抱える路線ほぼ赤字のJR四国が活路を見出したのは「陸上養殖サーモン」 沿線自治体・企業が応援

人口減少などにより厳しい鉄道運営が続くJR四国。打開策として挑んだのが、人の流れに依存しない「サーモンの陸上養殖」です。この挑戦に地域の応援が広がっています。

瀬戸大橋で海を眺め、吉野川上流の景観を楽しむ。JR四国はこうした路線を多く抱えています。しかし、本州・四国間の1路線以外はすべて赤字。JR四国の売上高は、新型コロナ禍で鉄道需要が落ち込み、激減。その後、駅ビルの開業などで回復しましたが、収支は鉄道の赤字を国の支援などで補う構造です。
「養殖サーモン」に活路見いだす

そのJR四国が繰り出した“切り札”が養殖サーモンです。JR四国の四之宮和幸社長は「人流に関わらない事業を新たに展開したいという中で、陸上養殖が今後の四国の中での展開の可能性がある」と話します。

2024年、グループのホテルのレストランで料理を試験的に販売したところ好評で、販売期間を延長したといいます。
JRホテルクレメント高松 川田美広総調理長:
「身の質が柔らかくて、食べてふわっとした感じに仕上がります。『あれ、使ったメニュー出して』というリクエストもいただきました」
地下水を掛け流し、エサには粉ミルクを配合

養殖会社「ヒラヤマ」の陸上養殖場では、特殊な方法でサーモンを育てています。地下水を掛け流しにすることで、水を入れ替える作業やポンプが不要になり、低コストで水質や温度を管理。また粉ミルクをエサに配合して育てています。
ひらやま 平山正社長:
「カルシウムを取ると骨が大きくなります。骨が大きくなると成長も大きくなります」
このエサで、味も臭みがなくまろやかになるといいます。

このひらやまで技術指導を受け、2年かけて準備した元駅長のJR四国・事業開発本部の森田雅祐部長は、「サーモンの事業を通して全国に(JR四国の)名が通るようにしていきたい」と未来を見据えます。
「サーモンを扱いたい」企業からオファー相次ぐ

そして2025年4月、愛媛県西条市で初の自前の養殖場をオープン。2026年春の出荷を目指し、稚魚を育てています。ここで使う、西日本の最高峰・石鎚山の湧き水の使用については地元の西条市が全面協力。ほかにも、養殖の場所を提供したいという自治体、サーモンを扱いたいという飲食・小売りなどの企業からそれぞれ数十件のオファーがありました。

これまでコロナ禍でも、赤字でも列車を走らせ続けたJR四国の新たな挑戦に、地元に路線を持つ「地域」の応援が広がっています。
愛媛県西条市 産業振興課 櫛部一洋副課長:
「人の流動がなくなってJRさんも厳しいところがあったのかな、と。そういったところで鉄道業というのを続けていただいて、西条市民のためにも必要なインフラなのでぜひ協力したいと考えました」
地域のブランド名を付けた養殖サーモン

またJR四国は地元の活性化のため、あえてサーモンに「JR」の名前は使わず、地域のブランド名を付けることにしました。全国のスーパーや飲食店などにJR四国自ら売り込み、2030年、1億円の売り上げを目標としています。

日本経済新聞社 溝田将太記者:
「陸上養殖やご当地サーモンは、今後国内各地で増えていくことが予想されます。他との競争に勝ち抜くためには、養殖場がある地域とJRがそれぞれ持つブランド力を組み合わせて付加価値を高めることが欠かせません」
JR四国 四之宮 和幸社長:
「四国は4県にさまざまな特徴があります。四国の多様なサーモン、それが鉄路を通じて日本全国へ展開していくことになればいいな、と思っています」