
(記者)「1000平方メートルを超えそうなときに、やめようという判断にはならなかった?」
(東篤布議員)「届け出って言ったって、地元説明会だけすればいい話ですから」
(記者)「地元説明会をやればよかったと思うが?」
(東篤布議員)「やるにしても自治会もすぐには受けてくれませんからね。1か月で片付けろと言われても、できるわけない」
届出に必要な地元への説明会ができなかったという回答。その後の取材で東議員が盛り土を行っていた土地は、現在岐阜県の企業が所有していることが判明。電話取材に対し、社長は憤りの声をあげています。
(記者)「東議員から建設残土が持ち込まれている土地という説明はなかった?」
(地権者の社長)「騙されたというか…もともとそんな土地だと知らずに買っているので、そんな土地だと買うわけもないんですが」
バイオマス発電などを行うため、数千万円でこの土地を買いそのあとで盛土について知ったという社長。このまま東議員が残土を撤去しなければ、地権者の責任として代わりに撤去する意向を示しました。
(地権者の社長)
「万が一撤去されない場合は、ちょっと時間はいただきますが、片付ける準備はします」
撤去期限の3月28日。残土の山はそのままで、撤去に向けた動きはありませんでした。改めて、東議員を訪ねました。
「片付ける場所がないので撤去はできない」
(記者)「東議員でしょうか?CBCテレビです」
(東議員)「(2階へ)上がってこい」
カメラでの取材はNGでしたが、「片付ける場所がないので撤去はできない」と、これまでの主張を繰り返しました。行政は今後どう対応するのか。
町長は…
(紀北町 尾上壽一町長)
「行為者(東議員)に対しては強く撤去を求めていきます。土地の所有者(岐阜の企業)にも求めていきたいが、所有者も知らないうちに積まれていたということで、被害者的な部分もありますので、我々としてそこは話し合いの中で詰めていかなければいけない」
これまでに100万トン以上紀北町周辺の山に運び込まれてきた建設残土。建築や土地開発によって必ず発生する負の産物が、今も行き場を求めてさまよっています。