
「サブ ごめんなさい…」飼い犬の老いたチワワを6階から落とした女性 「楽になるかと思って…」 事件が問いかける“ペットとの共生”の現実

(女性)「大丈夫?大丈夫だよ、お母さんおるで。大丈夫、大丈夫」
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名古屋市港区のアパートで、一人暮らしをする女性。呼びかける相手は飼っているチワワ。荒い息づかいです。
先月18日、女性がアパートの6階から投げ捨てたのです。高さ20メートル。下が草むらだったため、命は取り止めましたが警察が獣医に診せたところ脳障害で下半身不随になっていました。
女性は52歳。動物愛護法違反の疑いで逮捕され、その後、罰金10万円の略式命令を受けました。
チワワの名前は「三郎」。友人から譲り受け、19年間一緒に暮らしてきました。
(飼い主の女性)「(三郎が)元気な頃はついてくるし、帰宅したら喜んでくるくる回ってかわいかった」
年々増加するペットの飼育放棄や虐待
家族同然だった犬をなぜベランダから投げ落としたのか?
(飼い主の女性)「私がいけないんですけど…この子がこのまま死んだ方が楽になるかなと思っちゃって…」
女性は10年前まで居酒屋の店長として働いていましたが、店があったビルの建て替えで立ち退きにあい無職に。その後、生活保護で暮らす中、うつ病を発症。アルコール中毒にもなりました。
(飼い主の女性)「(Q:何を飲んでいる?)酒」
ペットの飼育放棄や虐待は増えています。国や動物愛護団体の調査によると、飼育放棄で引き取られる犬や猫は年間約4万5000頭。
年々減ってはいますが、経済困窮を背景にした虐待は増えています。
飼育放棄された犬を助ける「ドッグレスキューハグ」
愛知県武豊町にある、「ドッグレスキューハグ」。経済的な理由や飼い主の高齢化で飼育放棄された犬を引き取り、今は22匹の面倒をみています。
(ドッグレスキューハグ 塚本恵さん)
「(飼い主が高齢者で)1人で住んでいて、この子だけが取り残されていていた」
(ドッグレスキューハグ 塚本恵さん)
「(白い犬のココちゃんは)経済的な理由で飼えない。引っ越し先がペット可の所を探すと高くて、自分たちの経済的には払っていけないと」
代表の塚本恵さん。この活動を始めて12年。寄付で運営していますが引き取る犬は年々増えていると話します。
(ドッグレスキューハグ 塚本恵さん)
「経済的な理由で飼育放棄される方はたくさんいた。(1頭飼育するのに)どのくらいお金がかかるか、医療費もフード代も結構かかる。お金と時間と環境が整っている方が飼うべきだと思う」
犬1頭を飼うのにかかる費用は、月に餌代1万円やおやつ代1000円、医療費4000円ほど。年間最低でも10万円はかかると推計されています。
19年間連れ添った“三郎”…最期のお別れ
今月17日。飼い主の女性から連絡が入りました。
(飼い主の女性)
「サブ(三郎)を見て。死んじゃった。朝起きたら冷たくなっとった」
「サブ…ごめんなさい」
三郎は女性が寝ている間に、息を引き取りました。
(ドッグレスキューハグ 塚本恵さん)
「間に合わなかった」
ニュースで事件を知り、三郎の状態を気にかけていたドッグレスキューの塚本さんも駆けつけました。
(ドッグレスキューハグ 塚本恵さん)
「初めまして。ドッグレスキューハグの塚本です」
「頑張ったね」
「お空に見送ってあげないといかんよね?」
(飼い主の女性)「でもお金がないんです」
(ドッグレスキューハグ 塚本恵さん)「分かってる。大丈夫だからそれは」
(飼い主の女性)「見送ってくれるんですか?…じゃあ(サブを)お願いします、サブのことお願いします」
飼い主とペットの幸せな暮らしのために
塚本さんが三郎の亡き骸を引き取り、見送ることにしました。
(ドッグレスキューハグ 塚本恵さん)
「今度は幸せになるお家に生まれてこないかんよ」
(ドッグレスキューハグ 塚本恵さん)
「生活保護を受けている人もペットを飼ってはいけないという訳ではないが、あのような状態で飼える訳がない。(行政など)周りが手を差し伸べるべきだったと思うし、もっと早くサブちゃんのことを知っていたら、助けてあげたかった」
ペットを「家族」として飼う人が増える中、課題となっている経済困窮を背景にした虐待。相談窓口や支援が求められています。
今回取材したドッグレスキューハグは、運営費の全てを寄付でまかなっています。担当者は、引き取る犬が増えていることから資金は十分ではないと話しています。