
隠して売る悪質な中古車販売店も存在…水害の増加と共に増える『水没車』知らずに買ってしまった“2人のケース”


記録的な大雨による地下駐車場での浸水被害など、水没車トラブルが増えています。補償の行方や中古車販売時の隠ぺい問題、法的責任の有無など、利用者が直面する課題を取材しました。
■隠して販売する悪質業者も
9月12日の記録的な大雨では、三重県四日市市の地下駐車場「くすの木パーキング」に水が流れ込み、大きな被害が出ました。

自動車生活ジャーナリストの加藤久美子さんは、「近年は水害が増えており、冠水車の数も増えている。保険会社が冠水車と判断すると、基本的には全損扱いになる」と説明します。

しかし、中古車販売店の中には、冠水車であるにもかかわらず、痕跡を隠して販売しようとするケースもあるといいます。本来、「自動車公正取引協議会の規定では、冠水車は必ず告知する義務がある。さらに、冠水車の場合はバッテリーなど電気系統への影響が長期的にどのように現れるか予測が難しいというリスクもある」と、加藤さんは注意を呼びかけます。
■冠水車にまつわる様々な相談
自動車公正取引協議会には、冠水車にまつわる相談が数多く寄せられています。

中古車販売店で車を購入したAさんは、納車直後からエンジンが止まるなどの不具合に繰り返し悩まされ、そのたびに修理に出していました。しかし、何度修理しても改善せず、最終的に正規ディーラーで点検を受けたところ、水没車であることが判明。ディーラーからは「水没車は修理対応できない」と告げられました。購入時に販売店からは、水没車であるとの説明は一切なかったといいます。

また、Bさんのケースです。遠方の販売店から車を購入することになり、外装や内装の写真は送られてきましたが、エンジンルームの写真はありませんでした。そのためBさんは「汚れはありませんか」と念入りに確認しましたが、販売店からは「汚れはなく、綺麗な状態です」と回答がありました。

ところが、実際に納車された車からは異臭がし、エンジンルームは泥だらけでサビも確認され、事前に説明されていた内容とは全く異なる“水没車”だったのです。
■水没車を告げずに販売する行為は違法か
水没車であることを伝えずに販売する行為は違法なのでしょうか。名古屋の古澤健一弁護士によると、自動車業界のガイドラインでは「冠水・水没歴を告知すべき」と定められているものの、「水没車であることを必ず告知して販売しなければならない」と規定した法律は存在しないといいます。

ただし、民法上の「契約不適合責任」により、通常期待される品質や性能を欠いている場合には、契約の解除や損害賠償請求が可能となる場合があります。さらに、「消費者契約法」に基づき、販売側が購入者に不利益となる事実を故意に告げなかった場合には、契約を取り消せる可能性もあると指摘します。

水没車をめぐるトラブルは、利用者の身近なリスクとなっています。 2025年9月19日放送