
文化や言語の違い乗り越え奮闘 トラブル解決は子ども同士でミーティング 三重

文化や言語の違いを乗り越えるために奮闘する子どもたちや学校の取り組みを取材しました。

三重県内で約6000人ともっとも人口が少ない街、木曽岬町。現在外国人は人口の10%を超える600人あまりが住み、国籍別でみると26カ国の人がいるといいます。
209人が通う「木曽岬小学校」でも5年ほど前から海外出身の子どもが増え続けていて現在36人。日本を合わせて9カ国の子どもたちが学んでいます。
(日本の学校は?)
「最高。友達が優しいので好きです」(ベトナムにルーツを持つ子)
この学校に多いのはパキスタンやスリランカなどの中東や東南アジアの子どもたち。
教室の前にはどこの国の子どもがいるか、世界地図が貼られています。様々な国の子どもがいることについて、日本の子どもたちは…。
「いろいろな国の人と話せてうれしい。違う国の遊びとか、いろいろ教えてもらって日本と違うなって」(日本の子ども)
「言葉が違って『さよなら』などが違うから帰りの会で言っている、いろいろな言語で。勉強になった気がする」(日本の子ども)
言語の違いに試行錯誤

日本人、外国人、双方の学びを阻害しないよう、この学校では日本語の理解度が低い子どもたちのために、通常の国語や算数のクラスとは別に非常勤講師が担当する日本語教室を開いています。
(日本語の勉強は?)
「楽しい!漢字が楽しい!」(パキスタンにルーツを持つ子)
教師たちは、コミュニケーションに苦労した際はITを活用するなど試行錯誤を繰り返しているといいます。
「子どもたちのタブレットには翻訳の機能もあるので、どうしてもというときは翻訳機能も使って、子ども同士で会話をしているというところもある」(木曽岬小学校 水谷昌之 校長)
給食では文化の違いが

文化の違いが特に現れるのが給食の時間です。
教室では給食を食べている子がいる中、日本語教室で楽しそうにトランプで遊ぶ海外出身の子どもたちの姿が。
(給食の時間だけど?)
「ラマダン。何も食べていません」(スリランカにルーツを持つ子)
イスラム教にとって神聖な期間で日中の断食などを行う「ラマダン」。ラマダンの期間の子どもたちは表にするなど、教師同士でも行き違いが起きない工夫がされています。
しかし、時に出身や文化の違いは子どもたち同士の間でトラブルを生んでしまうこともあります。
「スリランカの子たちが中心になって、肌の色のことで少し揶揄されるような事案がありました」(水谷校長)
対処するのは…

ただ真っ先に解決に立ち上がるのはあえて教師ではなく、子どもたち自身でした。
休み時間に集まったのは日本を含む様々な国の20人。トラブルの解決法などを考えるために、去年から定期的にミーティングをしているんです。
「困っていることを聞いたり、いじめをなくすとか優しい言葉を使うように」(子ども達)
議題の提案も子どもたち自ら。この日は…。
「前に外国人だからという理由で遊びに入れてもらえてなかったことがあった。皆さんはことのことについてどう思いますか」(スリランカにルーツを持つ子)
「外国人だからって遊びに入れないのは良くないと思う」(子ども達)
子どもたちが出した解決案は…。
「外国人という意味で差別されたから啓発動画を見るという案が出た」(日本の子ども)
この後も複数回のミーティングを重ね、「出身によるトラブルをなくそう」と呼びかける動画を自分たちで作ることにしました。
小学校の取り組みが街づくりに影響

小学校から始まったこの取り組み、なんと今では小学校だけでなく…
「(子どもたちに)役場とか町として、何かしてほしいことはあるかと聞いたら、保護者を含めたミーティングをやりたいということだった」(木曽岬町 総務政策課 小島裕紹 課長)
いま木曽岬町は大人だけでなく子どもたちも集め、ミーティングを開催しています。議題は町の問題を解決することです。
「問題になっているのがごみの出し方と防災のことが分からない」(小島課長)
外国出身の住民への情報発信に苦戦していたという木曽岬町。ミーティングを通し、ゴミの分別についての動画を子どもたちと制作して発表。
今後、作った動画を町のYouTubeにも掲載し、周知を図っていくといいます。
(話せる場があるのは?)
「あるのはうれしいからみんなにも伝えたいし、役場だといろいろな人が来ていて、みんなで話し合えるから、役場でやるほうがわかりやすい」(スリランカにルーツを持つ子)
「多文化共生」を実現するために、コミュニケーションを深め、互いの文化の違いを理解し合う取り組みが広がっています。