“カスハラ”で住民に400万円賠償請求へ 役場に5年以上要求続き「誹謗中傷も」 愛知・美浜町

愛知県美浜町で、職員が理不尽な要求「カスタマーハラスメント」を受けたとして、400万円の損害賠償を求めて住民を提訴する方針です。いったい何があったのでしょうか?
人口約2万人の海沿いの町、愛知県美浜町。議会で11日に提出されたのが…。
「カスハラをしたとして利用者を提訴する内容の議案が提出されます」(記者)
事の発端は、1人の住民からの5年以上にわたる要求だったといいます。
「電話や窓口のやり取り、直接話をしたり対応したけれど、なかなかご納得いただけなかった。職員から『なんとかならないのか』という声が大きかった」(美浜町 総務部 宮原佳伸 部長)
美浜町によりますと、2019年ごろから、60代の男性による“カスハラ”とみられる行為が始まりました。
近隣住民との土地の境界を巡るトラブルの解決や、建物の耐震化に関する補助金申請が退けられたことなどに関し、職員が対応できない要求を、窓口や電話などで求め続けたと言います。
10月1日の職員の記録を見ると…。
「お前より上司の方が頭がいいんじゃないか。男とは話したくない。女に代われ」
「職員同士が結婚するのは風紀上悪い。あいびきしていいのか」
10月1日は、午後2時半ごろから役場が終わるまで、8つの部署に電話。暴言ともとれる言葉が…。
また、職員の懲戒処分を請求する文書が町長宛てに届いたこともあったということです。
男性からの行為は5~6年間にわたり、役場のほぼすべての部署で確認されているということです。
今年4月から11日までで800件以上に上るということです。そして11月11日。
「住民から不当な要求・対応の強要・一方的な理由による訴訟や職員個人への誹謗中傷などが繰り返されていて、一個人の要求のために膨大な職員の労力がさかれ、他の住民の皆さまへの行政サービスに著しい支障が生じております」(宮原部長)
議案は、男性に対して行為の差し止めと、対応した職員の給与相当額にあたる400万円の損害賠償を求めて提訴する内容。この裁判にかかる費用160万円の予算案も提出されました。
“カスハラ行為”で役場が住民を訴えるという珍しいケースに、議会の判断は…。
「挙手全員であります。本案は議案の通り可決されました」(議長)
町は「カスハラをやめれば提訴しない」

この結果に、町長は―。
「議会で認めてもらったことについては大変感謝しております。対応する職員が非常に疲弊していて、事務処理にも膨大な時間がかかってくる。それによって本来やるべき業務が滞る、あるいは多大な時間外(労働)が発生するようなことがあった」(美浜町 八谷充則 町長)
議案は可決されましたが、美浜町は「提訴ありきではなく、“カスハラ行為”をやめるなら提訴はしない」ということです。
小さな町で起きたカスハラ騒動について町民は…。
「びっくりだね。こんな田舎町でね。人口2万人の町でおるかいなと」
「公務員に関しては、何を言われても仕方ないというイメージが若干あるように思うけれど、そういうことはない。他の普通に働いている人と同じように何を言われても仕方ないような存在じゃなくて、もう少し尊重し合える関係になれば」
弁護士「日本の価値観が変わってきた」

弁護士の三輪記子さんは、“我慢は美徳”という日本の価値観が変わってきたと感じています。
「(我慢は)美談ではなく、限度を超えたものまで我慢しなければいけないいわれはないことが共通認識となってきたのでは」(三輪弁護士)
一方で、自治体が住民に対して裁判という手段を選ぶことについて…。
「裁判はかなり強権的なやり方だと思う。絶対結論が出るし、裁判所を使うにしても調停とか話し合いというやり方もある。第三者がその町民に対し、その人の本当のニーズをきちんとくみ上げて出口を見つけていくのが、話し合い手続きのいいところだと思う」(三輪弁護士)





