
背景に“数のプレッシャー”もらった名刺の個人情報を無断利用 ボランティアに登録した副議長 「やり方自体が不正の温床」

アジア大会のボランティア応募をめぐり、名古屋市議会の副議長が、他人の個人情報を勝手に使い登録していた問題。その背景には、「数」のプレッシャーがありました。
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名前、住所、電話番号…。
大切な個人情報を無断で使っていたのは、市議会の副議長でした。
きのう、名古屋市役所で開かれた緊急記者会見。
「大変申し訳ございませんでした」
名古屋市議会の副議長、上園晋介市議。その口から語られたのは、議員としてあるまじき“言語道断”の行為でした。
(上園市議)「自分で勝手に記載をしました。最低限の目標はクリアしないといけないとの感覚が自分の中にあったのでは」
上園氏は、過去3年ほどの間に名刺を交換した26人分の個人情報を無断で使用し、アジア大会のボランティアに登録していたことを認め謝罪しました。
大会の運営事務局に、「身に覚えのない登録完了メールが届いた」という問い合わせが相次ぎ、問題が発覚しました。
(上園市議)「問い合わせが来ていると知り、内心ビクビクし始めたのが本当に情けない心情でした」
■ボランティアが足りない!市議らに“30人の目標”
そもそも、なぜそこまでしてボランティアの登録者数を増やそうとしたのでしょうか…
「アジア大会来年やります。ボランティア募集しています。是非参加してください」
ボランティアの一般募集が締め切られる1か月前。鶴舞公園には、広沢市長とともに市民に協力を呼び掛ける名古屋市議・有志たちの姿が…
実は、この時点で応募があったのは、目標1万人の半数以下という厳しい状況。この深刻な「ボランティア不足」を背景に、上園氏が所属する会派「名古屋民主」では議員1人あたり30人を集めるという「目標」を設定。これに対し、「焦りがあった」と心情を明らかにした上園氏。締め切り直前に、26人分をひとりで登録したということです。
(上園市議)「正直に申しますと…30人のうち、ボランティアに了承いただけた方は私の中では4人でした」
その4人とは…。
(上園市議)「はい、家族です。(私と)妻と、18歳以上になる息子と娘です」
■エクセル形式で提出 名簿の生年月日は“想像で書いた”
これは、議員がボランティアの参加者をまとめる際に使う名簿のひな型です。名前や住所、電話番号などを入力し、会派ごとにとりまとめて市に提出していました。
(CBC当麻葵記者)「エクセルには、生年月日の記入欄があります。名刺にはない情報は、会った時の印象で想像し、書き込んだということです」
希望者を募るはずのボランティア募集で、勝手に名前が使われていた今回の問題。ボランティアの理念とはかけ離れた副議長の行為に対し市民からは怒りの声が。
(街の人)「論外」「とんでもないですよね」
(街の人)「正直信じられない。普通の会社でも問題になるのに」「せっかくみんなで盛り上げていこう、良い大会にしようと思っているのに、水を差すような事になったのはすごく残念」
上園氏が所属する会派「名古屋民主」では、所属議員17人で748人を登録。ほか2つの会派とあわせると、ボランティアの登録者数は2700人を超えています。各会派は、きのうから所属議員へのヒアリングを実施していますが、名古屋民主では、同じような無断登録は「確認されなかった」ということです。
■弁護士「”ノルマ”で集めるやり方自体が不正の温床になりがち」
(名古屋市広沢一郎市長)「プレッシャーを感じてよろしくないことに至ってしまったことは極めて残念なところ」
また、大会組織委員会の会長を務める愛知県の大村知事は、ボランティアの確保に向けて「目安となる人数」を県議らに対して伝えていたことを明らかにしました。
(愛知県大村秀章知事)「目安は必要かもしれませんねと。それを目指してボランティア確保をお願いしたいと申し上げました。あくまでボランティアなので、当事者の皆さんにはご迷惑をおかけした」
名古屋市民オンブズマンの新海聡弁護士は、行政に提出する文書にウソの記載をした点に問題があると指摘しています。
(名古屋市民オンブズマン新海聡弁護士)「虚偽の書類を作ってはいけない申請してはいけないという法律に違反する可能性がある。”ノルマ”の形でボランティアを集めるやり方自体が不正の温床になりがち」
「もらった名刺」を「数字」に変えた身勝手な副議長の行為。今、問われているのは政治家としての責任の「形」です。
■自身の進退について「審判を仰ぐ。つまり…」
(記者)「Q:辞任する考えはない?」
(上園市議)「はい」「今回起こした事案について市民の審判を仰ぐ。つまりは自分の任期を全うしたいと思っている」
現時点で、辞職の考えはないと話した上園市議。今後、個人情報を無断で使用した26人に対し、順次謝罪していくとしています。