日米関税交渉決着 各国に課せられる高い関税「米に頼らない貿易が加速する」と専門家が指摘

日米の関税交渉が決着しました。日本経済の見通しの不透明感が後退したとして、株価は上昇していますが、今後の日本の産業は、どうなるのでしょうか。
記者リポート:
「7月24日の日経平均株価は、23日の終値より500円ほど高い値段で始まりました」
24日の株価は、自動車などの輸出関連株を中心に買い注文が膨らみました。終値は、23日より655円高い4万1826円で、2025年の最高値を2日連続で更新しました。マーケットが好感した日米の関税交渉の決着。その合意内容も分かってきました。
アメリカのホワイトハウスによりますと、日本は約1兆2千億円の農産品を購入します。コメは、既存の最低輸入量の取り決めの枠内で輸入割合を増加させます。年間数十億ドルの防衛装備品を追加購入します。さらに、ボーイングの航空機100機を購入します。その他にも日本企業がアメリカに対して、5500億ドル投資するなどの条件が付きました。
一方、アメリカは日本に対しての相互関税を15%、自動車関税も15%として、当初予定していた関税率よりも引き下げました。
アメリカ外交に詳しい上智大学の前嶋和弘さんに話を聞きました。今回の合意内容のうち「アメリカに対する約5500億ドルの直接投資」について次のように懸念しています。
「産業の空洞化が押し寄せる」トランプ関税で専門家指摘
上智大学 前嶋和弘教授:
「日本からアメリカに会社を移すということは自動車関連会社や部品の会社がアメリカに行くということ。そう考えると産業の空洞化が押し寄せる。日本の会社は潤うけど人々は潤わなくなるのでは」
一方で前嶋さんは自動車産業について、アメリカから他国に課せられる関税によっては日本国内からの輸出が増える可能性もあると指摘します。
上智大学 前嶋和弘教授:
「日本の自動車関係の会社にとってみればまだ見えてこないのがカナダとメキシコの生産の状況です。こちらの関税が決まらないと難しいところがある。カナダで作ったものはアメリカに自由に関税がほぼない形で持ってこられる、あるいはメキシコでも同じような恰好で日本企業が動いてきたがこちらの方が高い関税になる可能性がある。そうすると、むしろ日本で作ってアメリカに輸出する動きもでてくるかもしれない。産業の空洞化という現象も懸念されるが逆に戻ってくる可能性もある」
アメリカに頼らない貿易が加速か
また前嶋さんは世界各国に高い関税が課せられる可能性からアメリカに頼らない貿易が加速するのではとも指摘しています。
上智大学 前嶋和弘教授:
「アメリカ抜きで自由貿易体制を作ることができないかという模索に世界各国が動くのでは。これまでアメリカは自由貿易の旗振り役で自ら関税を下げてきた。ただ逆で自ら関税を上げてくるという時代、アメリカを抜いて自由貿易ネットワークを作っていくものとするならば、輸出の拡大をする上でアメリカを減らして他の国への輸出を増やすという動きが民間企業にも広がるのではないか」