
夏だ!外遊びだ!防災キャンプだ! キャンプ料理で学ぶ“火力”【暮らしの防災】

料理は”キャンプの″華″です。ご飯を炊いたり、バーベキューをしたり、釣った魚を焼いたり。しかし防災キャンプのメニューは違います。さすがに楽しいキャンプで防災メニューばかりを作るのはちょっと…ですよね。そこでいつものキャンプ料理に、防災メニューを加えてください。また家庭での普段の食事に防災メニューを加えるのもOKです。何度もやって作り慣れておけば、いざ!と言う時スムーズにできます。
“火力”をどうする?

避難生活を想定した調理では、火力は「ガスボンベのコンロ」になります。もちろん、なごみの場としての「たき火」はありますが、調理はガスボンベの火力がメインです。
家庭で鍋物などをやる時に使うカセットコンロが使い慣れていて便利です。ガスボンベはセールの時に買うと普段よりかなり安価になります。多めに買って備蓄してください。ただし火力がちょっと弱いのが欠点です。
またカセットコンロを並べ上に鉄板を置いて使うのは危険です。熱がこもってボンベが爆発する可能性があります。使い方に注意しましょう。
普段の暮らしでもチャンスがあれば使用

一方、アウトドア用のカートリッジ式ガスは、火力が強いのが特徴です。1つだけで使う時はお湯を沸かす、1人用の調理に適しています。2つセットして使う機器(ツーバーナーグリル)だと、複数人用の料理作りに使えます。
家庭用カセットコンロ、シングルバーナー、ツーバーナー、いずれもキャンプ以外でも使えます。普段の暮らしでもチャンスがあれば使ってみて下さい。使い勝手、火の加減などを把握できます。
またボンベのガスの消費量、どのぐらいもつかを体験しておくことも大事です。キャンプや日頃の暮らしを「使い慣れる機会」にして下さい。
マッチで火の便利さ、怖さを学ぶ

家庭のキッチンのガスコンロは自動着火式、また最近はIHクッキングヒーター(電磁調理器)、電子レンジなどで調理をするようになってきています。このため子どもがマッチを使えなくなってきています。「火の便利さ」「火の怖さ」に接する機会も減っています。
そこで防災キャンプで「マッチ」を使ってみてはいかがでしょうか?使い捨てガスライターや、柄の長い多目的ライターなどもあります。マッチやライターで、コンロやランタンに火をつけ、火の扱い方を学びましょう。
火は便利でもあるけれど危険でもあります。直火を扱う時は、近くに水をはった「消火バケツ」を準備することも覚えてもらいたいものです。
防災メニューを「もう一品」

いつか避難生活で食べることになるメニューです。普段の暮らしで食べていれば、避難生活で食べた時、ちょっとだけ日常を感じられホッとするかもしれません。
避難所のコンディション、タイミングによって避難者に配られるメニューやその量は違います。時には充実のメニューの場合もありますが、「あれがあれば」「もう一品ほしいなぁ」「いつものアレが食べたいなぁ」と思うこともあります。
そこで防災キャンプでは、普段の暮らしでも食べられる「もう一品」を作る練習を提案します。BBQなどのキャンプ定番のメニューに加え、防災メニューを作ってみてください。
□耐熱性ジッパー付き食品保存袋
アウトドアクッキングでのスグレモノは「耐熱性ジッパー付き食品保存袋(耐熱温度100℃程度)」です。食品を入れて湯せんができます。飲用に適した水が少ない時、鍋に汚れた水を入れて湯を沸かします。
保存袋に「米と飲料水」を入れて密封、そして湯せんすればご飯が炊けます(15分ぐらい)。少ない飲料水を「沸かし水」に使うことなく節約できます。この場合、保存袋が鍋底や鍋肌(横)に触れないようにしてください。焦げて袋に穴が空くことがあります。ご飯を炊くだけでなく、パスタを茹でたり食材を煮たりできます。
このような時の調理用に開発されたポリ袋には、日本赤十字社の「災害用非常食炊飯袋」があります。
□ご飯類
主食は極めて重要です。炊きたてのご飯、温かい麺類は“力”が出ます。ご飯を飯ごうや鍋で、カセットコンロやバーナーを使って炊く練習をしましょう。また普段はレンチンしているパックご飯も湯せんで温めてみましょう。炊飯の練習は、キャンプでなくてもできます。普段の暮らしでもチャレンジしてみてください。
乾麺は便利です。特にゆで時間が短いそうめんは重宝します。パスタは「水漬けパスタ」がおススメです。乾燥パスタを2時間ぐらい水に漬け、水を吸って柔らかくなったパスタをお湯で4分ぐらいゆでると「もちもち、アツアツのパスタ」になります。これにレトルトのソースをかけるとアルデンテ状態のパスタが楽しめます(こちらも保存袋を利用)。
汁物 スープ

お味噌汁、スープがあるとホッとします。市販のお味噌汁やスープに、乾物やフリーズドライの薬味、野菜、海藻類を加えると味が膨らみます。具としてそうめんやハルサメを入れると、満足感が増します。普段の暮らしでいろいろアレンジして、これは!と思った食材・具材を備蓄しておきましょう。こんな「いつもの味」は、心が休まります。
□おかず
おかずは多種多様です。防災食を紹介する本やホームページは沢山あります。本屋さんで探したり、ネットで調べたりしてお気に入りのメニューを見つけてください。登山用ごはんは簡単で美味しいものがたくさんあります。
私がメニューを決めるポイントは…
・調理に手間がかからない
・食材の数が少なくて済む
・調味料を変えて「味変」、食材を変えて「アレンジメニュー」を作れる
・普段の食事に出してもOK
です。
避難時に食べるメニューを、その時にいきなり作ってもうまく行くとは限りません。防災キャンプだけでなく、いつもの食卓にものせるようにしてください。作る練習にもなりますし、レシピをアレンジするチャンスにもなります。防災の日常化、フェーズフリー防災の実践です。
防災メニューを「わが家の味」にしておけば、避難先で作って食べれば、ホッとすると思います。
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被災地取材やNPO研究員の立場などから学んだ防災の知識や知恵を、コラム形式でつづります。
■五十嵐 信裕
東京都出身。1990年メ~テレ入社、東日本大震災では被災地でANN現地デスクを経験。報道局防災担当部長や防災特番『池上彰と考える!巨大自然災害から命を守れ』プロデューサーなどを経て、現ニュースデスク。防災関係のNPOの特別研究員や愛知県防災減災カレッジのメディア講座講師も務め、防災・減災報道のあり方について取材と発信を続ける。日本災害情報学会・会員 防災士。