「美人局」の末の凶行の可能性 名古屋・栄のホテル強盗殺人事件の逮捕者は3人に 逮捕容疑が違う理由は?

名古屋市のホテルで男性の遺体が見つかった事件。新たに19歳の女ら2人が逮捕され、事件の構図が徐々に明らかになってきました。
容疑者の出頭で、警察による捜査は進展しました。
事件から3日後。女は現場となったホテルからほど近い交番に出頭したといいます。
この事件で逮捕された容疑者は3人に。一体何が――。
事件が明らかになったのは、6月7日午後。
名古屋市中区栄にあるホテルの一室のベッドの上で、愛知県春日井市に住む会社員の男性(32)が死亡しているのが見つかりました。
首を絞められたことによる窒息死でした。
19歳女は現場近くの交番に出頭

この事件で11日、新たに名古屋市中川区の無職の女(19)が強盗殺人の容疑で逮捕されました。
警察によりますと、女はすでに逮捕されている中川区の無職、加藤伶音容疑者(20)とともに、男性の首を絞めて殺害したうえ、腕時計などを奪った疑いがもたれています。
女は10日午後7時ごろ、現場近くの交番に出頭。
任意の事情聴取の結果、容疑が固まったとして警察は逮捕に踏み切りました。
15分足らずの間の犯行か

現場から数百メートル離れた場所にある防犯カメラに、男性と金髪の女が横断歩道を渡る姿が映っていました。
2人はその後、現場となったホテルに向かったとみられます。
防犯カメラの映像が撮影されたのは、7日午前0時半ごろ。
捜査関係者によりますと、別のカメラには午前1時ごろに男性が女と2人でホテルの部屋に入った後、追うように加藤容疑者も入室する姿が映っていたといいます。
しかし、部屋から出てきたのは女と加藤容疑者の2人だけ。
その間、約15分。
犯行は、この15分足らずの間に行われたとみられています。
「美人局」の末の凶行の可能性

警察はまた、恐喝の疑いで春日井市の職業不詳、波多野佑哉容疑者(23)も11日に逮捕しました。
見えてきた事件の構図は、「美人局」(つつもたせ)の末の凶行の可能性。
警察によりますと、容疑者3人と男性に面識はなく、波多野容疑者が、知人の加藤容疑者と19歳の女に「美人局」を指示し、2人が実行に移した際にトラブルになったとみて調べています。
捜査関係者によりますと、現場のホテルに波多野容疑者の姿は確認されていないということです。
警察は、3人の認否を明らかにしていません。
実行役と指示役に「認識の違い」?

警察は、知人関係の容疑者3人が「共犯関係」にあったとみていますが、その一方で、2人は強盗殺人の疑い、1人は恐喝の疑いで逮捕されるという違いが出ています。
そもそも「共犯」とはどういうことなのか。アディーレ法律事務所の池田昇右弁護士に聞きました。
いわゆる「共犯」には大きく3つあります。
一緒に犯罪を実行したり実行犯と共謀したりした「共謀共同正犯」。人をそそのかして犯罪を実行させる「教唆犯」。犯罪を幇助(サポート)する「ほう助犯」があり、ほう助犯の場合は刑が軽くなると刑法上定められています。
今回、警察が3人を”共犯”としながら容疑が分かれた理由について、池田弁護士は、「共犯の錯誤」を指摘しています。いわゆる「実行犯」と、共犯とされる指示役の間に「認識の違い」があったのではないかということです。
具体的な「指示内容」は現段階では明らかになっていませんが、仮に波多野容疑者が2人に指示した内容が、いわゆる「美人局」、被害者を脅迫して金品を受け取ることまでだった場合、それは「恐喝」の範囲ととらえられるそうです。
一方で相手に危害を加えること、極端に言えば「殺害」に関する指示などがなかった場合は、実際に起きた「強盗殺人事件」そのものの指示はしていないという風になり、犯罪事実の”認識”が異なることから、強盗殺人での共犯関係は成立しないということになるそうです。
指示役とみられる波多野容疑者が、どの程度の暴行・脅迫を指示したのか。こうしたことが明らかになることが、事件の全容解明に近づくポイントとなりそうです。